国立能楽堂で、“雪景色”をテーマにした公演を観る。
金剛流にのみ伝わる「雪」が目当てだったが、女流の筝曲演奏で西川流と花柳流の男性舞踊家が踊った「鉢の木」に、一流の技芸とはなにかを見る。
能楽の舞にはない、扇を持つ手のしなやかな動きが、
たまらなく
懐かしかった。 . . . 本文を読む
水道橋の宝生能楽堂で、宝生流の「熊坂」を観る。
この曲のシテである熊坂長範は、平安末期に美濃国赤坂あたりに蟠居した大盗人。
その名前を初めて知ったのは学生時代、たしか「歌舞伎十八番の内 助六由縁江戸桜」で、花川戸助六とくわんぺら門兵衛との、
くわんぺら 「おきゃあがれ。おらぁ、くまたかだ」
助六 「くまたかちょうはーん。あ、おめぇ手が長ぇな」
といった、言葉あそびのようなセリフのやり . . . 本文を読む
横浜開港資料館で、「スイス使節団が見た幕末の日本」展を見る。
時は幕末、修好通商条約を結ぶために来日したスイスの使節団は、攘夷の世相に身の危険を感じつつ、条約に乗り気でない幕府との交渉に尽力した。
その一方で彼らは、折りをみて江戸や近郊を見物してまわった。
首席全権のアンベールが著した「幕末日本図絵」は、当時のニッポン人の風俗がかなり克明に描かれており、古写真を超えるリアルさで、現代人 . . . 本文を読む
雨が降ると店舗などの入り口に備えられる、ビニールの傘袋。
母親に連れられた女の子が、傘をたたんでそれへと手をのばしたとき、母親は、
「こっちのを使いなさい」
と、ゴミ箱に捨てられた使用済みのほうを指した。
なんで、と不思議そうに訊く女の子に、
「袋のなかは雨水だけなのだから、まだまだ使えるでしょ。もったいないわ」
なるほど、と思った。
底が破れてさえいなければ、充分に再利用できる . . . 本文を読む
渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで、2009年開催につづく第二弾、「だまし絵Ⅱ 進化するだまし絵」展を見る。
人の視覚をあざむくには、他人(ひと)とは違う発想で“もの”を見られる才能が必要なのだ、ということを知る。
展示された様々なだまし絵に、まんまと一杯くわされた人々は、だれもが思わず、笑みを浮かべている。
その表情に、わたしは人間が生来持っている『善性』を見た気がした。 . . . 本文を読む