今日は橫濱の街なかを往復する用事があり、しかし日中は雨との予報で面倒だなァとため息だったが、實際にはなんとか曇天で推移したので、良かったと氣持ちを取り直す。昨日はトウキョウをウロウロし、今日はヨコハマをウロウロし、明日もたぶんどこかをウロウロして──もし雨が降っても、私は變はらない。そこに徒らにヒトのゐることのはうが、私には氣鬱だ。 . . . 本文を読む
東京驛を通る。浮世では今日から最大九日間の大型連休云々。しかし、私には全く関係なし。ただいつものやうに、氣ままにその日を過ごす。いつものやうに、他人(ヒト)を他人事に眺めて過ごす。ヒトがゐなくなってから、私は手帳を開く。 . . . 本文を読む
白昼下に羽田空港を望む。空の玄関。旅のはじまり。あそこから九州福岡博多へ出かけたのは、いつであったかしら?つひこの間は遠いあの日。旅は、帰り道があるはうがよいのか、ないはうがよいのか、考へないはうがよいのか……? . . . 本文を読む
ラジオ放送の觀世流謠曲より、亂曲「和國」を聴く。亂曲(らんぎょく)とは、現在では廢曲となった謠の一部、または初めから素謠として創られた短い謠を云ひ、技藝を極めた能樂師にのみ謠ふことが許される“秘曲”云々。さういふ勿体ぶった事情から、三十曲ほど現存する亂曲のうち實際に耳に出来るのは數曲云々、今回放送の「和國」はシテの人物名で、和歌に入れ込むあまり氣がおかしくなったなにやら面倒臭さうな男が、旅僧に和歌 . . . 本文を読む
スーパーのレジで長い行列が出来て待たされてゐると、買ひ物カゴを足許に置いて、前の人が進むたびに足でカゴを押して詰める人を、ちょくちょく見かける。包装されてゐるとはいへ、口に入れる物を土足で扱ふ──不衞生であり、だいたい品がない。重くて持ちきれないのならば、初めからカートを使へばよいことだ。先日も、服装(みなり)だけは小綺麗な老齢女性が、やはり足許のカゴを蹴ってゐるのを見かけて、うわべばかりを飾って . . . 本文を読む
神奈川縣立金澤文庫の特別展「金沢文庫の肖像」を觀る。目當ては、金澤(かねさわ)北條氏四代の肖像画「國寶 四将像」の、期間限定全幅公開。(※上から、初代實時、二代顕時、三代貞顕、四代貞将 案内チラシより)三代目の貞顕には前にも當地の企画展で會ったことがあり、大河ドラマ「太平記」では故人児玉清さんが執權もつとめたこの人物を好演してゐたことを偲んで以来の再會。同じ大河ドラマ「北条時宗」では . . . 本文を読む
忘日、ネット上のニュースで、乗客が電車内の電源コンセントを勝手に使用し、乗務員からの注意もなんのその、と云った記事を見かけたが、私自身も同じ非常識な人種を、JR忘線車内で目撃す。見るからに薄汚れた風体のその女児の橫には、同じ風体をした見るからに親とわかるボンヤリ顔の男がゐたが、もちろん止めるやう注意などするわけがない。この父娘は貧乏なのだな……。父娘そろってあんなヨレた服を着てゐるくらゐだ。光熱費 . . . 本文を読む
今春もご縁あって、東京都目黒區大橋の上目黒氷川神社で開催された「第8回 おかげマルシェ」にて、現代手猿樂を舞ふ。昨春にこの催しで、感染症對策のためマスクを着用して裃姿の略式で舞った「村雨留」を、今回は面と装束をつけた本式で舞ふ。思へばこの催しで披露しやうと能「熊野(ゆや)」をもとに創った途端、人災疫病禍のためその機會を奪はれ、実に三年越しで“初演”が叶ふ . . . 本文を読む
四年ぶりに再開された大相撲春巡業を、四年前と同じ橫濱アリーナで觀る。ただ、あの當時と比べて呼びものとなる力士がさらに減ってゐることは事實で、あの頃から何となく應援してゐる、いまや独り大関の貴景勝も今回は休場、お目當もなく行くのは止めやうかと思ったが、人災疫病禍のために長らく觀るに觀られなかったこと、またその疫病のために勝武士と云ふひとりの若い力士が亡くなってゐることを思ひ返して、切 . . . 本文を読む
ラジオ放送の喜多流「蘆刈」を聴く。貧困生活に耐えきれず別れた夫婦が、片や都で富裕層の乳母となり、片や難波の浦で刈った芦を浜辺の市で賣る相変はらずな貧困生活を送るうち、春の一日に二人は難波の浦で再會し、和歌のやり取り通して復縁すると、一緒に都へ向かふ──かつて別れた夫婦が再びヨリを戻す外見的なおめでたさよりも、和歌のありがたさ云々に主眼をおいた曲に世阿彌が改作したものが、今日傳はってゐる謠のやうだ。 . . . 本文を読む
國立演藝場の演藝資料展示室で、企画展「口絵・挿絵でたどる演芸速記本」を覗く。近代ニッポンで考案された“速記”術が、落語の口演を稽古台にしたことで大いに發展して今日に至る“言文一致体”の基礎を生み出し、またそれら速記本に華を添へた口繪や挿繪が、のちのち近代ニッポンの繪画に幅を與へた意義を考へると、明治十七年(1884年)に「怪談牡丹燈籠」を出版して演藝速記本の嚆矢となった三遊亭圓朝の偉業にはなかなか . . . 本文を読む
今日は午前中から六月並の暑さとなる云々、よってまだひんやりしてゐる朝一番のうちに装束をつけて自作を浚ふ。……結局のところ、發汗はいつもと變はらず。外氣のためにあらず、“内氣”のためなり。もふ少し着慣れておきたいものだ。 . . . 本文を読む
かつては立ち小便禁止として、塀に“⛩”を描くのが一般的だったが、都内忘所ではさらに踏み込んだ、御佛の尊顔を掲げた注意書きに出會す。これはなかなか強い印象を與へる。が、角がむしられてゐるのを見ると、効果のほどはまた別かもしれない。ちなみにこの街では立ち小便が後を絶たないため、行政が大小問はずほとんどの公園に公衆便所を設置したと、地元人から聞いたことがある。私はふと、これとは別に、天狗が釈迦如来に扮し . . . 本文を読む
よその土地の藤ばかりに目がいって、毎年樂しみにしてゐるはずのご近所の藤をうっかり失念し、今日になって初めて咲き出してゐることに氣が付く。淡い色より、ここの藤のやうに濃い色のはうが私は好みだ。數年前に水道橋の能樂堂で觀た「藤」に、初夏の白く静謐な風情を堪能したことが、いまも忘れられない。 . . . 本文を読む
dmenuニュースよりhttp://topics.smt.docomo.ne.jp/article/dailysports/entertainment/20230416098?fm=d今月十五日、右下葉癌のため八十二歳にて逝去云々。梨園の重鎮大看板がまたひとり、確かな後繼者を育てることなく逝ってしまったか……と思ふ。剛柔自在、男の“いろけ”も感じさせ、見得をすると大きな眼が利いて實に立派なもので、 . . . 本文を読む