今夏は昔ながらの甘酒で乗り越えやうと決めた私の前に現れたのが、ミルク配合といふ、↑。どれとも相性の良いミルクなれど、甘酒ともきたか……。すぐそばの新幹線駅構内の日陰に入って、さっそく試してみる。味はこのメーカーの通常の甘酒と大差ないやんけ──、と思ひきや、あとからジワジワとミルクチョコレートにも似た味が……。これはたぶん、クセになる。 . . . 本文を読む
横浜市保土ケ谷区の神明社で、“ご縁”あって久しぶりに石山裕雅社中の武州里神楽を楽しむ。今宵観たのは、能楽では「小鍛冶」であるところの「神剣幽助(しんけんいうじょ)」。稲荷大神の“相槌”を得た三條小鍛冶宗近は、帝へ献上する刀を見事に打ち上げる──流麗な神楽囃子に虫の音が合奏する、涼やかな三十分。動きがかなり猿楽ガカリなこともあり、見物のなかには「能……?」と首を傾げる人がゐたのも道理な . . . 本文を読む
東横線が、ちゃんと東横線だった時代の名残を見つける。線路と駅を地底に埋め、地上の跡地に中途半端なモニュメントを置ひても、ただの未練がましい愚策でしかない。現在の“西武東武東京メトロ東横線”は、横浜駅から先は“みなとみらい線”といふ微妙な路線に化けて、『公営賭博場誘致予定地』の最寄り駅までを行く。カジノ──異國語を用ゐて小洒落たふうを装っても、日本語で言へばしょせんは『博打』、そんなテラ銭で経済を活 . . . 本文を読む
空はよく晴れてゐる。しかし、暑さも寒さも感じない。それでも、日陰に入って休憩しやう。あの自販機のところが、丁度よく日陰になってゐる。トラックの荷台から、出稼ぎ外國人が何か話しかけてきた。シゴトが忙しいやうだ。いまや、このやうな見慣れぬ肌の人が増へてしまった。ニッポン人はどこへ行った?静謐を求められる場所で、闖入した幼児が吠へてゐる。親が静粛を迫る。しかし、ふだんから躾られていない幼児 . . . 本文を読む
無料で本物に接することが出来る良心的な文化事業「相模原薪能」を、今夏も楽しむ。今回は踏んだり蹴ったりな天候のため、会場をグリーンホールに移しての演能、なりよりも中止にしないところがありがたい!開場時間に合はせて到着した頃には、空にはとりあへず雲の切れ間があり、またいくらか涼しい風もあって、むしろ会場ロビーのはうが蒸してゐるくらゐなれど、入口でやたら感じの良いお兄サンが手渡した団扇を手に、絶対にガラ . . . 本文を読む
コーヒーは、私の朝食に欠かせない飲み物である。そんな毎朝愛飲してゐるコーヒーの、日本における黎明期を紹介した「コーヒーが結んだ日系人と日本」展を、JICA横浜海外移住資料館で観る。明治四十一年(1908年)、781人の日本人が笠戸丸でブラジル國サンパウロに移住し、現地のコーヒー農園で雇用労働者(コロノ)として従事したのが、日本にコーヒー文化が普及する始まりなり。もっとも、彼らは永住するつもりはなく . . . 本文を読む
神奈川県立歴史博物館の特別展「北からの開国」を観る。露國の“北方領土”への執念は、じつに日本國の江戸時代にまで遡ることを再認識させらるる。そしてそれは、現在進行形の末解決な問題であることを──おそらくは永遠に──、思ひ知らさるる。もちろん江戸の日本國政府は、様々な世論に叩かれながらも真摯に“海防”に取り組んだ。相模湾沿岸を巡視し、またいくつもの“台場”を築造したが、その略図を急いで巻子に仕立てたた . . . 本文を読む
横浜にぎわい座で、「きん枝改メ 四代桂小文枝襲名披露」を楽しむ。この頃は襲名披露と云ふと、どの業種も「なんでアンタが……!?」と呆れるやうな奇怪なものばかりで、いつもなら知らん顔するところだが、この噺家の襲名ばかりは心から相応しいと大賛成なので、楽しみに出かける。初めの桂きん太郎は六代文枝の“創作”なる「鯛」で客席を沸かせ──むしろ作者以上に上手かったかもしれない──、 . . . 本文を読む
この季節になると、必ずどこかの博物館や美術館で化け物ネタの企画展が催されるが、今回は川崎市市民ミュージアムの「妖怪 ヒト ファンタジーからリアルへ」展を観る。バケモノは、人間の“恐れる”心が生み出したもの。つまり、人間がバケモノを恐れるといふことは、じつは自分自身の“心”に、恐れてゐるのである。それをよく示してゐるのが、歌川国芳の「東海道五十三對 桑名 船のり徳蔵の伝」(弘化年間頃)。禁を破って大 . . . 本文を読む
土地所有者の怒りが沸々と傳はって来る文章。現代の都市空間が、いかに二輪車に適していないか、その一端を示したものなり。しかし。送り仮名がたった一字抜けただけで──画面の赤線、筆者──、怒りの文章もたちまち気の抜けたものへと崩れてしまふ。読み進めて後半にそれを持って来るあたり、なかなかの演出家と見ゆる。──こんなつまらんことが面白く映るのも、暑さのせいじゃな。日向と日陰の温度差に、ただただ驚き入ってそ . . . 本文を読む
最高気温が30℃を超えた東京都心部、往来の頻繁な恵比寿駅前も、今日はさすがに一足早いお盆休みのやう。その一方で、夏の花である百日紅が、人間には熱すぎる日差しをたっぷりと浴びて瀟洒な花を咲かせ、その夏バテ知らずな強者ぶりを示してゐる。「暑いねぇ」と笑ってゐられるうちは、まだまだ若いぞよ。 . . . 本文を読む
囃子(おと)をつくらう──にはかに思ひつひて、音源を準備する。構成は、すでに頭のなかにある。ほとんど、ぶっつけ本番。それでも、なかなか上手く仕上がった。これを秋に使へるかしら?すべては、体が記憶してゐる。その我が身が、すなはなち財産。そんなわたしのなかで、もはや夏は過ぎやうとしてゐる。だからこの炎暑に、苛めさせてなるものか。 . . . 本文を読む
今年も夏のお楽しみ、川崎市の稲毛神社山王祭で間宮社中の江戸里神楽を観る。一座目は神功皇后の新羅出征譚、「八幡山黒尉(やわたやまこくじゃう)」。戦況を“占”ふために釣り上げた“魚”を、以後「鮎」と云ふやうになった、と豆知識を得られるのが楽しい。ニ座目は「黄泉醜女(よもつしこめ)」、生者と死者はけっきょく相容れないものであることを、深く考へさせらるる。この神楽はほかの社中でもたひたび観てゐるが、あらす . . . 本文を読む
いくら水分を補給してもしたりないほどの熱暑に、「さすがにアカンわ……」と、今日の外出に辟易しかけたとき、近くで蝉に唱和する鶯が。まだ鶯が聴ける………!その聲に一服の清涼を覺えたとき、陽差しがいくらか和らひだことに気が付く。このぶんなら棲家まで歩けさうだぞ……。川風が気持ちを後押しする。さうだ、また冷やし甘酒を買っていかう……。そして秋の楽しみな知らせを得る。よしよし、憶えておかう…… . . . 本文を読む
昨夏の悪夢を思ひ出させる炎暑で、八月初日の幕が開く。カバンに通年入れてゐる夏扇が、ここへ来て俄かに脚光を浴びる。昨夏にリサイクルショップで見つけ、現首相の署名入り──もちろん印刷である──のそれだけが、他の夏扇より値段が安かったので、手に入れたもの。盛夏には別にお気に入りの扇を携へ、これはあくまでもカバンに一本忍ばせておく程度のつもりだったが──夏以外でも、街中で歩きタバコの煙に出くはしたらバタバ . . . 本文を読む