迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

仍て常の如し。

2021-12-31 20:27:00 | 浮世見聞記
令和三年、2021年、そして“人災疫病禍二年”の大晦日。地元の驛では帰省なのか旅行なのか、荷物をゴロゴロ曳ひた人たちの姿を見かける。どこへ行かうが、あとはその人たちの心掛け次第。行末など知ったことではない。ただ、かうした行動が疫病感染者の擴大に一役買ってゐることだけは、間違ひない。浮世はただただ冷笑に尽きた一年なれど、私自身は國難下と云ふ制限枠のなかで、行きたいとこ . . . 本文を読む
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繁殖要員。

2021-12-30 20:13:00 | 浮世見聞記
御手洗ひで用を足して、御手を洗はずに出て行くヒトがゐる。さういふヒトは大抵が、鏡の前で一度立ち止まり、用を足したその指で髪の毛をちょっと摘まんでから、出て行く。その容姿で今さら色気付いたって、もふ手遅れさ……。私はちゃんと手を洗ふ。さっきのヒトが触った物を、私もどこかで触れたかもしれないのだ。ヒトが病菌を媒介するのではなく、ヒトが病菌そのものとは、ここである。だから、私はちゃんと手を洗ふ。 . . . 本文を読む
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思行輪廻。

2021-12-29 18:01:00 | 浮世見聞記
昭和五十八年(1983年)の發行で、時世を見て令和二年(2020年)に二十二刷目が出た「ペスト大流行」(岩波新書刊)を讀了す。十四世紀に欧州を蹂躙した「黒死病」──脚の付け根に暗紫色の小さな腫れ物が出来て全身に高熱を發する──は、いくつもの村を全滅させ、しかしヒトは發生源も解らなければ治療藥も無く、さうした為す術無しの果てに異人種への迫害、そして宗教の歪んだ解釈がまかり通るやうになる──災害──こ . . . 本文を読む
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厳寒中繼。

2021-12-28 16:08:00 | 浮世見聞記
空き地の水溜まりに、氷が張ってゐた。これだけ朝から空気が冷たければ、さもありなん。これぞ、私が子どもの頃から見慣れた冬。ただし、あの上に立ってみやうとは思はぬ。年齢(とし)甲斐もないから、ではない。時間の無駄遣ひ、だからだ。 . . . 本文を読む
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今年も納め始め。

2021-12-27 10:58:00 | 浮世見聞記
今日が令和三年の、“燃えるゴミ”の出し納め。年末年始のゴミ収集日の案内が貼り出されると、私は年の瀬を實感する。今年は金曜日まで。土曜日には、まう令和四年。しかし今年の年末は、例年のやうな忙(せは)しさを感じない。今年の私は、だうやらヒマだったのかもしれない。……いや、“余裕のある”一年だったのだ。いはゆる“自分都合”だけで生きてゐるからの。昨日と違って今日は冷たい風のないぶん、陽射しが心地よい。さ . . . 本文を読む
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最高の才幸。

2021-12-26 11:00:00 | 浮世見聞記
ラジオの再放送で、寶生流の「巻絹」 を聴く。梅の花を讃へる一首を詠んだその才がのちに我が身を救ふ德となる、ありがたい曲。先週、能樂の囃子と再會したことで、一度は離れやうとした日本の傅統藝能に戻る決心を固めた話しを記したが、そのときに舞臺で演じられてゐたのが、佐渡寶生の「巻絹」だった。それによって、傅統藝能の技術と知識を多少でも身に付けてゐることに氣付き、何も無い惨めな人生の泥沼に嵌まらうとしてゐた . . . 本文を読む
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歴史を識り感謝を知る。

2021-12-25 18:27:00 | 浮世見聞記
横浜市歴史博物館で、「令和3年度 横浜市指定•登録文化財展」を觀る。シャモジに願ひをこめて奉納する「オジャモジサマ」に庶民の土俗的生活の匂ひを聞き、紺紙に金字でしたためられた法華経に”漢字美”と云ふものがあることを識る。そして、同じ展示室内で同時開催の企画展「浄土の庭─称名寺境内国史跡指定100年─」では、昭和四十年代に景觀が破壊される危機にさらされた金澤北條氏の菩提寺•稱名寺の歴史を歩く。訪ねる . . . 本文を読む
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改宗?

2021-12-24 12:33:00 | 浮世見聞記
都内忘所の一角で見かけた佛教系石像。パッと見は面白いが、よく見るとなんか違ふ氣がする。 . . . 本文を読む
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良藥口に甘し。

2021-12-23 19:23:00 | 浮世見聞記
蜜柑をいただく。風邪予防に効果があるビタミンCの寶庫。人災疫病の予防も期待できる。“鬼に金棒”。すべては日頃の地道な自衞にあり。有り難いものをいただいた。嬉しい嬉しい。 . . . 本文を読む
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痕跡なきシブヤ。

2021-12-22 18:03:00 | 浮世見聞記
久しぶりに渋谷区郷土博物館•文学館へ出かけ、「寺院が語る 渋谷の歴史」展を觀る。昔の資料に乏しい澁谷の歴史を、當地に續く寺院に遺る文物から偲ぶと云った特別展だが、展示解説が冒頭で既に認めてゐる如く、第二次大戰の大空襲と戰後から今日まで延々と續く再開發事業により昔日の痕跡が徹底的に破壊されてゐる澁谷で、歴史のにほひを聴くなどしょせん無理な噺だ。 ちなみに柴田錬三郎の「眠狂四郎」では、狂四郎の母の墓が . . . 本文を読む
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識ることを知る藥。

2021-12-21 18:58:00 | 浮世見聞記
路地の砂利に、薺(なずな)を見る。正月の七草粥に入れる、“春の七草”のひとつ。長唄「娘七草」の歌詞に、“すずな すずしろ せり なずな……”とあることでその名を覺えた藥草。狂言装束の肩衣に付ける紋が“雪薺(ゆきなずな)”であることから、その姿形を覺えた藥草。樂しみを通して草の名を學び、それを「藥」と識る。がくしうは、“樂習”であってこそ身に付くものなり。 . . . 本文を読む
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はじまりの誕生。

2021-12-20 08:06:00 | 浮世見聞記
今日は亡き師匠の誕生日にあたる。舞台公演の初日に体調不良となり、本人は不本意であったが二日目から休演し、そのまま闘病生活に入った。それから九ヶ月後の誕生月、二十一世紀を目前にして師匠は急逝した。師匠の場合と似た病ひに侵されつつも、本人の不屈の精神力と、なによりも抜群の醫療体制が全面的に後押ししたおかげで現場復帰を果たした役者のドキュメンタリーを、投稿動画でチラリと見る。師匠には、この“抜群な醫療体 . . . 本文を読む
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やまの巡り逢ひ。

2021-12-19 10:30:00 | 浮世見聞記
ラジオで、金剛流の「山姥」が放送される。 ラジオ放送ではスタジオ収録の素謠が基本だが、番組表を見ると今回は囃子方の名前もあり、番囃子とはずいぶん氣合が入ってゐるなぁ、と思ってゐたら何のことはない、過去に放送した舞台中繼映像の転用で、なんだタダの手抜きか、と納得。金剛流と云っても、本来の宗家は昭和十年にニ十三世金剛右京の死去をもって絶家しており、翌年にもとは京都の謠師匠で江戸時代に幕府から金剛姓を許 . . . 本文を読む
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神田沙也加さん死去…所属事務所が報告午後9時40分急逝「受け止めることができない状況」

2021-12-19 06:37:00 | 浮世見聞記
dmenuニュースよりhttp://topics.smt.docomo.ne.jp/article/sponichi/entertainment/sponichi-spngoo-20211218-0252?fm=d石原裕次郎一門の人氣俳優を父に、80年代に一世を風靡した人氣歌手を母に持つ“親の七光り”、しかし他力をもってしても自力をもってしても上手くいかない典型的な「二世」──と云ふ印象があるだけ . . . 本文を読む
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寒寒昂昂。

2021-12-18 17:41:00 | 浮世見聞記
寒冷下だらうが何のそのでゲートボールに興じる元気なお年寄りたちを見かけて、ちょっと心が暖かくなる。私も學生時代に授業でゲートボールを“専攻”してゐたことがあり、なかなか樂しい競技であることを知ってゐるので、よけいさう感じるのかもしれない。若くゐる秘訣はやはり、“動く”のをやめないことなのだ。 . . . 本文を読む
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