迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

よそうできないからそれをであいといふ。

2015-08-28 23:20:04 | 浮世見聞記
“新古書”店で見つけ、表紙のデザインに惹かれ、そして値段が安かったので手に入れ、そのまましばらく仕舞ったきりになっていた小説を、ようやく読んだ。 表紙に劣らない作品力にいつしか虜になり、一気に読み通した。 久しぶりに、 「う~ん、やられた……」 と唸れる、プロの作品に逢った。 そして、 「我とても!」 などと奮起してゐるわたしを眺めて、 『お前は年をとらないよ』 と笑ふ自分 . . . 本文を読む
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いかにしてこのひともとにしぐれけんやまにさきだつにわのもみじば。

2015-08-23 18:33:53 | 浮世見聞記
能舞台で、「六浦」を舞い仕る。 舞台は相模国六浦の称名寺、シテが庭の景色をしみじみと眺める、静かな曲だ。 能舞台といふ俗世から隔絶された空間に立つと、しだいに心が落ち着き、その曲の世界が、目の前にはっきりと映りだす。 そして、思ふ。 この空間こそ わが住処 やっと帰ってきた と。 人間ばかりの空間は、 生きるための嘘が、 あまりにも多すぎる。 . . . 本文を読む
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いないいないばあ。

2015-08-13 23:22:34 | 浮世見聞記
相模女子大学のグラウンドで催された薪能にて、宝生流宗家による「葵上」を観る。 シテは六條御息所の生霊、本来ならば人間の目に見えない存在だ。 本来ならば、映らない存在。 いままで、さういふことをほとんど気にしないでこの曲に接していたが、演能前のシテ方能楽師による解説のなかでこの話しが出て、今さらにして「言われてみればさうだ……」と思った。 観客には見えても、朱雀院の臣下に代表される . . . 本文を読む
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とおかじをながめてつまむこがねもち。

2015-08-12 17:08:52 | 浮世見聞記
薩州で原子力発電所が再稼働したといふ。 核燃料による電力に頼らずとも、日常生活になんら支障のないことは、十分に証明されていたはずだ。 わたしの住む町の公会堂のロビーには、現在もあの日の事実を伝える新聞が、パネル展示されている。 記事のなかの写真に記録された光景を目にするたび、わたしはあの日、TV画面を通じて目撃した自然の猛威に、ただ唖然としたことを、鮮明に思ひ出す。 対岸の火事も、 . . . 本文を読む
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ことばをまいにたくしてつたえん。

2015-08-01 23:43:10 | 浮世見聞記
横浜の本牧神社で、里神楽の奉納を観る。 演目は「笠狭桜狩(かささのさくらがり)」といふもので、女の神様が嫉妬に狂うさまがひとつの見せ場。 また、なぜ天皇には寿命があるのか、その理由(わけ)を、それとなく説いている曲でもあるやうだ。 かつて日本の民衆は、こうした身近な場で演じられる芸能などを通じて、先人たちの言い伝えを、心に受け継いできた。 そしてその言い伝えは、ときには大ぜいの人の命 . . . 本文を読む
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