迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

夕霧由縁優巴月。

2024-06-30 18:30:00 | 浮世見聞記
ラジオ放送で、常磐津一巴太夫師の追懐番組を聴く。曲目は平成十六年(2004年)十一月に収録の「吉田屋」。本外題は「其扇屋浮名戀風」、義太夫節「夕霧阿波鳴渡」を原曲につくられた常磐津の大曲で、上方歌舞伎の代表的狂言「吉田屋」の後半、扇屋夕霧の登場から義太夫と掛け合ひの出語りとなり、夕霧の真情を情緒たっぷりに聴かせる。私は大阪に在住の時代、片岡仁左衛門(まつしまや)家型の「吉田屋」には何度も関はり、そ . . . 本文を読む
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雨降って地均(なら)す。

2024-06-29 19:25:00 | 浮世見聞記
昨日一日中のしつこい雨も今朝には止んで、夕方には地元で新たな散歩道を見つける。そこに道があることはとっくに知ってゐたが、散歩の道としては、今日初めて足を踏み入れたるものなり。外の世界は深いネ。氣に入った新しい靴も手に入り、梅雨明けしたら本格的に外出のお供にしやうと樂しみにして、すでに炎暑を恐れてゐる令和六年の夏なれど、もしかしたら“模様替へ”の夏になるかもしれぬ。 . . . 本文を読む
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惨めを焙る般若聲。

2024-06-28 22:44:00 | 浮世見聞記
ラジオ放送の寶生流「葵上」を聴く。前回放送の「野宮」と同じ、六條御息所が主役(シテ)だが、前回が古き戀から解脱出来ぬ女の悲哀を静かに訴へた曲ならば、こちらは激しくぶつけてくる曲。そんな我が身を淺ましいと自覺してゐながら、抑へきれずに生靈となって相手の女のもとに現れる惨めさ、後シテの般若面こそ、身分を超えて人と運命を狂はせる“戀”なる魔モノの視覺化なのだ。そしてこの厄介な魔モノを心の内 . . . 本文を読む
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喜聲法樂。

2024-06-27 16:40:00 | 浮世見聞記
ふうっと氣が向いて、神奈川縣藤澤市片瀬──江ノ島に近い龍口寺(りうこうじ)を訪ねる。日蓮上人の“龍の口の法難”ゆかりの地に、建武四年(1337年)の創建云々、木造の本堂の風情が好きで、私もたびたび訪れてゐるが、前回はたしか人災疫病禍の最中で、不透明な先行きへの心配を訴へたと記憶してゐる。いまやさうした不安もほぼ無くなり、今日は明日の予報を知りたくて、如何 . . . 本文を読む
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浦島麺喰。

2024-06-26 16:18:00 | 浮世見聞記
かなり久しぶりに“ファミレス”へ入り、昼食をとる。 行ってビックリ、席への案内以外は今やすべて無人對應。 食べたいものが決まったらタブレット端末を指先で突っついて注文、“お冷や”は向かふの冷水機まで自分で出向いて順番待ち、そして注文した料理を席まで運んで来るのはロボット!ところがロボット殿のシゴトはここまで、實際にテーブルに乗せるのは注文主のニンゲン様にて、しかもそのためにイスから立 . . . 本文を読む
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烙印ノ彷徨。

2024-06-25 15:05:00 | 浮世見聞記
ラジオ放送の觀世流「野宮」を聴く。生前に光源氏と關係をもったことが、魂となった後も“烙印”となって現世を彷徨ふ、六條御息所の悲哀。 謠ひの節付けは至って静かで優美だが、詞(コトバ)は光源氏への未練節。醒めた愛になほも縋らうとするその有様が、いかにもオトコ目線の曲だなと思ってしまふ。昔女は今日も「火宅の門」を出て、逢へるはずもない思ひ出を求めて現世を彷徨ふ。かつて生靈にまでなった女である。その情の強 . . . 本文を読む
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愈々いよいよイヨイヨ。

2024-06-24 21:10:00 | 浮世見聞記
“梅雨忘れ”とでも云ひたくなるやうな、ベタっとした蒸し暑さに、いよいよ部屋で冷房を使用せり。なんでも今日の東京圏は33℃を超える「今年いちばんの暑さ」云々、今日も町なかで救急車が一軒家に橫付けしてゐるのを見かけたが、昨夏と同じやうに過ごしてゐたら、いよいよ命の危険に関はるだらう。人が暑さに順應するには、一~二週間はかかる云々、たしかに梅雨が明けて盛夏の頃には、体も慣れてゐるのは感じる . . . 本文を読む
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野種亂躍。

2024-06-23 19:50:00 | 浮世見聞記
さっそく朝から降ってゐた雨が昼頃に一時的に止んで、道路も乾き始めたのでまた降り出さぬうちにと、昼食後に散歩に出る。道沿ひの家の屋根に、やたら鳩がゐるのを見つけて、なんだらうと足を止める。まわりの家の屋根には一羽もおらず、その家の屋根にばかり集まってゐて、薄氣味惡さすら覺ゆ。もしかしたら、隣りが養鶏場ゆゑ、その飼料を狙ってゐるのかもしれない。おなじ鳥類の哀しさよ。電線に、大柄なインコらしきが止まった . . . 本文を読む
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表現ノ奔放。

2024-06-22 19:50:00 | 浮世見聞記
明日からまた天氣が崩れるらしいので、今日のうちに外出しておかうと、昼過ぎより“街”まで散歩に出る。内にゐるだけで、なにやらプクプク肥えていくやうな恐怖に襲はれる私は、もしかしたらココロになにかビョーキを抱へてゐるのかもしれない。“街”の入口で都知事選のポスターを見かけて、この度ひとりの女立候補者が卑猥な図案のそれを“合法”と勘違ひして掲示して警視廰から叱責、すぐに回収したとのお粗末な . . . 本文を読む
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近畿、東海、関東甲信が梅雨入り梅雨前線が北上全国的に遅れ気味

2024-06-21 20:46:00 | 浮世見聞記
dmenuニュースよりhttp://topics.smt.docomo.ne.jp/article/asahi/nation/ASS6P0P79S6PUTIL006M?fm=d東京圏では平年より14日遅く、昨年より13日遅く、梅雨入りしたと見られる云々。明け方に降り始めた雨は昼頃に本降りとなり、なるほどいよいよだな、と思って午後に昼寝して目が覺めたらいくらか雨足が弱まり、夕方には止んで日が差し始め . . . 本文を読む
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すべては紙切り縁切り結び。

2024-06-20 23:42:00 | 浮世見聞記
橫濱人形の家の「いざなぎ流のかみ・かたち─祈りをこめたヒトガタたち─」展を觀る。土州北東部の山間部に位置する香美市物部町に、大昔から傳承されてゐる独特な民俗信仰「いざなぎ流」を、やはり特異な姿をした御幣の展示を中心に紹介した、郷土性と土俗味あふれる企画展で、その人の身辺や我が身に起きる現象はすべて自然に住む精靈の為せるわざであり、“太夫”と呼ばれる呪術師はその状況に應じた形の御幣を作って祈祷する。 . . . 本文を読む
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晴彩雨陽。

2024-06-19 21:06:00 | 浮世見聞記
今日は朝から打って變った晴天、前々より一度は訪れたいと思ってゐた、かなり町外れの公園まで“遠征”してみる。園内はアジサイが見頃にて、あちこちでアジサイ見物なのか、ただ冩真を撮る行為がしたいだけなのかわからない人々で賑はってゐた。外にゐても内にゐても薄寒かったのは昨日だけの傳説、今日から再び炎夏の前兆な日射しにて、とりあへずどんな公園(ところ)か行ってみて、その確認だけすればあとは用はないな……、く . . . 本文を読む
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湿雨失笑。

2024-06-18 20:23:00 | 浮世見聞記
朝、起床して窓を開けるまでもなく、ザーザーと聞こえる雨の音。窓を開ければヒンヤリとした空氣に、涼しさより冷たさを覺えたのも、雨水がその感触を手傳ってゐるからだ。今日の外出はゴムサンダルにしとこ。私のゐた場所では強雨になる時間はあったが、幸ひ豪雨にはならず。なんであれ遠出には不向きな一日。東京地方の梅雨入りは二十日過ぎの予想云々。夕方に小雨となった紫曇りの空を見上げて、雨はもう今日だけでいいのヨ、と . . . 本文を読む
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路史交歡。

2024-06-17 20:00:00 | 古道探訪
東京都品川區大井一丁目、JR線「大井町驛」西口の外れを通る、幅の狭い、長い踏切。「品川道踏切」と名付けられてゐるそれは、旧池上通りの一部であり、名殘りである。(─旧池上通り ─品川道踏切)戰後の再開發事業で、JR線を陸橋で跨ぐ現在の池上通りが昭和四十七年(1972年)に新設されたのちも、古以来の道筋はそのまま踏切とその前後に殘り、そのまま平面で通行で . . . 本文を読む
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嫩ノ清若。

2024-06-16 22:53:00 | 浮世見聞記
ちょくちょく利用する町内の停留所でバスを待ってゐる時、ずっと向かふに見える神社の森に、枝ぶりが双子のやうによく似た木立がそびへてゐることに、初めて氣が付く。高薹で景色がよく見渡せる場所で、快晴の日は立ってゐても氣持ちの良いものだが、あの双子には今まで氣が付かなんだ。いつもの場所で初めて何か知ることがあると、それだけで世界の視野が擴がった氣になれるのは、幸せ . . . 本文を読む
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