葉月最後の一日は、ずっと気になってゐた川崎大師平間寺へ、夏祓ひの心で参詣す。實際に訪れることの叶った日が、すなはち御縁なり。折しも本堂では護摩祈祷の最中にて、諷経(ふぎん)、太鼓、鈴、そして軒下に吊された風鈴が、ひとつの聲となって私の心を招き寄せる。合掌のあとで引ひたお神籤に、私はいよいよ、明日への心が定まれり。 . . . 本文を読む
遠くへ行かずして遠くへ行く術を識った、「今までに経験したことのない夏」。おかげで、未練なく次の季節に臨める。まだ旧(かつて)の日常へ戻りたがってゐる人もあるやうだが、私にはまう“御用済み”。我が身の御守りは、我が身のほかになし。 . . . 本文を読む
炎暑で体は屋内に留まれど、心はすでに九月から先の“備へ”に向かってゐる。いろいろと考へることが、また樂しい。それらはすべて、わが手猿樂に帰結するからだ。さう、自分のため。浮世は、“利用”するためにある。ただ、そのためだけにある。 . . . 本文を読む
お店の入り口に消毒液を設置するのが、いまや令和時代の常識的光景となれり。そしてそれは、利用するヒトの人間性をも丸裸にする。為政者代表が、大腸の持病惡化を理由に“退陣”を表明す。茶番大運動會をにらんだ任期延長が、見事裏面に出た感あり。それでもこの支那發人災病菌の騒動下、「自分の身を護るのは自分でしかない」と云ふことを明確に示してくれた功績は、大きい。 . . . 本文を読む
「嗽をしないと、喉に付着した菌が肺に落ちて、(肺が弱ってゐる場合)肺炎になる可能性がある」──自分の命を護るのは、自分の日頃の衛生習慣のほかにはなし。その道のことはその道の人から聞くに限ると、今日一番の収穫。ところにより大雨といふ天氣ゆゑか、日差しが何やらイヤラシイ。が、それも「日の當たる人生を歩んでゐるのだ」と考へるべし。俳優座の河原崎次郎さんが、七十九歳で亡くなったと知る。十年以上前に、三越劇 . . . 本文を読む
暑さは九月もまだ續くやうだが、それでも夕方の空の表情(いろ)に、次の季節への心の準備を想ふ。そこで八月に自分は何をやってゐただらうかと思ひ返すと──初夏を告げる花が、盛夏過ぎに目を覺ます。たぶん私は、今夏の一日一日を、無駄に流しはしなかったはずだ。 . . . 本文を読む
炎暑に籠城ばかりしてゐたら、八月限定で小田急本線に入線してゐる“赤い1000系”に乗り損ねてしまいさうなので、「思い立ったが吉日」を實行す。普段は小田原~箱根湯本間の中継専用車ゆゑ、車内は箱根の観光廣告で統一されてゐるほかは、ごくごく更新前の1000系。さりながら、いつか事態が終熄したら、或いは安全と判断した日時に、箱根方面を訪れるのもいいな、との氣持ちとはなれり。 . . . 本文を読む
都内忘所で、なにかの撮影を行なってゐる様子を見かける。その人口密度ぶりに、この御時世では命懸けなシゴトだと思ふ。そして、このテの職種にも人災病菌の“お客様”が増へてゐることに、「……だらうな」と納得する。過日、地方の文化ホールで地元高校生たちの吹奏樂演奏會を開催云々。客席は充分に間隔が保たれてゐたが、肝心の舞台上は“常の如し”な有様に、WHOの事務局長が願ふ『二年半での終熄』は、いよいよ“願ひ”で . . . 本文を読む
「処暑」らしく、東京圏は気温が下がっていくらか過ごしやすくなる。何気なくTVをつけると、ザ・ドリフターズが往年のバンド演奏で魅せてゐた。仲本工事さんのギター&ボーカル、高木ブーさんのギター、そして加トちゃんのドラム。本物の音は、私などの心にもスッと沁み入る。オマケには、生演奏で懐かしい「ヒゲダンス」。オチもドリフらしくて、思いがけず樂しい数十分。24時間テレビ、 . . . 本文を読む
「“ソーシャルディスタンス”よ!」行樂帰りのその團体は、途中驛から車内が空ひたを幸ひ、両側の空席に分かれると左右の間隔を開けて座り直し、そのぶん大音聲で談笑を始めた。「元の木阿彌」と云ふ言葉すら勿体ない愚景。だが、おかげで數日後の“數字”を待つといふ、新しい樂しみが出来る。かくして浮世の病原菌は、私に樂しい知らせをもたらしてくれる、大事な情報源でもある。 . . . 本文を読む
「支那發人災病菌の感染者數はピークを過ぎたと見ゆる」──と、主席御用學者。「毎日の發表數の増減だけで云々しても意味がない」──と、外野の研究者。「ワクチンは血液中の菌には有効だが、呼吸器からの感染には効果がない」──よってワクチンに期待は出来ない、と同じく外野の研究者。かくして對策は今も暗中模索のなか、“文化活動”は賛否はさておき、それなりに再始動してゐる。忘所では忘月忘日にバイオ . . . 本文を読む
日中は籠城しながら「歴史」を観て、讀んで、謠って日没までを過ごし、それから散歩に出る。隣町の驛ちかくまで来ると、學生らしき“裸顔”混じりの團体が、大衆飲食店の前で思案の最中。感染者を出した大學に籍をおく學生たちが、あちこちで“立入拒否”に遭ってゐる云々。その元凶が、すなはちこれなり。浮世狎れして小狡さばかりを身に付けたかうした太平樂どもに、自分の仕事を邪魔などされてたまるか……!私も . . . 本文を読む
昭和に生まれて平成を駆け抜けた車両が、ここでもその使命を終へやうとしてゐる。東急8500系──長生きしたよなぁ、といふのが私の印象。幼少の時から見飽きるほど見續けてゐるので、余計にさう感じる。ここまで長生きの理由として、ずっと後に誕生しながら先に引退して“9020系”となった2000系や、さらに後輩のニ代目5000系といった「置き換へ新車」は登場したものの、その度に“オトナの事情”で増備が中止され . . . 本文を読む
實家が新規購入した冷房の取付工事に立ち會ふ。「室外機を直射日光に晒すと冷房の効きが惡くなる」と、業者より初めて聞いたことが今日の収穫。支那發の人災病菌と熱中症とは、症状が酷似云々。「なるべくしてなってゐる」といふ点からしてその通りだ、と冷風の試運転を見ながら思ふ。暑さは、このまま静かに涼んでゐればそのうちに去る。少なくとも、人災病菌よりは先に……。 . . . 本文を読む
「何事もなく一日を過ごす」ことと、「何もせず一日を過ごす」こととが、いつの間にか混同してしまってゐるやうな氣がする。連日の炎暑から身を護るための籠城を、何のためにさうしてゐるのか、わからなくなってはいないだらうか……?夕方に気温が下ったところで散歩に出る。八月も、はや下旬にならんとす。その日その日を、まう少し意識して生きたはうが良ささうだ。せっかくその日を、無事に生きてゐるのだから。 . . . 本文を読む