迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

優樂逢景。

2024-07-04 20:33:00 | 浮世見聞記
町田市立國際版画美術館の「幻想のフラヌール 版画家たちの夢・現・幻」展を觀る。正直なところ、私はこのテの藝術について、眼識力は持ち合はせてゐない。が、銅版画に刻まれた數多の極細な線から、その作品世界に吸ひ込まれ遊泳していく感覺が好きで、それを樂しみに會場へ出かけるものである。作者はその作品に、自分の感性(こころ)を自由に解放し、表現してゐるはずである。よって私も、自分のこころを大いに解放し、共鳴す . . . 本文を読む
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明るみの丸ノ内線。

2024-07-03 17:45:00 | 鐵路
地下鐵博物館の特別展「丸ノ内線開通70周年展」より、六月四日から始まった“車両編”を觀る。昭和二十九年(1954年)開通當時の初代は300形で、學生時代に歌舞伎座の三階席や幕見席へ毎月通ふ際、最晩年のこの車両に乗ったことは、はっきり記憶してゐる。ところがこの300形には、マイナーチェンジの400形と500形があったことを今回の展示で初めて知り、ではあの時乗ったのは……、と謎な氣分に陥る。當初の計画 . . . 本文を読む
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疑似麺王。

2024-07-02 20:40:00 | 浮世見聞記
もともとヒトの住んでゐない“町”を通り抜けて、私は道を急ぐ。いまは雑々(ごみごみ)とした草と、陰った陽が殘していった蒸し暑さをかき分けて、私はこれからの暑さを凌ぐことより、過ぎたあとの見通しのはうが先に立ったことで、まずは安堵への足がかりを得る。晩には冷やして味はふ朝鮮麺をこしらへる。韓流時代劇で、中宗に献上する“冷麺”のことで騒ぎとなるひとくさりを觀て、「ナルホド、秘訣は山から採取の天然水か…… . . . 本文を読む
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露向日葵。

2024-07-01 20:18:00 | 浮世見聞記
七月の初日は午前中から雨が降ったり止んだり、向かふの山々には雨雲が乗っかり、一日を通してベタつく蒸し暑さが續く不快さから始まる。調子が上がらず、何も手につかぬまま終はりさうで、これではいかん、と氣を取り直して散歩に出る。時期を過ぎつつあるアジサイと入れ替はるやうにヒマワリが姿を見せて、季節(じかん)は確實に夏へ向かってゐることを私に知らせる。今年の夏は、どうせまた炎暑酷暑であらうこと以外は、まった . . . 本文を読む
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