迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

人間交流170年。

2024-08-31 20:50:00 | 浮世見聞記
2024年はペリーが橫濱に上陸して170年云々、その企画展を橫濱市内二ヶ所の博物館で觀る。橫濱市立歴史博物館の「サムライ Meets ペリー With 黒船」展は、黒船来航とペリー上陸時、實際に海岸で警戒に當ってゐた武士たちの日記から當時の様子を明らかにしていく企画展で、幕僚の對應についてはいくらでも資料が公開されてゐるが、誰よりも現場の最前線に立ってゐた人々の遺した記録については、確かに知られて . . . 本文を読む
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三島語講釈。

2024-08-30 20:38:00 | 浮世見聞記
どうせ今日も遅滞薹風によるしつこい雨で棲家に足留めになるのだからと、久しぶりに押入れから平成三年(1991年)に新潮社から發賣された三島由紀夫「近代能楽集」の録音テープを引っ張り出して聴く。日本の名作を完全朗讀した“新潮カセットブック”シリーズのひとつで、昭和五十一年(1976年)七月三日から十三日に國立劇場で上演された、“三島由紀夫追悼公演”のライヴ録音。私が「近代能楽集」を新潮文 . . . 本文を読む
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雨垂息垂。

2024-08-29 20:38:00 | 浮世見聞記
午前中に散歩して帰宅すると、正午あたりから激しく雨が降り出す。午前中に南九州へ上陸した薹風十號の影響にや、トウキョウ圏内ではこの大雨で冠水や浸水の被害あり、遅々とし過ぎる薹風のために、かうした状況が来月の初めまで續くのかと思ふと、やはり今年も迷惑な夏だったと締めくくることになるか。 . . . 本文を読む
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慰問慕郷の現實。

2024-08-28 19:47:00 | 浮世見聞記
東京都千代田區九段の昭和館の特別企画展「慰問 銃後からのおくりもの」を觀る。遥か遠い地の戰闘最前線に立つ兵士たちへ、“銃後”の國民たちが手紙を添えて送った品々──“慰問品”は明治三十七年(1904年)の日露戰争より始まり、それが日用品や嗜好品を励ましの手紙と共に手にした兵士たちにどれだけ癒しをもたらしたかは、届いた慰問袋を手にした彼らが見せる満面の笑顔を撮った冩真が、よく物語ってゐる。慣れぬ異郷の . . . 本文を読む
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遅雲遅案。

2024-08-27 19:57:00 | 浮世見聞記
深夜に激しい雨音で二度も目を覺まされ、今朝からはイヤな雲とイヤな雨が斷續的に棲家の上空を通過し、これも接近が遅延してゐる薹風十號とやらのせいかと嘆息す。おかげで雨天になると映らなくなる朝鮮産“ドロドロ物”TVドラマもロクに觀られず、ガッカリしてゐる頃に西國では大雨により交通機關などが大幅に混乱云々、夕方の止み間を狙って急ぎ散歩をしたあとは、八月の殘り數日をいかにして過ごすか、思案投首にて夜を過ごす . . . 本文を読む
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一調一生。

2024-08-26 20:00:00 | 浮世見聞記
ラジオ放送で、能樂の樂器と、謠ひとの“一騎打ち”を聴く。鼓、または太鼓(締太鼓)と謠のみで一曲のサワリを奏する形態を「一調」と云ひ、シテ方の謠と囃子方の樂器とが、日頃鍛練の技量をその一曲のなかでぶつけ合ふもので、“合奏”と云った仲良しこよしでないところが、ほかの音樂とは違ふ點か。聴衆は舞薹上における能樂師の、さうした真剣の妙を味はふ──のが、一調の樂しみのやうだが、見物人のはうにも謠ひや鼓の真剣な . . . 本文を読む
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雲霞妖風。

2024-08-25 22:07:00 | 浮世見聞記
神奈川縣相模原市のグリーンホールで、「第三十六回 相模原薪能」を觀る。屋内で模擬篝火を設へての上演形態もすっかり定着した行政主催の演能會、今年は寶生流宗家が「船辨慶」を、“後之出留之傳”なる小書(特殊演出)を付けてつとめる。前シテで、義經と向かひ合って涙する件りはわかったが、座席位置の都合で後シテが最後に揚幕あたりでやった型は、全く見えず。さりながら問題なし。二期目の相模原市長が、初 . . . 本文を読む
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令和最恐怪談。

2024-08-24 15:53:00 | 浮世見聞記
夏の始めあたりからアレよアレよと値上がりの始まった精米が、いまやスーパーから姿を消して、久しくなりつつある。原因については、「飼料用米に力を入れ過ぎたから」や「地震で物流がストップしてゐるから」など、いろんな人がいろんな事を宣って、はっきりしない。おそらく、誰にもわからないのだらう。さりながら、お辯當のご飯や販賣おにぎり、炊き上がり済みのレトルトご飯は、いつも通りに賣られてゐる。ただ精米だけが、無 . . . 本文を読む
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永代に續く所縁の初鰹。

2024-08-23 19:17:00 | 浮世見聞記
踊りの「紅翫(べにかん)」を觀たくて、歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」の第二部に行く。「艶紅曙接拙(いろもみじつぎきのふつつか)」と云ふこの常磐津の舞踊劇、主役の紅翫とは實在の人物で、駒形の小間物屋「紅勘」の若旦那云々、さりながら大道藝人となって竹の棹に酒升の胴で自作した三味線を杓子の撥で曲撥(曲藝的な演奏)をして自由に踊った姿が評判となり、歌舞伎役者の“大芝翫”こと四代目中村芝翫がぜひ演じたいと、本人 . . . 本文を読む
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令和妖怪講釈。

2024-08-22 18:05:00 | 浮世見聞記
毎朝FMラジオの番組で耳馴染んでゐるアロハ太朗(あらい太朗)氏の“本業”を、埼玉縣さいたま市北区日進町の「創造空間 日進月歩」で開催中の『あらい太朗が描く 「今ドキの妖怪」展』で樂しむ。妖怪研究の女性アナウンサー吉江まりも氏と、アロハ太朗氏が本業の漫画で共作した現代妖怪百科(?)「まりも妖怪研究所」の發賣に因んで、その原画を一挙公開した個展。現代人の心の隙 . . . 本文を読む
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相手役を主演する妙。

2024-08-21 16:21:00 | 浮世見聞記
ワキ方である下掛寶生流の謠ひを、ラジオ放送から樂しむ。謠曲と云ふと素人にはシテ方のものと云ふ印象があるが、ワキ方にも確と謠ひがあり、下掛寶生流には独自の謠本も刊行されてゐる。が、シテ方のほどには素謠を耳に出来る機會がないだけに、今回の放送は好企画。能樂の場合、主演のシテに對するワキは、現代で云ふところの脇役ではなく、“相手役”と云った位置付けであり、曲によってはワキ方が物語を主導する作品もある。私 . . . 本文を読む
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情報感染症。

2024-08-20 15:48:00 | 浮世見聞記
橫濱の日本新聞博物館ニュースパークの企画展「新型コロナと情報とわたしたちⅡ──コロナがわたしたちに残したもの」を觀る。“第11波”となって現在(いま)なほ績く人災疫病の、そのはじまりであった令和二年(2020年)──“人災疫病禍元年”の有様を、新聞と云ふ情報媒体を通して私なりに見つめ直す。(※人災疫病の初期報 令和二年一月一日付讀賣新聞 案内チラシより、以下同) . . . 本文を読む
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猛炎徹生。

2024-08-19 22:00:00 | 現代手猿樂
夕方から、現代手猿樂の活動。暑さと急な雨の心配さへなければ、なんだかんだ言って今年の夏も自分らしく生きられたな、と思へるのだが、この異常な天候は結局のところニンゲンの仕業なれば、文句を云ったところで始まらぬ、か……。 . . . 本文を読む
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風彩奮舞!

2024-08-18 19:28:00 | 現代手猿樂
今夏も埼玉県のふじみ野市立産業文化センターで開催の「ふじみ野産文フェスティバル2024」に参加し、現代手猿樂を舞ふ。昨夏の初参加では男踊りの「すゑひろかり」を演じたので、二回目の今回は女形の踊りにしやうと、「おわら娘」と「春雨おもん」の二番を選ぶ。「春雨おもん」は既に何度か演じてゐるもの、「おわら娘」はかつて信州で製糸業が盛んだった時代、越中から糸繰りの工女としてやって来た女性たちが故郷を偲んで“ . . . 本文を読む
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薹風災過。

2024-08-17 22:11:00 | 浮世見聞記
いかにも薹風一過な夏雲と、容赦ない熱暑のもと、いちばん苛酷な正午に外出の用事あり。發汗も疲れも、明らかにいつもと違ふ。ニンゲンの耐久氣温を超えてゐるのではないか。無理は禁物。すべてが、もはや昔になってゐる。 . . . 本文を読む
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