迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

とらつぐみ。

2015-09-19 22:12:23 | 浮世見聞記
水道橋の能楽堂で、宝生流の「鵺」を観る。 源頼政が射落した物怪を、松明をかざして見れば、頭は猿、手足は虎のごとく尾は蛇― 舞台では前シテが閉じた扇を松明に見立て、面(おもて)の表情でその姿を映し出す。 ああ、 いる……。 そこにたしかに、 深紅の血にまみれた、 人間と同じ“生き物”が。 わたしは舞台上に倒れ伏す物怪に問ひかける。 あなたはなぜ、帝をなやませたのですか? . . . 本文を読む
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いちどにどっとてをうちわらふ。

2015-09-13 21:55:55 | 浮世見聞記
宝生流の「三笑」を、水道橋の能楽堂で観る。 嘆くか怒るかのどちらかが多い能のなかで、珍しく“笑ふ”場面がある、珍しい曲だ。 もっとも、狂言のやうにのけ反って笑ふのではなく、三人の直面(ひためん)の演者が表情をつくることなく、両手の先を一度ちょんと合わせてそれでおしまいといふ、至極あっさりした型のため、ぼんやりしていたら見逃してしまふ。 この曲に登場する三人は、いづれも俗世とは縁を切った自由人 . . . 本文を読む
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