朝晩はいくらか暑さも和らぎ──要は湿度が下がり──、昼間も今日については都内でもやや過ごしやすかったやうに感じる。さう感じたも夕方まで。バカらしい用事の連續にすっかり空は暗くなり、バカらしい氣分で夜空を見ると、向かふにはやけに大きな満月。たしか今宵は“ブルームーン”だとか聞いた。ああ、あれが。間もなく大きな満月は靄に遮られて澄んだ輝きを失なひ、私はさきほど貴重な御褒美を頂いたらしいと悟る。 . . . 本文を読む
トウキョウ都内ばかり行ってゐるので、今日は橫濱(ハマ)へ行く。トウキョウ都心に比べて、いくらか氣温は和らいでゐるが、湿度で汗ばみ、氣分が上がらないことに変はりはない。なるべく早く用事を済ませて棲家へ帰らうと思ってゐると、象の鼻パークの一隅に、かつて橫濱の港湾と經済を支へてゐた勞働者たちの供養塔があることに氣付く。 建立主は“ハマのドン”こと、藤木幸夫氏。港湾勞働者たちが博打で身を持ち崩す過酷な境遇 . . . 本文を読む
この頃は街なかの自販機脇に置かれた“リサイクルボックス”の中身が、溢れ返ってゐのをよく見かける。人手不足で回収が追ひつかないのかなんなのか、ここにもニッポンの國力低下の一片を見る氣がする。人件費がどうの、原材料費高騰がどうのを言ひ訳にした挙げ句がコレでは、ますますタダの便乗値上げだと云ひたくなる。 . . . 本文を読む
たまたま都内忘所の公園のそばにゐたら、園内をミニSLが汽笛も勇ましく快進してゐるのを見かけて、「お、おお……!」と、大昔に忘れたあの日の心をくすぐられて、駆け出す。大昔、二子玉川園と云ふ遊園地があっての、そこにもミニ鐵道があって、ワシも両親に連れられてよく乗せてもらったものじゃ。線路は圓周じゃが、その先には間違ひなく、“夢”があったものじゃよ。お、また汽車が来たぞよ。暑さのせいかの、 . . . 本文を読む
近年のただ高温多湿なばかりの夏は嫌ひだが、夏の雲を見ることは好きだ。あの巌のやうな雲塊は、空の廣大さをよく引き立ててゐて、それでゐて手に届くところにゐるやうな親しさをも見せる。しかし、逢へるのはその時だけで、次にはもふどこかへ旅立ったあと。私もこの暑さが終熄したら旅にでも……、と考へゐたら、今ここにかうして立ってゐることで充分に旅だよ、と誰かがもっともらしいことを囁きはじめた。 . . . 本文を読む
久しぶりに、國立能樂堂の主催公演を觀に行く。會場の電灯をすべて消して、蝋燭の灯りだけで演能會を催す企画で、番組は狂言が大藏流「八尾」、能が寶生流「楊貴妃」、いずれもそれらしく冥界が舞薹の曲。舞薹上では幽冥でも、見所(客席)はしょせん令和の俗界、いかにもお能見物客らしい澄ましこんだ面々から絶え間なく谺する咳、咳、咳、飲食禁止の場所からなぜか奏でらるる飴の包みを剥く調べ──本當に静まり返ったのは、曲が . . . 本文を読む
能樂師大皷方の故人亀井忠雄氏の藝を偲んだラジオ放送を聴く。私も故人が舞薹で大皷を打奏してゐる姿は見たことはあるが、一囃子方がそこでシゴトしてゐる、くらゐの印象しかない。むしろ、氏の同業者に對するエラそうな言動の多いことを仄聞し、さういふヒトなんだなと云ふことで、強い印象がある。因みに、かつて二代目市川猿翁の孫を「駄馬」と公言した思ひ上がりも甚だしい歌舞伎囃子方(チリカラ屋)の親玉は、故人の次男にあ . . . 本文を読む
東京都大田區羽田の穴守稲荷を参拝する。前から一度お参りしたいなァと思ってゐたら、この湿暑のさなかにお招きにあずかる。意外や意外、なれどいと有り難し。ここから海老取川を越えた先は羽田空港。遠い旅路への入口。憧れの玄関口。いつかは面と扇を携へて── . . . 本文を読む
暦では暑さも峠を越える「処暑」なれど、太陽は必ず人類に何か恨みがあるとしか思へない汗暑が今日も續き、「み、水……」と呻きながら都内忘所を彷徨ふうち、巨壁に何か方形の物が大量にびっしりと列を成して張り付いてゐる光景がふと視界に入り、「な、なんじゃあ……?」と、驚き足をとめる。正体は、公營集合住宅の裏側に取り付けられた、戸數分の空調室外機(ガイキ)。現代人にとって冷暖房は必 . . . 本文を読む
朝から青空に白雲と鈍雲が重なり、それを不快な湿度が包んだところへ、ダメ押しに通り雨が町をずぶ濡れにして行く、これでもかと云はんばかりの惡天な一日。先週末には“フェス”に参加したと云ふ忘アーティストが、直射日光の烈しさに半ば熱中症になった云々、「これからは開催時期も考へないといけないと思った。」さう言はしめてゐるところにも、すでに異常酷暑が喫緊の課題となってゐることを、ひしひしと感じる。夕方に都内忘 . . . 本文を読む
夏の間に伸び放題となってゐた堤道の草群が、きれいサッパリ刈り取られてゐた。この景色に會ふと、夏も終はりを思ふ。が、連日の炎暑で再びすぐに伸びてきそうだが、まずは秋への支度が始まったと思ひたい。 . . . 本文を読む
埼玉縣のふじみ野市立産業文化センターで開催された「ふじみ野産文フェスティバル2023」の舞薹に参加し、現代手猿樂「すゑひろかり」を舞ふ。地域色溢れるすべてが良い雰囲氣で、私も落ち着いた氣持ちで樂しく舞薹に立つ。歌あり、ダンスあり、いろいろあり──さうしたなかで見當たらないのがニッポンの傳統藝能であり、だからこそ私は自分からそのなかへ入っていくのだ、決して終熄してゐない人災疫病禍の動 . . . 本文を読む
東京圏の忘驛前でちょっと時間潰しをしてゐると、すぐ近くで反戰署名運動をしてゐる團体に、いかにも「我こそが正義!」と思ひ込んでゐるフシがある典型的な“老害”ジイさん(↓冩真真ん中の黄緑シャツ)が通りかかり、「ロシアとウクライナのセンソーはどうするんだッ💢」と絡み出し、挙げ句に男性へ“暴力行為”を働きはじめた。『「ロシアとウクライナのセンソーはどうするんだッ㈐ . . . 本文を読む
ラジオをつけると、V系ロックバンドのアリス九號.が、番組にゲスト出演してゐた。既に活動“休止”を發表してゐるアリス九號.の、九月三日に東京ドームシティーで行なふラストライヴの宣傅も兼ねて出演したやうだった。十五年前の夏、私に新たな人生へ飛び込む勇氣を間違いなく與へてくれたV系ロックバンドであり、その後數年はライヴにも足繁く通ってゐたが、やがて音樂性に共感出来なくなって、 . . . 本文を読む
大藏流狂言方の、懐かしい二世茂山千之丞師と四世茂山忠三郎師が出演してゐる「薩摩守」を、ラジオ放送で聴く。渡し舟を無賃乗船して秀句(掛けことば)で切り抜けやうとした僧が、茶屋亭主から教はった「薩摩守」の心「忠度」(ただのり)を思ひ出せず失敗する話しで、私も橫濱能樂堂で同じ茂山家の、次世代の面々で觀たことがある。今回放送のシテの僧は千之丞師の兄である故人四世茂山千作氏で、その時々の客質(ヒト)を見て小 . . . 本文を読む