迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

都は己れの心で見つけ出せ。

2017-06-22 11:50:21 | 浮世見聞記
東京都港区東麻布一丁目にて、ふと東京タワーを見上げると、上空に薄くながら光輪が現れてゐた。 どこへ行っても同じ景色が続いてゐるやうに見へる東京だが、ちょいと目線と爪先を転じるだけで、また違った“顔”に、出逢へる。 もっともそれは、どこへ行っても同じこと。 手元のオモチャにばかり熱中して歩いてゐる人は、あとは電柱に頭をぶつけるだけの、フナ侍。 . . . 本文を読む
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判官お舟をこぎ給ひ。

2017-06-21 18:41:33 | 浮世見聞記
黒澤明の初時代劇作品「虎の尾を踏む男達」(1945年)の廉価版DVDを見つけたので、購入する。 画質も音質もそれなりではあるが、十年ほど前、渋谷Bunkamuraでのリバイバル上映で初めて観たときの鮮烈な印象を、けっして損なふものではない。 大河内傅次郎演じる弁慶に、初めて「勧進帳」らしい弁慶を見たこと、エノケンこと榎本健一扮する強力の、ともすれば重苦しくなりがちな空気を絶妙なタイミングで中和 . . . 本文を読む
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よものうみみなはらからとおもふよになどなみかぜのたちさわぐらむ。

2017-06-19 12:44:14 | 浮世見聞記
京浜急行線「横須賀中央駅」の裏手にそびえる山には、階段路地の続く住宅地が広がる。 小さな子を連れた若い母親が、ビニールの買ひ物袋を提げて、階段を踏みしめるやうに上がって行き、自転車に乗った中学生くらいの少年が、そのままガタガタと階段を下って行く。 海へ向かふと、そこには“記念艦”と称した軍艦と、軍人の銅像がおかれてゐた。 はて、記念艦とは何を記念してゐるのだらう? . . . 本文を読む
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ニッポン徘徊─二十三区内最高峰

2017-06-16 15:45:43 | 浮世見聞記
そばに新道が整備され、ガラス張りの高層ビルがそびえし東京都港区愛宕には、東京二十三区内最高峰、二十六㍍の愛宕山がおわします。 徳川家光の時代、讃岐丸亀藩士の誉れを伝へる「男坂」と云ひし急勾配の石段をのぼり、 その頂の、都会の中心とは思へぬ深い緑に包まれて鎮座まします愛宕神社を、参拝せり。 境内の池には数多の鯉あり。 我が近づくと、一斉に口を開き集まりたる人ズレせし有様、 . . . 本文を読む
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顔かたちとお心持ち。

2017-06-10 22:51:54 | 浮世見聞記
上野広小路亭で、雷門助六の落語を聴く。 今日の噺は先代譲りの「長短」。 サゲは、「継ぎの裂(きれ)じゃ」。 それは上方男が江戸男の仕立ての着物を褒めたあと、端布(ハギレ)があるかを訊ねる件りに掛かってゐるわけだが、今日の口演では、そこがスッポリ抜けてゐたやうに思ふ。 だから初めてこの噺を聴いた人は、サゲの意味がわからなかったはずだ。 録音や録画放送では出くわせない、生の寄席ならではのこと . . . 本文を読む
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万物みな等しけれ。

2017-06-05 12:12:47 | 浮世見聞記
横浜市中区の日本新聞博物館“ニュースパーク”の写真展、「日本の海岸線をゆく」展を見る。 人類は地球上の生物の一部にすぎず、決して万物の上に君臨するものではない。 人類は自然の力に恐れをなすとき、おのれの無力を思ひ知らさるる。 しかし、そこから新しい文化を創り上げてきたところに、人類の人類たる所以がある。 営みとは、 生きる知恵を、 育むことでもあるか。 . . . 本文を読む
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