かつて多摩川には、舟渡しが数ヶ所存在してゐた。
しかし、明治時代以降には次第に橋が掛けられるやうになり、役目を終えた渡し舟は、その全てが姿を消した。
東京都狛江市と神奈川県川崎市多摩区にかかる「多摩川水道橋」の河川敷には、両岸に古い貸しボート小屋がある。
これはかつて、ここに「登戸の渡し」があった時代の名残りだと云ふ。
そんな多摩川の渡し場のひとつであった「丸子の渡し」が、温故知新の . . . 本文を読む
神奈川県三浦市南下浦町菊名に伝わる、県無形文化財の「飴屋踊り」を観る。
京浜急行久里浜線の三浦海岸駅を降りて、相模湾の潮騒を聴きながら砂浜に沿って歩くこと二十分、山側に折れた先に昔ながらの長閑な景色が広がる。
その丘の上に鎮座する白山神社の祭礼で奉納されるのが、件の「飴屋踊り」だ。
江戸末期、行商の飴売りが客寄せのために街頭で見せた歌舞芸が農漁村に流入し、いま見る形になったと考へられ . . . 本文を読む
川崎市幸区矢向3丁目の矢向日枝神社の例大祭にて、今年も土師流里神楽を観る。
今年の演目は、「黄泉醜女(よもつしこめ)」。
火の神を産んだことで命を落とし、黄泉国へと旅立ったイザナミを慕ひ自身も黄泉国へとやって来たイザナギだったが、
“黄泉醜女”と化したイザナミに襲われてしまふ。
逃げる途中で桃の実を投げつけると桃の精が現れ、
みごと黄泉醜女を退治する。
その功 . . . 本文を読む
横浜市歴史博物館にて、「杉原千畝と命のビザ シベリアを越えて」展を見る。
第二次大戦下、六千人のユダヤ人を救った一人の日本人外交官―
わたしが杉原千畝の名前を知ったのは数年前、たまたま見てゐたTV番組によってだ。
その頃はまだ、杉原千畝の名は、現代の日本にそれほど知られてゐなかったと思ふ。
1940年、リトアニアの日本領事館領事代理だった杉原千畝は、ナチス・ドイツの迫害を逃れて国外へ亡 . . . 本文を読む
横浜開港資料館の、「明治のクール・ジャパン 横浜芝山漆器の世界」展を見る。
貝殻や象牙などでこしらへた細工物を漆器に嵌め込んで、浮き上がってゐるやうに見せたその個性的な漆器は、現在の千葉県山武郡芝山町が発祥と伝へられる。
それが明治に入り、横浜で職人たちによって量産されるやうになるが、外国人相手の土産物としてつくられたこともあり、日本には現物がわずかにしか残っていないといふ。
そのわずか . . . 本文を読む
川崎市岡本太郎美術館にて、「鉄道美術館」展を見る。
アーティストたちが、それぞれに鉄道への想ひを、作品といふ形で表現する。
現代アートのイデオロギー臭の強さにはアレルギーを持つわたしだが、鉄道といふはっきりしたテーマを以て観れば、それぞれの“才能”の奥深さが素直に楽しめる。
数色のチューブを一見ごちゃごちゃに張り巡らした栗山貴嗣氏の「東京動脈」といふ作品は、東京の“網の目のやうな”地下 . . . 本文を読む
神奈川県三浦市三崎、三崎漁港の一角にある三浦市民センターにて、子どもたちによる面神楽「いなりっこ」の発表会を見る。
いなりっことは、“稲荷講”が訛ったものと云われ、今回の演目のなかにも、それに因んでゐると思われる「天狐の舞」と云ふ神楽があった。
中指と薬指を親指と合わせ、人差し指と小指をピンと立てた両手を交互に前へ突きだしながら、大股で膝行する独特の型が面白い。
最後に出た「恵 . . . 本文を読む
新橋古本まつりの最終日を覗いてみる。
今回は出店数がいつもより少ないなぁ、と感じながらのんびり巡ってゐたら、かなり前から何となく探してゐた島田一男の「鉄道公安官」を、@で見つける。
シリーズの続編はすでに読んでゐるが、ズバリ「鉄道公安官」とタイトルがつひたこの第一作を、私はどうしても読んでみたかった。
列車旅行中の車内で読んだら、雰囲気が出て面白いだらうか。
なんであれ、諦めずにのんび . . . 本文を読む