愛国者の邪論

日々の生活のなかで、アレ?と思うことを書いていきます。おじさんも居ても立っても居られんと小さき声を今あげんとす

全国紙の社説が領土問題の解決は日米同盟深化路線の下では難しいことを改めて証明した!歴史の不正を正せ!

2013-02-23 | 日記

昨日に続いて領土問題について、まとめてみます。

今日の「北方領土」問題の社説を読み、改めて日米軍事同盟深化前提の下で、領土問題の解決は難しいことが判りました。理由は、以下のとおりです。

1.サンフランシスコ条約第二条(c)項の「日本国は、千島列島並びに日本国が千九百五年九月五日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する」という、いわゆる「千島放棄条項」の絶対化を前提にして、千島列島の返還を放棄し、南千島の一部と北海道の一部をゴチャゴチャにして返還を求めているからです。

 2.このことは同時に、サンフランシスコ条約の第六条(a)項の「連合国のすべての占領軍は、この条約の効力発生の後なるべくすみやかに、且つ、いかなる場合にもその後九十日以内に、日本国から撤退しなければならない。但し、この規定は、一又は二以上の連合国を一方とし、日本国を他方として双方の間に締結された若しくは締結される二国間若しくは多数国間の協定に基く、又はその結果としての外国軍隊の日本国の領域における駐とん{前2文字強調}又は駐留を妨げるものではない」として吉田首相単独で調印した秘密条約、旧日米安保条約を前提にしているからです。

 3.これは「共産主義の防波堤」として日本列島を位置づけ、旧ソ連・中華人民共和国・朝鮮民主主義人民共和国を敵視する政策が、旧ソ連崩壊後も継続していることによるものです。

 

 これについては、明快な批判があります。日米安保条約=軍事同盟深化派のマスコミは、ほとんど無視しています。この指摘はほとんど知られていないのではないかと思います。以下をご覧ください。

 ロ領土問題と平和条約交渉について 森・プーチン会談と「イルクーツク声明」は何を示したか 2001年4月13日 日本共産党 政策委員会、同 国際局

http://www.jcp.or.jp/seisaku/01-bassui/210414_niti_ro_heiwakousyo.html

 志位委員長が記者会見で公表した昨年3月5日におこなわれた鈴木宗男議員とロシア外務次官の会談記録

http://www.jcp.or.jp/seisaku/2002/10_0401.html

 党首討論で志位委員長 日ロ領土交渉をめぐる「二重外交」うきぼりに2002年4月11日(木)「しんぶん赤旗」

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik/2002-04-11/10_0301.html

 

以上の共産党の指摘を読みながら、以下の社説を読むと、日本政府とマスコミの立ち居地が明らかになります。その特徴は、以下のとおりです。

 1.旧ソ連敵視の「産経」を含めてヤルタ秘密協定の真相偽造とスターリンの免罪に終始していること。それはヤルタ秘密協定の当事者である英米を否定できないことが最大の理由です。戦前は鬼畜米英と扇動していたのに、です。

 2.「社会主義」を放棄したロシアを利用して社会主義を維持しているとしている中国・北朝鮮包囲網の強化に利用しようとしていること。それは日米軍事同盟が中国・北朝鮮に対する「抑止力」として位置づけているからです。

 3.そのことは日米軍事同盟深化論の枠組みにロシアを取り込もうとしていること。それは昨日の敵は、今日は味方の典型です。かつて独ソ不可侵条約・日ソ中立条約の意図と似ていると言えます。

 4.ロシアの経済的要求と日本の経済的要求の共有化をとおして対中・朝包囲網を狙っていること。このことは中国・北朝鮮にしてみれば、戦前の日本が国民に向かって自らの侵略行動を正当化した際に使った「脅威」論であるABCD包囲網と同じように映ることでしょう。

 5.以上の特徴からみると、日本はかつての過ちから何も学んでいないことが判ります。それは日米軍事同盟深化派は戦前の大東亜共栄圏の合理化勢力、戦争責任を曖昧にする勢力であることを、改めて証明していると言えます。アジアからみると、日本国民は、こうした政権を、そしてマスコミを事実上容認していると捉えられても仕方のない立場におかれていることも事実ではないでしょうか?アジア諸国民の連帯をどのようにしてつくりだすか、日本国民の課題は多いように思います。

 6.「脅威」論と戦争責任問題を真に克服しない限り、「戦前」と「未来」の構築は難しいということを自覚すべきです。ただし、こうした歴史のゆがみ現象は沖縄の施政権返還が形式なものであったものの、国民のたたかいによってつくりだされて歴史の教訓、前進であったことは、低めることはできません。大いに評価されるべきで、千島返還も、沖縄の返還運動を教訓に展開されなkればならないことは言うまでもありません。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-08-06/2011080604_03_1.html

 7.しかし、このことは、沖縄の施政権返還と同時に日米軍事同盟の強化・深化が沖縄に集中していること、このことに「本土の国民の無関心」以上に、国民的関心を喚起していくことは難しいことも考えておかねばなりません。それは千島列島とアイヌ問題は想定外におかれていることに象徴的です。

http://kam-r.sub.jp/ainu/tisimaainu.html

www.frpac.or.jp/rst/sem/sem2008.pdf

http://www.ainu-assn.or.jp/about03.html

 以下、各紙の社説を掲載しておきます。カットされることもありますので全文掲載しておきます。

産経 北方領土の日 足並み揃え「4島」譲るな 2013.2.8 03:41 http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130208/plc13020803420004-n1.htm

 「北方領土の日」の返還要求全国大会で、安倍晋三首相が「領土問題の最終的解決に向け進展が得られるよう、強い意志を持って交渉を進めていく」と決意表明した。 第二次大戦末期の混乱に乗じ、日本がポツダム宣言を受諾した後にソ連が北方領土を不法占拠して今年で68年となる。日本固有の領土である四島の返還を強く求めていきたい。 3年半の民主党政権時代、ロシアはメドベージェフ氏が2度にわたって、国後島に足を踏み入れた。無法を繰り返させないためにも、安倍首相は春以降に予定される訪露を通じてプーチン大統領と信頼関係を築き、日本の国益を実現してほしい。 ロシアでは昨年以降、日本との連携を強化すべきだという考え方が表面化している。その背景の一つは、海洋覇権を目指す中国の動きへの警戒感だ。 プーチン大統領の側近は昨秋、日本外務省と安全保障面で関係強化を目指す異例の覚書を交わした。側近は「ロシアは(日中の)どちらの側に立つこともしない」と、尖閣諸島をめぐる中国の対日強硬姿勢には与(くみ)しない方針も示した。日本は中露関係を適切に見極めるべきだ。 日本に歩み寄る経済的な理由もある。米国での新型天然ガス「シェールガス」の開発本格化のあおりで、ロシアは最大の輸出先である欧州でガスの販売シェアを減らしている。原発が稼働せず、エネルギー確保に悩む日本は格好の売り込み先と映るはずだ。 むろん、日露関係の進展が直ちに北方領土問題の解決に結びつくといった幻想を抱くことは禁物である。ロシア軍は今月5日、「クリール諸島」(北方領土と千島列島)で大規模軍事演習を本格化させているし、7日には戦闘機2機が日本の領空を侵犯する事態となっている。 極めて残念な動きもある。択捉島を除く3島返還で決着を図るのも選択肢の一つだ-などの見解を示した森喜朗元首相のことだ。森氏は今月下旬にも事実上の首相特使としてプーチン氏と会談する。二元外交で誤ったシグナルを送る愚は、厳に慎んでほしい。 「北方領土の日」は日露通好条約が調印された1855年2月7日にちなんで設けられた。条約の精神を思い起こし、四島返還で世論の結集を図りたい。

 

産経 森・プーチン会談 「異常事態」露が打開せよ 2013.2.23 03:21

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130223/plc13022303220003-n1.htm

 安倍晋三首相の特使として訪露した森喜朗元首相との会談で、プーチン大統領は「日露間に平和条約がないのは異常な事態だ」と語った。 大統領として平和条約締結への真摯(しんし)な意欲を示したのだとすれば、評価したい。だが、平和条約を結べない理由が北方領土への不法占拠にあり、原因を作ったのがロシア自身であることは言うまでもない。 北方四島は先の大戦の終戦時の混乱に乗じてソ連が日ソ中立条約を破棄し、武力占領した。プーチン氏はその後継国家の元首として歴史の不正を正す責任がある。 プーチン氏は資源・エネルギーに農業協力なども加え、今春にも予定される首相の公式訪露に期待を示したが、まずはロシアが北方四島を返還しないかぎり、異常事態の解決はないことを強く認識してもらいたい。 日本政府も「3島返還」「面積折半」といった異論に流されてはならない。原則を堅持して対露協議に臨む必要がある。

 今回、留意すべきは、両氏が2001年に日露首脳として発表した「イルクーツク声明」の重要性を再確認したことだ。 声明は北方領土問題を「歴史的・法的事実」に立って「法と正義の原則」を基礎に解決するとうたった「東京宣言」(1993年)を明示、「四島帰属問題を解決して平和条約を締結する」としている。プーチン氏に必要なのは、これを直ちに行動に移すことだ。だが、プーチン氏は昨年3月に自ら発した「引き分け」発言について「勝ち負けなしの解決だ。双方が受け入れ可能な解決策のことだ」と述べた。従来の発言とほぼ同じで、失望せざるを得ない。 森氏が「最終解決には日露首脳の決断が必要だ」とプーチン氏の背中を押し、首相訪露への地ならしに徹したのは当然といえる。 対日接近の背景には、中国が経済・軍事的に膨張し、米国のシェールガス開発でロシア産石油・天然ガスが守勢に立たされている事情もうかがえる。北朝鮮問題でも日露協力の余地はある。 だが、油断は禁物だ。「北方領土の日」にはロシア戦闘機が日本領空を侵犯し、対日改善を求める誠実な態度とは到底いえない。 日本政府はロシア側に対し、北方領土返還によって信頼を取り戻すことが全ての出発点であることを理解させるべきだ。

 

読売 北方領土交渉 「仕切り直し」へ戦略練り直せ(2月23日付)

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20130223-OYT1T00154.htm

 日露首脳会談への地ならしという狙いは達成された。具体的に交渉をどう進めるか、安倍外交の戦略が問われよう。 森喜朗元首相が、ロシアのプーチン大統領とモスクワのクレムリンで会談した。 プーチン氏は、北方領土問題が障害となり、日露両国が平和条約をいまだ締結していないことを「異常な事態」と表現した。 柔道の試合場をメモ用紙に描いて、「両国は試合場の端にいてプレーが出来ない。真ん中に引っ張ってきてそこから始めるということだ」とも語り、交渉を仕切り直す意向を明らかにした。 メドベージェフ前大統領は自ら国後島を訪問し、「我々の古来の土地だ。一寸たりとも渡さない」と強硬な姿勢を見せつけた。 安倍首相は、領土問題に前向きなプーチン氏のシグナルをきちんと受け止めなければなるまい。その真意を見極めつつ、粘り強く交渉に当たってもらいたい。 森氏はプーチン氏との会談で、北方領土問題について昨年3月「引き分け」を目指すと発言したことの意味を質(ただ)した。プーチン氏は「勝ち負けなしの解決だ」と述べるにとどめたという。 歯舞、色丹2島の引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言が、領土交渉におけるプーチン氏の立場の原点だ。ロシアは近年、国後、択捉両島などの基盤整備に予算を投入し、北方領土の「ロシア化」を着々と進めている。 森氏が先月、テレビ番組で択捉島以外の3島の先行返還に言及したのは、現実的な解決を急ぐべきだと考えるからだろう。 麻生副総理も外相時代に4島全体の面積を2等分する「面積等分論」に言及したことがある。 だが、安倍、プーチン両政権による交渉はこれからである。交渉前から譲歩姿勢を示せば一層つけこまれかねない。従来通り4島返還を掲げて交渉に臨むべきだ。 プーチン氏は、石油や天然ガスなど、エネルギー分野での日露協力の拡大に強い期待感を示した。広大な極東で日本の農業技術を生かしたいとも語った。 日本の経済力や技術力は、極東・シベリア開発に力を入れるロシアにとって魅力だろう。領土問題が解決すれば、日露両国がともに利益を享受できる分野は一段と広がるはずだ。経済・軍事面で膨張する中国への牽制(けんせい)ともなる。 日露協力の戦略的重要性について共通認識を深めていくことが大切だ。それが、北方領土問題解決への環境整備につながろう。(2013年2月23日01時27分  読売新聞)

 

毎日 森元首相訪露 首脳交流につなげよ  2013年02月23日 02時33分http://mainichi.jp/opinion/news/20130223k0000m070124000c.html

ロシアのプーチン大統領が、安倍晋三首相の事実上の特使として訪露した森喜朗元首相と会談した。首相親書を手渡した森元首相に大統領は北方領土問題解決への意欲を改めて表明。安倍政権発足後、初の首脳会談実現に向け、停滞が続いた日露関係は新たな段階へ踏み出した。 プーチン氏にとって16回目の会談となった森氏は、日本政界で最も信頼する「親友」だ。2人は01年に日露首脳として「平和条約締結後、歯舞群島、色丹島を日本に引き渡す」と定めた56年共同宣言を領土交渉の出発点とすることで合意している。日本は国後島、択捉島を含む4島返還を求める立場は変えていないが、今回の訪問は、日本が01年当時の姿勢に立ち戻り柔軟な考えで交渉を再開するシグナルだったともいえる。 プーチン大統領は昨年、「引き分け」という言葉を使って日露双方の譲歩の必要性を訴えた。その真意について大統領は今回の会談で、柔道場の絵を描いて、今は隅で行き詰まっている両国が再び中央に出て試合を再開する必要があるという趣旨の説明をしたという。 ロシアが対日関係改善に積極的な理由はいくつかある。開発が進まず人口流出の激しいロシア極東を、アジア太平洋市場への資源輸出基地として発展させるには、インフラ整備などで日本の技術力が必要だ。米国の「シェールガス革命」がもたらした世界エネルギー市場の地殻変動で、資源の輸出先として日本の可能性が改めて注目されている。さらに、中国の台頭や北朝鮮の核開発などで緊張が高まる東アジア情勢をにらみ、極東の発展や北極海航路の開拓を国家戦略の重要な柱とするロシアの安全保障という意味でも、日本との協力は欠かせない。北方領土問題の解決は、こうした大きな構図の中に位置づけられている。 ロシアの優先課題は経済だ。森元首相の訪露に先立ち、国営石油企業ロスネフチのセチン社長が訪日し、日本企業にオホーツク海の大陸棚共同開発への参加を呼びかけた。26日にはイシャエフ極東発展相が訪日し、極東開発で日本の協力を求める。長期にわたる体力と忍耐が必要な対露経済協力は、日本が国策としてロシアとどう向き合うかという戦略がなくては立ちゆかない。 領土問題の解決にあたって日露間の認識に依然隔たりがあるのも事実だ。しかし、中国などと緊張要因を抱えた日本にとって、地域の安定やエネルギー資源の確保という広い視点からも対露関係をとらえ直す必要がある。その中で領土問題打開への道筋を探っていくために、今回の会談を足がかりに、首脳同士の活発な相互交流にぜひつなげてほしい。

 

日経 北方領土交渉を前に進めよ  2013/2/22付

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO52006880S3A220C1EA1000/

 森喜朗元首相が首相特使としてロシアを訪問し、プーチン大統領と会談した。今春に見込まれる安倍晋三首相の公式訪ロに向けた地ならしとして、意義深い会談だったといえる。今後も日ロ間のさまざまな交流を深め、北方領土交渉を前に進めていってほしい。 森氏はプーチン大統領とは旧知の仲で、個人的に親しい。会談で大統領は「日ロ間に平和条約がないのは異常な事態だ」と述べ、安倍首相の訪ロに期待を表明した。 安倍首相は北方領土問題の解決を通じた平和条約の締結に前向きだ。プーチン大統領も昨年末の記者会見で安倍氏の意欲を高く評価し、「建設的な対話をしていく」と述べている。 首脳間で領土問題に本格的に取り組む環境は整いつつある。

 問題はプーチン大統領が「引き分け」による決着を表明し、四島の日本への帰属を求める日本側の主張とかけ離れていることだ。大統領は今回、「双方が受け入れ可能な解決策」が「引き分け」の意味だと森氏に語ったという。 ここは両首脳が責任をもって打開策をみいだしていくしかない。重要なのは尖閣諸島や竹島と異なり、日ロ双方とも北方領土問題を交渉によって平和的に解決しようとしていることだ。 そもそも日本の首相の公式訪ロは10年も途絶えている。近年は両国首脳が膝詰めで、領土問題をとことん話し合う機会はほとんどなかったといってもいい。首脳の相互訪問や国際会議の場を使った会談を重ね、解決策を探っていくときだろう。 ロシアは極東開発や産業構造改革などの分野で日本の協力に期待している。日本もエネルギーが豊富で大きな消費市場も抱えるロシアとの協力拡大の余地は大きい。安全保障分野でも、中国の軍事力強化や北朝鮮の核開発は日ロ共通の脅威になりつつある。 日ロが平和条約を締結し、関係を強める利点はどこにあるのか。重層的なアプローチで領土交渉の進展を促すことも大切だ。

 

朝日 日ロ関係―領土と協力の両輪回せ 2013年2月23日(土)付

http://www.asahi.com/paper/editorial.html

 安倍首相が、春の大型連休中にもロシアを公式訪問する見通しになった。 日ロ間では首脳の公式訪問が絶えて久しい。これを機に首脳対話を活性化させ、北方領土問題の解決と両国関係の進展へとつなげたい。 森元首相がモスクワでプーチン大統領と会談し、日程調整を進めることで合意した。プーチン氏は「両国間に平和条約がないことは異常な事態だ」と語り、北方領土問題の解決にも意欲を示した。  日本の首相のロシア公式訪問は、日ロ関係全体を包括的に発展させる「行動計画」をつくった03年の小泉元首相以来、10年ぶりとなる。  行動計画のうち、経済分野は貿易額がその後、4倍以上になるなどの成果をあげた。 一方、領土問題は「相互に受け入れ可能な解決を模索する」としながら前進はなかった。05年のプーチン氏訪日から続く首脳による公式訪問の不在は、その反映ともいえる。 いまプーチン氏があらためて日本との関係改善を望む背景には、現在のロシアの抱える経済や安全保障上の事情がある。  極東やシベリアの開発で、日本の資金や技術の引き入れは欠かせない。米国のシェールガス革命のあおりでロシアの天然ガスは欧州市場で供給が減り、日本はじめアジア市場への売り込みも必要になっている。 日本にとっても、福島第一原発事故を受けてエネルギーの供給先の多角化は急務である。

 軍事面で強大化する中国や、核開発を続ける北朝鮮は、日本と同様、ロシアの脅威になりつつある。それへの牽制(けんせい)という意味でも、協力の拡大は両国の利害が一致する。  とはいえ、領土問題でのプーチン氏の姿勢は慎重だ。 歯舞、色丹の二島返還から踏み出す姿勢は見せていない国後、択捉を含む四島の帰属問題解決をめざす日本側との隔たりは、なお大きい。 だが、行動計画がそうだったように、領土問題で具体的な進展が伴わなければ、プーチン氏のいう両国間の「異常な事態」は解消されず、幅広い協力は立ちゆかない。そのことを、プーチン氏は理解すべきだ。 森氏との会談で、プーチン氏は「もっと頻繁に両国の首脳は会うべきだ」と述べた。この提案を歓迎する。 定期的な首脳協議を重ねるなかで、領土問題をとことん話し合い、その解決と両国の協力を両輪で進める道筋を見いだしていってほしい。

 

北海道社説 森特使訪ロ 首脳協議の機は熟した(2月23日)

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/443871.html

 日ロ首脳会談に向けて環境づくりはできたといえるのではないか。  安倍晋三首相の特使としてモスクワを訪問した森喜朗元首相はプーチン大統領との会談で、北方領土交渉は2001年のイルクーツク声明を土台に加速させていくことを確認した。  第2次安倍政権の対ロ外交は友好ムードの中で本格始動した。  安倍首相は早ければ今春、ロシアを訪れる。国内政局の混迷が続いたため、首相の公式訪ロは10年ぶりとなる。安倍首相はプーチン氏と信頼関係を構築することが肝要だ。  しかし、ロシア側は歯舞、色丹の2島返還で決着させる考えのようだ。厳しい交渉が予想される。  安倍首相は四島の日本への帰属を認めさせて領土問題の解決を目指す従来方針を堅持しつつ、新たな戦略を練らなければならない。 柔道家でもあるプーチン氏は森氏との会談で「領土交渉は畳の中央に引き戻さなければならない」と述べ、解決への意欲を示した。

 しかし、自らが言及した「引き分け」の中身については「双方受け入れ可能な解決を意味する」と述べるにとどまった。  これが2島返還での決着を意味するならば、到底受け入れることはできない。四島返還こそ、畳の中央で論じるべきだ。  イルクーツク声明が土台になるなら、1956年の日ソ共同宣言と93年の東京宣言に基づき歯舞、色丹2島の返還と並行して国後、択捉両島の帰属問題を協議することになる。  今回の会談について元島民からは「一応の道筋がついた」と安堵(あんど)の声が上がる一方、「政府は四島返還の基本方針はぶれることなく主張してほしい」との意見も出ている。 安倍首相は、政権内部で四島返還の旗は降ろさないことをあらためて確認し、首脳会談に臨むべきだ。  ロシアが対日関係の改善を急ぎたい背景には、中国に対抗するためには極東・シベリア開発で日本の協力が欠かせないことや、世界有数のエネルギー資源国として米国のシェールガス革命への強い危機感がある。  プーチン大統領は北海道と極東の気候などの共通性に触れつつ、農業技術の協力も求めた。北海道農業が力を発揮できる場面でもある。  産業・経済協力の促進は両国の信頼醸成につながり、領土問題を進展させる上でプラスになるだろう。 一方、国後島では米国系企業がロシアの管轄下で地熱発電所建設を手がけるなど、四島のロシア化が一段と進んでいる。  安倍・プーチン会談では、イルクーツク声明からさらに踏み込んだ進展を期待したい。

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