全国各地の地方紙を一覧してみて、改めて気づくことがあった。日米軍事同盟深化論・繁栄論にたつ全国紙は仕方ないにしても、日米政府のオスプレイ安全宣言を批判しいている地方紙までも、行き着く先は日米軍事同盟擁護なのだ。
日米軍事同盟を廃棄して日米平和友好条約を締結することこそが、日米の関係を、対等で、友好的で、平和的な関係にしていくという展望、想定も現在の地方紙は持っていないことが判る。日米軍事同盟そのものが、日本国憲法の上に立ち、憲法を形骸化させる権化であること、喉に刺さったトゲとしての日米軍事同盟に対して廃棄という大手術をすること、こうした発想に立てないことをみていると、麻薬に取り付かれた麻薬患者のように、また原発がないと生きていけない原発立地の自治体と住民のように、悪魔のサイクルに取り付かれていることが判る。こうしたマスコミの実態をみると、これらの病魔から解放されることを、さらに強調していかなければならないだろう。
以下みてみよう。
北海道 オスプレイ 安全宣言は住民軽視だ 9月20日
「安全な空」への願いを踏みにじってはならない。 森本敏防衛相は沖縄県や山口県を訪れて地元の説得に余念がない。反発を抑え込んで、配備計画を強行しようとしているように見える。 日本政府は米国よりも日本の国民の声に耳を傾けるべきではないか。
東奥日報 安全に程遠い、見切り発車 オスプレイ9月21日(金)
日本政府は日米安保条約上も配備を拒めないと主張してきた。領土問題で中国、韓国との関係が緊張し、頼みとする日米同盟のきしみは許されないと、日米協議を急いだのは明らかだろう。…沖縄の不信は募る。問題の根底には、普天間返還の道筋が一向に示されないことがある。…沖縄の声を無視し、このまま配備を推し進めて定着させるならば、日米同盟は抜きがたいトゲをまた一つ抱えることになる。
信濃毎日 オスプレイ 懸念だらけの見切り発車 09月20日(木)
万が一、深刻な事故が起きたときにはどうするのか。安全宣言を出した以上、事故の責任は日本政府も負うことになる。 オスプレイの開発などに関わった米専門家からも危険性を指摘する証言が出ている。政府はこうした声に耳を傾け、国民が納得できる対策を再提示すべきだ。
新潟日報 オスプレイ運用 安全宣言の根拠はどこに 年9月20日
仲井真弘多知事が「われわれは安全だと思っていない。理解不能だ」と不信感をあらわにするなど、過剰な基地負担を強いられている関係自治体の反発は根強い。 深刻な事態が起きてからでは遅い。こうした懸念の声に、謙虚に耳を傾けるべきではないか。… 安全の根拠は何か。その提示が日米双方に求められている。
岐阜新聞 オスプレイ安全宣言沖縄の理解、得られるか 9月21日(金)
沖縄の声を無視してはいけない。オスプレイの配備をこのまま推し進め定着させるなら、日米同盟は抜きがたいトゲをまた一つ抱えることになる。それは、万一事故が起きたりしたら致命的な傷となる。
京都新聞 オスプレイ運用 安全宣言は沖縄無視だ 09月20日
米軍は、普天間の安全確保のための約束を裏切り続けてきた。日米地位協定を理由に、日本政府は対米配慮ばかりがにじむ。2010年の普天間爆音訴訟の高裁判決は「国は米軍に調査を求めるなど適切な措置を取っていない」と国の不作為を批判した。政府の安全宣言への沖縄の反発は強い。
神戸新聞 オスプレイ/誰のための「安全宣言」か (2012/09/20
再発防止策として訓練の徹底などを挙げるが、人的ミスは起こり得る。求められるのは、ミスを防ぎ、復元するシステムの構築である。 日米合同委員会が合意した安全確保策も、抜本的な対策とは言い難い。… 日米両政府ともオスプレイ配備で「抑止力の向上」を強調する。それが発揮できるのも、安全性が保証されてこそだ。 誰のための安全宣言なのか。両政府とも、配備される側の沖縄の目線に立って再検討してもらいたい。
山陽社説 オスプレイ 見切り発車の「安全宣言」 9月20日
日米両政府が合意した安全確保策は「付け焼き刃」の印象が否めず、地元の理解を得られるめども立っていない。米側の計画に間に合わせるための“見切り発車”と言わざるを得ない。…日本各地での低空飛行訓練には、これまでも使用してきた中国山地を横断するルートも使うとみられている。…飛行が頻繁に行われる可能性がある。安全策が順守されるかどうかも危惧される。
中国新聞 オスプレイ「安全宣言」 低空飛行の容認許せぬ'12/9/20
沖縄県の仲井真弘多知事は「われわれは安全と思っていない。理解不能だ」と厳しく批判した。無理に進めるなら沖縄の反発がうねりとなり、安全保障政策に禍根を残すことになろう。…今回の合意も、基本的には努力義務にすぎず、米軍の腹一つで形骸化しかねない。
このまま配備され、訓練が始まった段階でどこかで事故が起きればどうなるか。 日米安保体制の信頼性は揺らぎ、日本政府の責任が厳しく問われよう。そこまでの覚悟が求められることを野田佳彦首相はもっと認識する必要がある。 まずは岩国の試験飛行を強行すべきではない。…全国知事会も7月、オスプレイ配備に懸念を表明する異例の決議をしている。もはや沖縄や岩国だけの問題ではないことを忘れてはならない。
愛媛新聞 オスプレイ飛行強行 努力規定で安全は守れない 09月23日(日)
いったい日本の空は誰のものなのか。… 日程ありき、配備ありきと言わざるを得ない。…米軍の言い分そのままの安全宣言と試験飛行容認は、沖縄の思いを踏みつけ、戦前から続く沖縄への構造的差別をさらに強めるものだと政府は気づくべきだ。
徳島新聞 オスプレイ初飛行 配備ありきで強引すぎる 9月23日付
配備後は国内各地で低空飛行訓練が予定されている。徳島をはじめ不安を抱く関係自治体は多い。政府は安全性に対する住民の納得が十分得られるまで、米側に配備の凍結を要求すべきだ。…あいまいな表現が目に付き、抜本的な安全策には程遠いと言わざるを得ない。…沖縄県の尖閣諸島や島根県の竹島をめぐり、中韓両国との関係が緊張しているだけに、日米同盟のきしみは避けたいところだ。 とはいえ、万一、事故が起きれば取り返しがつかないことになる。日米両政府は沖縄の声に耳を傾けなければならない。このままでは沖縄との溝はいつまでも埋まらない。 野田政権は東アジアの安全保障体制を含め、オスプレイの運用について、米側といま一度しっかりと話し合ってもらいたい。
高知新聞 【安全宣言】配備ありき、に欠ける視点 09月20日
米紙ニューヨーク・タイムズはオスプレイの普天間配備に関する社説で、配備は過重な基地負担に苦しむ県民にとって「傷口に塩を塗り込むようなものだ」と指摘した。安全宣言にはこの視点が抜け落ちている。
西日本新聞 オスプレイ 沖縄無視の配備は無理だ 2012/09/20
今回の運用ルールにも「可能な限り」「運用上必要な場合を除き」など、米軍の判断次第だと読める表現が並んでいる。確実に守らせる担保がなければ、ルールも空文化しかねない。…しかし、これ以上基地の負担を押しつければ、沖縄は忍耐の限界を超えかねない。配備強行は日米両政府への県民の不信を増大させ、かえって日米安保を損ねる。オスプレイも含めた基地負担の分散を、真剣に考えるべき時がきている。
宮崎日日新聞 オスプレイ試験飛行開始「安全宣言」は安心できない 09月23日
沖縄や山口だけではない。今後の低空飛行訓練のルートには本県を含む九州山間部、本州北部、四国も入っている。沖縄でこれまで発生したジェット機やヘリコプターの墜落事故を思い出せば、強い不安を感じる国民は多いはずだ。…米有力紙が最近、普天間配備を急ぐ米政府の姿勢を「沖縄の懸念に耳を傾けねばならない」と批判する社説を掲載した。過重な基地負担に苦しむ沖縄の「傷口に塩を塗り込むもの」とし、配備先の変更を求めている。…日米両政府は、米紙が指摘する当たり前の認識を共有することから始めるといい。
輸送ヘリに比べ5倍以上、約3900キロもの航続距離を生かしてグアムの海兵隊基地などに後退配備し、いざというときに前方展開するなどの知恵の絞り用はあるはずだ。そして、それらが普天間返還につながるよう努力すべきだ。 オスプレイの配備をこのまま推し進め、万が一事故が起きたとしたら、日米同盟は致命的な傷を抱えることになる。沖縄の声を無視してはいけない。
佐賀新聞 「オスプレイ安全宣言」普天間返還への努力を 2012年09月25日
日米安全保障条約上、日本政府にオスプレイ配備を拒否する権限はなく、野田佳彦首相は当初、「配備自体はどうしろ、こうしろという問題ではない」と発言して野党などから批判を受けた。法的にはそうであっても、国民の安全を守るため交渉に全力を尽くすのは、政治家の重要な仕事であるはずだ。…可能な限り」「必要最小限に」などあいまいな表現が多いのは、米軍の運用を優先せざるを得なかった事情を物語っている。…日米協議で超低空の訓練はしないことになったが、安全宣言に盛られた取り決めが守られるのか保証はない。ただ、安全宣言によって日本政府も責任を担うことになったのは明らかだ。
南日本新聞 [オスプレイ] 疑問を残した安全宣言( 9/20 付 )
地元への配慮を欠いたまま、配備ありきの安全宣言や日米合意では受け入れようがあるまい。
以上北海道から九州までの地方紙の社説の要約の引用だ。どこの社説も「安全宣言」に対して批判しながら、沖縄に寄り添う社説を書いている。中には飛行ルートの当該県の社説は自分のこととして書いている。だが、日米軍事同盟を廃棄せずとも、命と財産の安全安心は保てると思っている。
そうして、万が一事故がおこれば、日米軍事同盟に致命的な傷を与えると日米政府を脅している。脅しの大合唱だ。脅しの掛け合いで成り立つ日米軍事同盟ということが判る。
では、現地沖縄の二つの会社の社説を全文掲載しておこう。一番痛めつけられている現地の新聞なのに、負担の「根絶」「根本的解決」ではなく、あくまで「軽減」なのだ。負担の「全国化」なのだ。そこには日米軍事同盟という「トゲ」を抜こうとする社説はない!ここが最大の問題だろう。
「日米の厚い壁を崩すため、ためらわず、粘り強く自己決定権を取り戻す主張を続けたい」のであれば、「一日も早い危険性の除去と負担軽減を実現するため」であるならば、全国民に向かって日米軍事同盟を廃棄し日米平和友好条約の締結を呼びかけるべきだ。
琉球新報社説 「安全宣言」と沖縄 「空飛ぶ恥」を飛ばすな2012年9月20日
日本の戦後の基軸をなしてきた日米安全保障体制は、その土台を支えてきた沖縄から崩壊しかねない危機的な状況を迎えた。 米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの米軍普天間飛行場への配備をめぐり、政府は見切り発車で「安全宣言」を出した。努力規定ばかりで実効性が乏しい代物である。安全だと納得する県民はいまい。 日米両政府は、21日にも一時駐機先の山口県岩国基地で試験飛行を始め、沖縄への配備を遮二無二強行しようとしている。 ごく限られた地域に、他の大多数の地域が恩恵を受ける安全保障の犠牲を負わせ続け、その重圧に苦しむ人々の叫びを無視して恥じない為政者の姿がくっきりした。 仲井真弘多知事は「今の首相、今の政府が責任を全て持つということだ」と突き放し、翁長雄志那覇市長は「日本が沖縄に甘えているのではないか」と問い掛けた。 もはや、沖縄と政府の溝は埋め難い。基地に向けた県民のまなざしは敵意を帯び始めた。
万が一、県民の命を脅かす事故が起きれば、沖縄の民意はたちどころに日米安保の根幹と在沖基地閉鎖に矛先を向けるだろう。 基地の島・沖縄からは、この国の成熟度がよく見える。統治機構の差別的対応をもはやこれ以上甘受できない。国際社会に向けて、より強く、より徹底的に日米の差別的政策を告発せざるを得ない。 普天間飛行場の県内移設とオスプレイの配備をめぐり、県知事と全41市町村長が反対し、県議会と全市町村議会が反対を決議した。 県民は、間接民主主義の手立てを誠実に尽くした。そして、直接民主主義を生かす手法として、10万人超が結集した県民大会を催し、強固な意思を発信した。それからわずか10日しかたっていない。 沖縄には生身の人間が住み、声を上げている。決して政治的無人島でも植民地でもない。だが、日本政府の処し方は、米国の意向一辺倒に物事を進める呪縛にとらわれている。 米メディアが「空飛ぶ恥」と称したオスプレイの配備強行は、沖縄への構造的差別を帯び、民主主義の価値を破壊する愚行である。
だが、私たちは諦念を抱いたり、打ちひしがれることはない。日米の厚い壁を崩すため、ためらわず、粘り強く自己決定権を取り戻す主張を続けたい。民主主義の正当性は沖縄の側にある。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-197090-storytopic-11.html
沖縄タイムス [オスプレイ安全宣言]民意踏みにじる暴挙だ2012年9月20日 09時47分
政府は、米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの日本国内での運用に正式にゴーサインを出した。 森本敏防衛相と玄葉光一郎外相は19日、官邸で記者会見し、「オスプレイの運用の安全性は十分確認された」と、事実上の安全宣言を発表した。21日から山口県・岩国基地で試験飛行を開始し、10月から普天間飛行場で本格運用する方針である。 「安全性が十分確認された」とは、よくもまあ言ったものだ。事故が起きたとき、一体誰が、どのように、責任を取るつもりなのか。 できるだけ規制を設けず自由に運用したい米軍と、地元説得のため目に見える規制を打ち出したい日本政府。今回、日米合同委員会でまとまった安全確保策は、あれやこれやの合意事項を集め、努力の跡が見えるように繕ってはいるものの、合意内容が順守される保証は何もない。 そもそもオスプレイ配備は、自家撞着(どうちゃく)に満ちている。普天間での運用がほんとに安全であれば、巨額の税金を投じて辺野古に移設する必要はないはずだ。16年前、日米が返還に合意したのはなぜか。市街地のど真ん中に位置する普天間飛行場の危険性を認め、一日も早い危険性の除去と負担軽減を実現するためだ。 なのに、普天間でのオスプレイ運用を「安全」だと強弁し、長期使用を想定して滑走路の改修計画まで立案するのは、自家撞着である。政府の負担軽減策は破綻した。 現在、進行している事態は負担の軽減ではなく負担の継続強化、危険の拡大である。
■ ■
日本政府はこれまで、オスプレイ配備について、ウソと隠蔽(いんぺい)を重ねてきた。日米交渉の場で政府は、交渉結果を外部発表する際、オスプレイの表記を見合わせるよう米側に求めた。国会質疑でも、知らぬ存ぜぬ、を通し続けた。オスプレイ配備の事実は環境影響評価(アセスメント)の最終段階になって、ようやく評価書の中に盛り込まれた。
低空飛行訓練について安全確保策は、米軍機には適用されない航空法の安全高度150メートル以上の高度を順守し、「人口密集地は回避する」としている。回転翼を上向きにする「ヘリモード」の飛行は米軍施設上空に限定し、回転翼を前に傾けた「転換モード」での飛行時間は、飛行が不安定になるためできる限り短くする、という。 オスプレイは「ヘリモード」で飛行しているときやモード転換時に事故が起きやすいといわれている。机上の合意通りに運用されるとは限らない。この種の合意で「安全性が十分に確認された」と結論づけるのは早計だ。
■ ■
政府と地元沖縄の関係は、1996年の普天間返還合意以来、最悪の状態である。
県民大会直後に事実上の「安全宣言」を発表し本格運用を認めたことは、住民の切実な声を土足で踏みにじるものだ。 基地の負担は本来、全国で公正に負担すべきなのに、それさえ実現できない政府とは一体、何なのか。
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2012-09-20_39211