迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

靈泉表白幻眩。

2025-03-23 18:47:00 | 浮世見聞記
觀世能樂堂で、喜多流自主公演を觀る。初めが「養老」、老いも若きも飲むと元氣になると云ふ湧き出づる“藥の水”、どうやら酒のことらしいが、私にはヘンな“クスリ”が混ざった水のやうに思へて、とたんにそれを語ってゐる舞臺の立体静止画像が可笑しくなり、それから私もスッカリ元氣になる。「源氏供養」では美聲のワキ方が作った石山寺の静謐な風情を、地謠方がクセの表白に向かって緩やかに盛り上げて最後にスッと締める、極 . . . 本文を読む
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健康文明の百年。

2025-03-22 15:38:00 | 浮世見聞記
日本でラジオが假放送で始まって今日で百年云々、TVを嫌って見ない私にとって、ラジオは浮世を識る大切な情報源──“窓”でもある。あるラジオ番組の投稿で、「百年前の人がRadioを“レイディオ”ではなく、“ラヂオ”と訳したことも、親しみが持てる理由だと思ふ」と聴いて、確かにさうかもしれないと感じる。レイディオではいかにも外来物的、ラヂオならばニッポンで消化された文明、な響きを聞くやうな。ラジオを聴くこ . . . 本文を読む
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“鍋島烏”の土産。

2025-03-21 19:18:00 | 浮世見聞記
澁谷區郷土博物館・文學館の特別展「鍋島候爵家と松濤」を觀る。旧佐賀藩主の鍋島家は明治五年に現在の澁谷區松濤一・二丁目にあたる旧紀州德川家下屋敷跡のほか近隣一帯の土地を購入し、同九年に家計と家臣たちの生活保障のために茶園をはじめる。(※鍋島直大 案内チラシより)その茶園を「松濤園」と云ひ、茶の湯の沸く音に由来云々。しかし明治二十二年に東海道本線が全通して宇治の茶葉が東京へ大量にもたらされると需要が減 . . . 本文を読む
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地下鉄サリン事件から30年都心襲った無差別テロ、6駅に献花台

2025-03-20 12:47:00 | 浮世見聞記
dmenuニュースよりhttp://topics.smt.docomo.ne.jp/article/mainichi/nation/mainichi-20250319k0000m040356000c?fm=d三十年前のこの日、當時學生だった私は歌舞伎座三月興行の夜の部を觀るため、昼頃に新宿驛から地下鉄丸ノ内線を利用しやうとして、この時はまだ朧ろな情報で、事件を知った。この凄惨なテロ事件について、築 . . . 本文を読む
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積々恐々。

2025-03-19 23:52:00 | 浮世見聞記
東京都心では午前中に1㎝の積雪云々、鐵道があちこちで故障云々、北關東ではひょうがどっさり降り積もる云々、私がお彼岸のお墓参りのために乗った電車が郊外へ向ふにつれて窓の外が薄く積雪してゐるのを見て、冬の最後のあがきを思ふ。しかし今や、来る春は酷暑の前触れでしかない。晴天に戻った夕方の散歩道で、早咲きの櫻を見上げて樂しみと恐々の半々を味はふ。そんな春に参加予定の催しの實行委員會から、当日の段取りを説明 . . . 本文を読む
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紙海苔風味。

2025-03-18 23:53:00 | 浮世見聞記
品川區立品川歴史館で、「品川の海と海苔」展を觀る。(※フラッシュ無しで撮影可)私はべつに海苔が好きなわけではないが、これまでに大田區大森でかつて海苔養殖がさかんであった歴史を知り、その大森を参考にして千葉縣浦安でも海苔養殖が隆盛を極めた時代のあったことを知ったので、そこで再び江戸へ戻って、品川でも海苔が生産されてゐた歴史を見ておかうと思った次第。大森で生産された海苔が淺草界隈で賣られて“淺草海苔” . . . 本文を読む
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嬉遊老覧。

2025-03-17 15:36:00 | 浮世見聞記
昼に町内のスーパーマーケットへ買ひ物に行くと、サービスカウンターの前で爺サンが店員に食ってかかってゐる光景を見る。爺サンはその店員が詫びなかったことに御立腹の御様子だが、店員の「参ったなァ……」な様子から、それほどでもないことが、この爺サンの中だけの“正義”では、許しがたい事件だった御様子。かういふのを何ハラと云ふのか、世事に疎いワシにはわからぬが、自分の考へこそ世の中でイチバン正しいと思ひ込み信 . . . 本文を読む
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雨威超樂。

2025-03-16 19:39:00 | 浮世見聞記
昼下がりに何となく聴いてゐたラジオ番組に、今年で活動四十年と云ふロックシンガーがゲスト出演してゐた。その方面は門外漢な私には初めて聞く名前だったが、曲も、トークも、人生經験を重ねた人ならではの厚味と深味があり、自然と耳が惹きつけられる。タダの勢ひと表面(うはべ)だけのカッコ付けですぐにそれが剥がれて消えるのが多い世界で、四十年。浮世はなにかと、續けた者勝ち。ところが、その續けるといふことが、なかな . . . 本文を読む
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歌舞百爛。

2025-03-15 20:48:00 | 浮世見聞記
川崎能樂堂の川崎市定期能公演で、觀世流「百萬」を觀る。觀阿彌の古作を世阿彌を改作したものが現行曲云々、古い時代の猿樂の雰囲氣を思はせる狂乱遊舞の傑作にて、シテの熟練技を端座姿が美しい八人の地謠方と、その佇まひに隙のない囃子方が盛り上げ引き立て、それでゐて自身の技藝をしっかり示した融合の極致、かうした贅沢な時間はあっと云ふ間に過ぎてしまふ。名殘り惜しき亂舞かな。 . . . 本文を読む
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行先不明の片道切符。

2025-03-14 14:40:00 | 浮世見聞記
今月六日、走行中に分離と云ふ大事故をやらかしたシンカンセン「はやぶさ・こまち」號、本日より併結運転を順次再開云々、調査の結果、「こまち」側の連結器に不具合があったとわかっただけで、その原因は「不明」云々、さりながら試験走行では「問題ナシ」云々、本日の順次再開に至る云々。試験走行で問題ナシだけでは事故の根本的解決にはなっておらず、そもそも技術部門が事故原因を究明出来なかったこと自体、大きな「問題」な . . . 本文を読む
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泰平の眠り貪る梅が香や。

2025-03-13 23:50:00 | 浮世見聞記
ラジオ放送で、七世大江又三郎追悼の觀世流「梅」を聴く。江戸時代中期、猿樂の総帥らしい權威とシゴトをなにか示したい欲求に駆られた十五世觀世座太夫の觀世元章(くわんぜ もとあきら)が、これまでの謠の詞章や節付けを國學由来の故事に則り大幅に改めた「明和改正謠本」を斷行した一方で創った曲であり、猿樂得意の和歌を扱ひながらここでも國學のウンチクを絡めてゐるところに特色がある、やうだ。國學と云ふ、いかにも泰平 . . . 本文を読む
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雨曇晴心。

2025-03-12 20:30:00 | 浮世見聞記
わが町は昼過ぎから雨模様との予報が前倒しされて午前中から小雨、外を見上げていっぺんに不快になる。雨が大嫌ひな私にとって、そのためにせっかくの暇な一日が足止めになるのは、もっと嫌ひで癪に触る。よって、構はず散歩道途中にあるスーパーまで買ひ物に出かける。場所が、ふだんの買ひ物にはちょっと距離があるので、なにかの目的ついででなければ、なかなか足が向かぬ。しかし、この地域密着型店舗は私が知る限り、近隣のス . . . 本文を読む
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その期日。

2025-03-11 15:36:00 | 浮世見聞記
昼食後、ラジオを聴きながらボンヤリと椅子にもたれてゐるうち、ふと「大きな地震はかうした時にもいきなり襲ってくるのだな……」と思ふ。いつも通りと信じて疑はない日々を、文字通り足許から揺るがす大きな災害。ヒトはそれを自ら經験し、または目の當たりにして、はじめて物事を學ぶ、はず。私にとってそれが東日本大震災であり、阪神淡路大地震である。あれから十四年、安息に期日はない。予告もない。 . . . 本文を読む
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演じ續ける宿命。

2025-03-10 20:53:00 | 浮世見聞記
橫須賀美術館で、「サルバドール・ダリ展─天才の秘密─」を觀る。1904年にスペインの裕福な公証人の家庭内に生まれるも、自分の出生前に亡くなった兄の名を付けられたこと、母を幼くして亡くした後、父親が亡妻の妹と再婚したことなど、幼年期の複雑な家庭環境がこの後年の藝術家の心に深い傷と闇になって支配するが、その捌(は)け口を藝術に見出せた彼は幸ひだと思ふ。そして、浮世に圧倒的多數の衆庶とは違 . . . 本文を読む
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わしと和紙。

2025-03-09 20:34:00 | 浮世見聞記
川崎市市民ミュージアムのオンライン展覧會「紙すくひと」を棲家で觀る。「紙」とは、植物などの繊維を水に浸して絡み合わせものを云ひ、日本古来のそれは酸性度が低いため強度と保存性に富んでゐるのは、繊維中に潜んで酸素と結合して劣化を招く不純物(ゴミ)を職人がひとつひとつ丁寧に取り除く熟練技のおかげにて、奉書に刷られた浮世絵の、美人の顔が美人のまま現在に至ってゐる秘訣も、まさにこの賜物なり。私も趣味柄、百年 . . . 本文を読む
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