東京都港区東麻布一丁目にて、ふと東京タワーを見上げると、上空に薄くながら光輪が現れてゐた。
どこへ行っても同じ景色が続いてゐるやうに見へる東京だが、ちょいと目線と爪先を転じるだけで、また違った“顔”に、出逢へる。
もっともそれは、どこへ行っても同じこと。
手元のオモチャにばかり熱中して歩いてゐる人は、あとは電柱に頭をぶつけるだけの、フナ侍。 . . . 本文を読む
黒澤明の初時代劇作品「虎の尾を踏む男達」(1945年)の廉価版DVDを見つけたので、購入する。
画質も音質もそれなりではあるが、十年ほど前、渋谷Bunkamuraでのリバイバル上映で初めて観たときの鮮烈な印象を、けっして損なふものではない。
大河内傅次郎演じる弁慶に、初めて「勧進帳」らしい弁慶を見たこと、エノケンこと榎本健一扮する強力の、ともすれば重苦しくなりがちな空気を絶妙なタイミングで中和 . . . 本文を読む
京浜急行線「横須賀中央駅」の裏手にそびえる山には、階段路地の続く住宅地が広がる。
小さな子を連れた若い母親が、ビニールの買ひ物袋を提げて、階段を踏みしめるやうに上がって行き、自転車に乗った中学生くらいの少年が、そのままガタガタと階段を下って行く。
海へ向かふと、そこには“記念艦”と称した軍艦と、軍人の銅像がおかれてゐた。
はて、記念艦とは何を記念してゐるのだらう?
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そばに新道が整備され、ガラス張りの高層ビルがそびえし東京都港区愛宕には、東京二十三区内最高峰、二十六㍍の愛宕山がおわします。
徳川家光の時代、讃岐丸亀藩士の誉れを伝へる「男坂」と云ひし急勾配の石段をのぼり、
その頂の、都会の中心とは思へぬ深い緑に包まれて鎮座まします愛宕神社を、参拝せり。
境内の池には数多の鯉あり。
我が近づくと、一斉に口を開き集まりたる人ズレせし有様、
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上野広小路亭で、雷門助六の落語を聴く。
今日の噺は先代譲りの「長短」。
サゲは、「継ぎの裂(きれ)じゃ」。
それは上方男が江戸男の仕立ての着物を褒めたあと、端布(ハギレ)があるかを訊ねる件りに掛かってゐるわけだが、今日の口演では、そこがスッポリ抜けてゐたやうに思ふ。
だから初めてこの噺を聴いた人は、サゲの意味がわからなかったはずだ。
録音や録画放送では出くわせない、生の寄席ならではのこと . . . 本文を読む
横浜市中区の日本新聞博物館“ニュースパーク”の写真展、「日本の海岸線をゆく」展を見る。
人類は地球上の生物の一部にすぎず、決して万物の上に君臨するものではない。
人類は自然の力に恐れをなすとき、おのれの無力を思ひ知らさるる。
しかし、そこから新しい文化を創り上げてきたところに、人類の人類たる所以がある。
営みとは、
生きる知恵を、
育むことでもあるか。 . . . 本文を読む