木本:北朝鮮という国が、年明け以降、何度もニュースに登場しています。今ではお騒がせ国家というイメージですが、学校では、最初の指導者である金日成はマルクス主義に傾倒し、主義主張のはっきりした指導者ということで習った覚えがあります。
愛国者の邪論 そんなこと学校で教えているでしょうか?ウソか、この人の「感じ」ですね。日本の教科書で、このようなことを書いている教科書を視たことがありません。
でも孫の世代になった金正恩の北朝鮮はおかしな国ですよね。まず、国民のためにある国なのか、金家のための国家なのか、そこがわからない。まずはそこから教えていただけますか。
美根:そこは最大の問題の一つです。北朝鮮は一言でいうと、わかりにくい国。「国の基本」のところで、我々日本人の考え方とえらく違います。
木本:といいますと?
美根:あの国は特殊な状況にあります。日本との国交もなく、閉鎖的な体制で、何が起こっているのかがわからない。
それでも分かることはあります。まず大前提として、日本との最大の違いはなにか。日本人のほとんどが日本という国が無くなるとは思っていないですよね? おそらくそう思っている国民は0.1%もいないでしょう。ところが北朝鮮では、朝鮮民主主義人民共和国という国が無くなるかもしれないという心配が常にあるのです。
木本:その心配をしているのは国民でしょうか。それとも指導者でしょうか。
美根:指導者です。国民は、無くなってもいいと考えているかもしれませんね。これは私の想像ですが、本心では、韓国のようになってもいいと思っている人が多いはずです。ただ、指導者たち、つまり指導体制、官僚、軍部という「統治」の側にいる人たちは恐れている。朝鮮民主主義人民共和国という体制が崩壊したら、おまんま食い上げどころか、今までやってきたひどいことをぜんぶ暴かれて粛清されてしまうかもしれないわけです。そんな心配をずっとしている。これは、日本人にはなかなか理解しにくい。
木本:指導者のテーマが「自分たちの生存」ということになっているんですね。
美根:金日成は若い時に平壌から外へ出て、満州でソ連軍の指導の下で抗日ゲリラに参加した。彼らは日本統治下の朝鮮半島に、「独立を取り戻す」「人民の生活を取り戻す」という目標で、ゲリラをした。
自分たちでどこまで望んだかはわかりませんが、当時の選択肢は国境を接するソ連しかなかったので、自ずと共産主義を選ばざるをえなかった。もし隣に米国があったら、それこそ明治政府的な方式の国になったかもしれない。おそらく、まったく違う体制になっていたでしょうね。
木本:たまたま金日成がご近所にあるマルクス主義に出会ってしまった。
美根:歴史的にそういう状況でした。もっとも金日成も初期のころは安泰とはいえなかった。独裁体制にありがちな、権力闘争があった。元から誰もがひれ伏すような権威があったのではなく、政敵と闘って勝ちとった権力と権威なわけです。そうした闘争は1970年ころまで続いていました。
木本:そうなんですか! 朝鮮戦争が終わってすぐに、独裁体制を築いたと思っていました。
美根:北朝鮮は、朝鮮労働党の指導で建国をし、国土を復興させ、経済を発展させていった。みんなで国づくりをし、指導層も確立していった。そういう大きな考えで長らく進んできました。そこに親子の関係、家族の関係という、儒教的な考えが加わって、強固になっています。朝鮮では、儒教的な要素は中国以上に強い。そこに金家が続いている理由の根本があるとみています。
愛国者の邪論 日本の皇室と同じです。日本の場合は「三種の神器」がキーワードです。これをソ連に守ってもらうか、アメリカに守ってもらうか、悩みながら、結局は資本主義国であるアメリカを選択したのです。【ご聖断】に至る経過は、このことを浮き彫りにしています。
原爆投下を、「人道に反する」として、アメリカ政府を脅し、その見返りに「国体護持」を実現しました。その後の歴史を視れば一目瞭然です。
金正恩は若者を大切にしている
木本:息子の金正日、そして現在の金正恩と世代を経るにつれ、だんだん北朝鮮はおかしくなってきたような印象があります。この印象は正しいのでしょうか。
美根:難しい質問ですね。金正恩は、2013年に父・正日の妹婿で血の繋がらない叔父である、張成沢(チャンソンテク)を粛清しました。それ以外にもたくさんの指導者を処刑したので、とんでもないトップという印象が強いかもしれません。
こうした粛清を行ったことは事実ですが、それですべてかと言えば、そうでもない。
あえていえば、これまでの指導者にはない、「良い面」もあります。例えば彼はスポーツが大好きです。国民を奮い立たせるのにとてもいいもの、と考えているようで、非常に力を入れている。平壌市内には競技ごとにサッカー、陸上競技、卓球などの専門競技場が軒を連ねています。
木本:総合運動場じゃないんですね。
美根:そうです。日本のスポーツ振興など、及びもつかない力の入れようです。街中では、企業がお昼休みに卓球やバレーボールなどを奨励して、各会社で対抗して試合をしている。課長さんは、自分のチームが負ければ、それほど大きなものではありませんが、人事評価として罰点がつく。運動が得意じゃない課長さんは肩身が狭いようです。日本人の眼に映りやすいのはワールドカップなどでサッカーの北朝鮮代表が意外にもかなりの強豪であることです。その根底には国家レベルの訓練・準備・投資があり、そこには相当の力を入れています。
普通の国家らしい面もあるにはあるが……
わかりにくい国「北朝鮮」は、いったい何を目指しているのか
木本:目的は豊かな国にするためでしょうか。それとも国民の士気を高めるためでしょうか。
美根:両方ですね。経済的な意味での豊かさには直接は繋がりませんが、国民が元気に仕事することは、経済的にも大事なので一体です。金一家のためだけでなく、やはり国民全体への影響という大きな目的でやっています。
木本:とはいえ、彼らが普通の国らしいことをちゃんとやっているということを知れば、印象もちょっと変わってくるかもしれませんね。
意外にも金正恩には国際感覚がある
美根:私は金正恩のファンではありませんが、彼のやっていることを、事実として、きちんと見るべきです。昨年7月に平壌の空港ターミナルビルが新しくなりましたが、金正恩は完成まで何度も視察しています。
かつて私が北朝鮮に行った時の空港ビルはひどいものでしたが、立派なものを作った。こうした施設を作る場合、自ら出向いてチェックするのも金正恩なんです。
木本:それは知りませんでした。なんでそれを隠すのでしょうか。
美根:隠しているわけではないですよ。日本でもきちんと報道されています。しかし、メディアが簡単に入れないのは事実です。入ると、記者の動きをコントロールするのが大変だからです。入ったメディアはいろいろ見たい、でも体制側は厳重にしないと何を映すかわからないからコントロールしようとする。
愛国者の邪論 「メディアコントロール」は日本でも同じです!北朝鮮「脅威」論が好例、象徴です!安倍首相が夜な夜な何をやっているかを視れば明らかです。
木本:あれはOK、これはダメとやることが難しいから、一斉にダメにしているんですね。
金正恩が今やっていることを会社にたとえた場合、一族経営で、息子から孫が経営する時代になって、ちょっとは社員の生活も真剣に考え始めているというイメージでいいんですか。
美根:そういう面はあります。金正日は一風変わったところがありました。彼の趣味は乗馬や映画鑑賞です。韓国の映画監督を香港で拉致したこともある。日本の鮨職人を連れていました。一方、金正恩は若い人の趣味、国際的な感覚があるように見える。
木本:そうなんですか。知らなかったです。
美根:正日に比べればまともです。では、その人が、ひどいことするのはなぜか。その理由に、正日が急死したため、継いだのが20代後半で、準備不足だったことがあります。後継者には決まっていても、長男じゃなく三男で、若く経験が乏しかった。乏しいなかで難問ばかりの北朝鮮において、指導力を見せつけ、確立するために少々ひどいこともやらざるをえなかったのでしょう。
木本:若さゆえの焦りがそうさせたわけですね。
美根:処刑された張成沢は中国との関係をほとんど一手に押さえていた。叔父さんからすると、若造に何ができるんだという思いがあり、しかも身内ですから、上からの目線になっていた。正恩を甘く見ていたのでしょう。
なにをするかわからない危険が北朝鮮にはある
木本:それでも処刑してしまう国なんですよね。叔父を処刑して、代わりに新しい中国との窓口となりうる人はいるんですか。
美根:張成沢に変わるような人材は出てきていません。ですから中国との関係はものすごく落ちています。それでも貿易は今でもかなりある。
愛国者の邪論 中国側、特に旧満州地域には、北朝鮮は重要なマーケットであると同時に資源輸入国なのではないでしょうか?
中国と北朝鮮の 経済関係に関する調査 - 日本貿易振興機構
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07000785/cha_prk_economy.pdf
おそらく、正恩の希望は自分が全部をコントロールすることでしょう。自分の権威にチャレンジするものは許さない。しかも若いから極端な形で出てしまうところがある。
木本:会社で考えると、いい会社じゃないですよね。
美根:そう。そしてなにより国の名前とは違って「民主主義」ではない。なにが起こるかわからない、そのような危険が北朝鮮にはあります。
愛国者の邪論 「民主主義」「人民共和国」とは真逆のことが行われています。それでも国家は運営されています。しかし、戦前・戦後の日本も同じです。憲法が活かされているでしょうか?
木本:う~ん。どうにも、いい方向に向かっていると総括できませんね。
アメリカは北朝鮮をつぶしたい?
美根:善悪両面あって、非常に危険なことが起っている一方、正恩という若い独裁者の指導力を確立するという面では前進していると言える。それは内政の部分です。問題は外交なんですよ。
木本:核実験をして、ミサイルを日本海に飛ばす。そのやり方は変わっていない。アピールはそこしかないということなのでしょうか。
美根:基本的に、彼らの外交姿勢は変わっていません。彼らの望みは、繰り返しになりますが、北朝鮮の存続なんですね。今の体制を固定したい。その点は、これまでにもある程度前進しています。1991年に国連に韓国と同時加盟を果たしましたが、アメリカとの関係は1953年に朝鮮戦争が休戦になった時と何ら変わっていない。つまりいまだ休戦状態なわけです。
朝鮮戦争 - Wikipedia
木本:いまでも一触即発という意識があるわけですね。
美根:正恩は怒ると「いつでも戦争状態に戻る」と言うそうです。ただ法的にも政治的にも北朝鮮の地位は未確定です。そのため、彼らの外交戦略は、北朝鮮の地位を確定させることにあるのです。
木本:世界は、北朝鮮をどうこうしようなんて、考えていないのではないでしょうか。北朝鮮側がミサイルを撃たなかったら、なにも言わないような気がしますけれども。
美根:そこが我々と認識がずれているんですね。たしかに日本では誰もつぶすなんて誰も思っていないかもしれない。一方でアメリカ人はどうなのか。ここにはクエスチョンマークがつきます。
ブッシュ大統領(子)の時代。悪の枢軸としてイラク、イラン、北朝鮮を名指ししました。その後イラクは滅ぼされた。いまイランとは仲良くなりつつある。北朝鮮はそのまま。アメリカには北朝鮮こそ世界の悪の根源という意識がある。アメリカは1994年に北朝鮮への軍事侵攻が利益か不利益なのかを検討したことがありました。ただ、あまりにもアメリカ軍の被害が大きくなるという結論だったので、取りやめました。これは有名な話です。北朝鮮は、真剣にアメリカの軍事侵攻を恐れているのです。
外交にミサイル/欲しいものは平和協定
木本:そんな事実があったんですね。知りませんでした。しかし、その理由はどこにあるのでしょうか。アメリカは北朝鮮と韓国を統一することで、中国と直接の国境を持ちたいのでしょうか。
美根:私は、その考えがあるのではないかと思います。ただ、それを積極的に望んだり、手出しをするかは別問題ですよ。もし情勢の変化で北朝鮮が無くなったら、アメリカは都合がいいと思うのではないかと思います。そうなるといろんな問題が解決すると思っている。
平和協定の交渉と、核・ミサイル放棄
木本:北朝鮮はその危険性をきちんとわかっている。だからこそ、アメリカからはっきりと「北朝鮮をずっと続けていいよ」と言ってほしいのでしょうか。
美根:そうです。平和協定の交渉をしたい。それを結べれば、お互いの存在を認めることになる。「つぶしたり攻めたりなんて考えもしません」という意味です。ですから平和協定はものすごい意味がある。
木本:国連かどの機関が適当かわかりませんが、アメリカに対して『もう北朝鮮を認めましょうよ』って、もっと強くアピールしたほうがいいんじゃないでしょうか。それが対北朝鮮対策になるんじゃないですか。
美根:ただ北朝鮮のイメージが悪すぎる。彼らの言動は信頼されない。北朝鮮は交渉をしたいと何回も言っていますが、アメリカは取り合わない。もし交渉したいなら核兵器とミサイルを廃棄しなさい。そうしたら対応しますよ、とはねつけている。
木本:結局そこになるんですね。
美根:ニワトリと卵の関係で、話が噛み合ない。どっちが先か? でややこしくなる。それが現状なんです。
木本:なるほど、よく理解できました。
(構成:高杉公秀、撮影:梅谷秀司)(引用ここまで)
愛国者の邪論 北朝鮮は、「フツーの国」になろうとうしている。「アメリカは核兵器で脅すな!俺たちを認めろ!」と。「アメリカと対等になるために、核兵器を抑止力として持つことは当然だ!アメリカだってもっているぞ!」と言っているのです。
アメリカは、北朝鮮の「無法」をまず、問題にしている!しかし、歴史的に視れば、「冷戦」思考が依然として残っているということです。「朝鮮戦争」の「原因」は、未だに不明です。「北朝鮮が攻めてきた」説もあれば、あれは「やらせ」だったという説もあります。
いずれにしても、朝鮮戦争は「休戦」状態であって、「終戦」ではないのです。平和協定すら結ばれていません。そこに問題があります。軍事的緊張が続いているのです。「国連軍」として米軍が日本の基地に存在していることは米軍基地に国連旗が掲げられていることを視れば明らかです。
だからこそ、日本は、アメリカの側から視るのか!北朝鮮の側から視るのか!どっちからも視る必要があるでしょう!それは日本国憲法を持つ国だからです。
日本国憲法は侵略戦争の反省の上に制定された国家の最高法規です。これを使っていないのです。何故でしょうか?憲法を変えることが戦後自民党とその政権の目標だからです。
その政権と政党が如何に憲法を軽視しているか。その事例は、5月3日の憲法記念日に、国家の式典が行われていないことをあげれば十分です。このことは、全くケシカラン話です。安倍首相に至っては5月3日は、外国にいます!外遊です。北朝鮮とは五十歩百歩ではないでしょうか?