病院の待合室で、化粧をしながら順番待ちをする若い女性を見かけた。
一頃ほどは電車内でこの類いを見かけなくなったと思ったら、今度はこういった清浄な空気を第一とする場所に、“侵”出するようになったらしい。
それにしても、汚い光景だとつくづく思う。
そんな彼女の近くで盛んに作動している空気清浄機が、なんとも健気に見えた。
千秋楽は民を撫で
萬歳楽には命を延ぶ
相生の松風 . . . 本文を読む
三遊亭小圓朝さんの独演会「ハナヲメデ ハナシヲキコウ 梅ノ巻」を聴きに、お江戸上野広小路亭へ。
噺は「初天神」と「親子酒」の二題。
「初天神」のなかで、
“のべつ幕なし”
と云う言葉が出たのを聞いて、自分の認識は決して誤りではないことを、思いがけず贔屓の師匠の口演より確かめることが出来、溜飲の下がる思い。
今回の独演会は、終演後にみんなで小圓朝さんと湯島天神へ梅を愛でに行く、という . . . 本文を読む
旧正月「春節」の横浜中華街へ。
中国人は、
「逞しい」
「したたか」
と言われるが、異国の地に在って自分の国の伝統文化を“逞しく”守っている彼ら華僑の姿は立派だ。
関帝廟裏の山下町公園では、中華学院を卒業した若い中国人たちによる伝統芸が、イベントとして披露されていた。
自分たちの伝統文化を受け継いでいきたい、という思いで日々鍛練を重ねているそうで、
“来年度からダンスを中学校の . . . 本文を読む
あなたの好きな台詞を一つ、と言われたら、私は迷うことなく能「羽衣」の一節、
『いや疑ひは人間にあり。天に偽りなきものを』
を挙げる。
意味はそのまま。
翻訳の必要はない。
私はこの台詞を聞くたびに、ドキッとさせられる。
これほど人間の本質を短いセンテンスで的確に衝いた台詞が、ほかにあるだろうか。
実際、仮託的表現の多い能の世界のなかで、シテ(主役)がこれほどはっきりと物を言う . . . 本文を読む
映画の興行収益が低迷している、とニュースが伝えていた。
“驚異の映像革命”を謳い文句に、CGだの3Dだの、己れの技術力を誇示するばかりで、肝心の中身が観客のニーズから掛け離れたスカスカの代物では、観客に次第とそっぽを向かれるのは、当たり前だ。
集客のために、次々と企画を捻り出すのは結構である。
しかし、
『観客は我々にどのような楽しみを求めているのか』-
その基本を、あまりにも忘れ過ぎ . . . 本文を読む
この頃首都圏の駅構内で、“お客様同士のトラブル”を起こしている中高年の男性を、いやに見かける。
しかも、酒が入っていない状態で。
お互い、ごく些細な事で素面(しらふ)に朱を注ぎ、公衆の面前で己れの中だけの“正義”を、ムキになって振り回す。
その“正義”の中には、
「恥」
「外聞」
「思慮」
「分別」
といったものは全く欠落している。
信じ難いことだ。
しかしそれが、現実に頻出 . . . 本文を読む
現在の若い日本人はボキャブラリーに乏しい、と言われるようになって久しい。
いつであったか、会話のなかで何の気無しに、“のべつ幕なし”という表現を使ったら、ある下請けレベルの若い映像作家に、
「今時そんな言葉つかいませんよ」
と笑われて、その意外さにショックを受けたことがある。
また、ラジオのDJをつとめた若い女性タレントが、どこかで何かの美術展を見に行ってえらく感動したらしく、その事をリス . . . 本文を読む
昨日“プロ意識”について話したついでに、この頃ちょっと、いや、かなり気になることを話したい。
たまにTVをつけると、画面の中の若いアナウンサーやらリポーターやらが、原稿を読みながらであるにも拘わらず、言葉を“噛む”シーンに、最近やたらと出食わす。
ロシア人の名前などならともかく、ごく普通の日本語を、である。
誤った映像やテロップが一瞬映し出され、番組の途中や最後で、
「正しくは、〇〇です。大 . . . 本文を読む
国立能楽堂で、「第31回 手話狂言 初春の会」を観る。
可笑しくてどこか悲しい人間の性を、プロのろう者俳優たちが、「手話」で喋り、謡い、ほんわかと、時に鋭く、あぶり出す。
プロの狂言師から直接指導を受けた彼らの狂言は、古劇の現代への可能性を大いに示した、紛れも無く“本物の”伝統芸能。
舞台上の、全く隙の無い一挙手一投足に彼らの高いプロ意識が感じられ、それが私には何よりも気持ち良かった。 . . . 本文を読む
今朝、ニュースで雪景色の芦ノ湖の映像を見て、箱根の大涌谷へ出掛けることを思い付き、昼から実行。
雪は、あらゆるものを白く粧う。
文字通り、『雪“化粧”』。
その眺めは、見事。
しかし、あまりの寒さに手の感覚が…。
それもそのはず。
今日の暦は「大寒」。
ニュース映像は、寒さそのものまでは伝えられないことを、今更ながら思い知る。
大涌谷の名物といえば、「黒たまご」。 . . . 本文を読む
首都圏は朝から雪模様。
今日は大事な用事があるのに…、と起床して早々、気分はブルー。
でも、頑張って外出したかいはあったね。
東急田園都市線で、8090系と同じくらいに出会える確率の低い、大好きな2000系の急行に乗れたから。
“艱難辛苦は、それを乗り越えられる人にのみ、神は与え給ふ”
泣くも笑うも、
すべてを肚に呑み込んで、
私は私の手で、
扉 . . . 本文を読む
通りすがりに見つけた幟旗に、私は
「あ、ここにはあるな…!」
と直感した。
どんな本かは、わからない。
でも、絶対に手に入れたくなる、何か。
覗いてすぐに、やはり見つけた。
私の仕事を大いに助けてくれるであろう、“貴重書”。
値段は、
「……」
さりながら。
古書は一期一会。
一度のがしたら、再び出逢えることは、
まず、
ない。
フトコロと相談など、しちゃアい . . . 本文を読む
人の稽古を見ていると
自分の姿が
見えてくる。
見聞は、
自ら広めるべきもの。
機会は、
自分でつくるもの。
この足は、
そのためにある。
何もしなければ、
何も無い。
見て、
聞いて、
自らの手で触れて。
話しは、
それから。
ラジオのニュースで、伊勢神宮の斎宮跡とされる場所から“いろはうた”の書かれた土器が出土した、と . . . 本文を読む