迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

あまりにくるしうそうろうほどにこのところにやすまばやとぞんじそうろう。

2015-04-25 21:55:49 | 浮世見聞記
喜多六平太記念能楽堂で、金春流の「融」を観る。 この曲は全篇を通して、左大臣源融の邸宅跡-「六條河原院」が舞台である。 しかも今やそこは、主人亡きあと相続する者がいなかったため、すっかり廃墟と化している。 背後に松が描かれただけの能舞台に、その無情さが観る者の心に描けるかどうかで、この能はだいぶ味わいが違ってくる。 もっとも、廃墟ならいまのご時世、いたるところに展開されている。 . . . 本文を読む
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そしておとずれたり。

2015-04-17 20:32:51 | 浮世見聞記
江戸の昔より浮世絵にも描かれた藤の名所で、あたらしい季節が芽吹きはじめた。 「今年も、逢えましたね」 有象無象が押しかけて、 俗臭を振り撒いてしまふ前に、 わたしはあなたにそっと、 耳をかたむける。 . . . 本文を読む
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あるいてあるいてくたびれて。

2015-04-15 19:42:43 | 浮世見聞記
リサイクルショップで、こんなレンタルビデオ店落ちのDVDを見つけた。 「新霊幻道士 風水捜査篇」。 霊幻道士役で一躍有名になったラム・チェンインが、現代香港を舞台に道士の能力を持った刑事役に扮して、妖術使いの日本人女性と法力バトルを繰り広げる、といったストーリーで、1990年の制作。 ラム・チェンインが唯一出演していない第四作目以降も、彼が亡くなるまで細々と制作され続けた霊幻道士シリーズのう . . . 本文を読む
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それはいまもかたりつづける。

2015-04-08 23:44:15 | 浮世見聞記
横浜みなと博物館で、創業125年を迎えた神奈川新聞社の報道写真の数々を紹介した、「報道写真が映す戦後の横浜港」展を見る。 いづれも、その時代のその瞬間と、真剣に向き合って生きる人々の表情が克明に記録され、それは今も鮮烈な印象を放ち続けている。 まさに“真”を“写”した一瞬であり、その延長線上に、現在の我々の生活があることに、あらためて気付かされる。 戦前の報道写真は、空襲で灰燼に帰し . . . 本文を読む
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げにさかがみのかげうつる。

2015-04-05 22:05:29 | 浮世見聞記
国立能楽堂で、金春流の「蝉丸」を観る。 舞の名手がシテをつとめるだけに、観るのを楽しみにしていた。 シテの“逆髪”は延喜帝の皇女ながら髪が逆立つ奇病のために心が乱れ、いつしか御所を抜け出し方々をさまよい歩くようになった、薄幸の女性である。 そのさまよい歩く様を描写したのが“道行”、流麗な節のついた謡にのせて華やかに舞う見せ場で、わたしも以前に二度、この件りを舞い仕ったことがある。 彼女 . . . 本文を読む
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