矢来能楽堂にて、金春流の「富士太鼓」を観る。
雅楽の演奏家である夫を殺された、妻と娘の悲劇。
殺された夫は、太鼓(楽太鼓)の役者だった。
先に決まっていた太鼓の役者を蹴落として、自分がその役に就いたために、妬まれて命を落としたこの男に、わたしは同情できない。
そんな夫の身の危険を夢枕に予感した妻が、一人娘と共に、夫へ逢いに訪ねて行く-
女の身ではるばる旅をするなど一般的ではなかった . . . 本文を読む
川崎の東扇島へ、久しぶりに出かける。
日本の物流の中枢たる人工島だが、広々とした公園も整備されていて、この季節に出かけるには、ちょうどよい。
眺めれば、海。
見上げれば、空。
それは、万国へ通じる“道”でもある。
宏大な、道。
そうだ、ひさしく旅にも出ていないな。
いや。
いま、こうして生きていることが、旅なのですよ。
一日という頁を綴じあわせて、人生という旅行 . . . 本文を読む
ふらりと道に出てみると、
あなたがそこに佇んで、
わたしに微笑みかけている、
…ように見えた。
あなたはふわりと袂をひるがえし、
“おいでおいで”と歩き出す。
いまこそ想いを伝えやうと、
わたしはふらりふらりと、
ついて行く。
ふらり。
ふらり。
ゆらり。
ゆらり。
ふら。
ふら。
ゆら。
ゆら。
やがて一陣の風が吹き、
あなたは散り消 . . . 本文を読む