迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

人生の灯火が照らし出す。

2017-08-27 12:02:48 | 浮世見聞記
横須賀線の保土ケ谷駅より、慶長以前の古東海道を北に行くこと約七分、保土ケ谷神明神社にて、武州里神楽“石山社中”のお神楽を観る。 武州の名の通り、埼玉県新座市に本拠地をおく社中で、江戸初期より十代目といふ当代家元は観世流猿楽師にも師事してゐるとあって、 初めの「天孫降臨(てんそんかうりん)」における演者の動きや台詞など、なるほど猿楽掛りだ。 ただ、こちらは土師流里神楽の同曲のやうに、猿田 . . . 本文を読む
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てつみちがゆく──引退して新しい“顔”となる

2017-08-23 16:14:59 | 鐵路
東京都豊島区南池袋一丁目、一階に丸善のブックカフェが入る藤久ビル東五号館の正面には、西武2000系、京浜急行800形の“顔”が並んでゐる。 ビルの新しい“顔”として、鉄道車両を展示することを以前から考えてゐたと云ふオーナーは、今年六月にビルをリニューアルオープンするにあたり、縁あって西武鉄道、京浜急行、そして東急電鉄から現役を引退した車両を譲り受け、フロアスペースの都合で前面だけを切り取り、念願 . . . 本文を読む
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国土はなんぴとのものなるや。

2017-08-21 10:38:29 | 浮世見聞記
京浜急行線「仲木戸駅」から徒歩四分、熊野神社で奉納された横越社中の土師流里神楽を、午前中から夜にかけて大いに堪能する。 午前中は「黄泉醜女」の続きにあたる「禊払(みそぎはらひ)」、 午後は稲荷大神(いなりおおかみ)が紀千箭(きのちのり)に自分の弓を渡して稲荷山の鬼を退治するやう命じる「稲荷山」、 大国主命(おおくにぬしのみこと)が治める豊葦原中つ国(とよあしはらなかつくに)の . . . 本文を読む
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にじむ篝火佐渡寶生。

2017-08-17 00:40:07 | 浮世見聞記
神奈川県相模原市で行われた「相模原薪能」へ久しぶりに出かけ、宝生流の能を観る。 今回は朝から雨のため、相模大野駅ちかくの文化ホールに会場を移しての演能。 おかげで、巫女のコスプレをした女子大生どもの、危なっかしい手つきの火入れ式を見ずに済んだ。 番組は仕舞が二番に、大蔵流山本東次郎家の狂言「蝸牛」、能は宗家がシテをつとめる「橋弁慶」で、“謡宝生”にふさわしい地謡を堪能する。 あれだけの . . . 本文を読む
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迷走未来のゆくへ。

2017-08-15 19:09:16 | 浮世見聞記
東京都公文書館で開催中の、「変わる東京 『文化スライド』が写した昭和30年代」展を見る。 七十二年前の今日、ようやく戦争が終結し、そして十年── 復興から発展へと、急加速に変貌を遂げていった東京の姿を、当時の行政が“文化スライド”に記録した写真で紹介した企画展。 焼け跡の上に密集するバラック街を立ち退かせ、道路とインフラを整備し、川の流れを直し、或るいは蓋をし、或るいは埋め、都市生活者が . . . 本文を読む
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毒の効き目。

2017-08-13 22:10:25 | 浮世見聞記
横浜の大倉山記念館へ、川柳川柳の「敗戦落語会」を聴きに行く。 内容は落語といふより、この噺家が得意とするところの、第二次大戦前後の昭和を当時の流行歌と軍歌とを絡めて回想する、漫談に近い高座。 八十六歳といふ痩身の老人が語る昭和は、多感な少年時代の目撃談でもあるだけに、歌ふ時以外はマイクなしでは聴き取りにくい声量でありながら、重味がある。 高座で披露する軍歌を、客席にゐた一人の年配の女性が小 . . . 本文を読む
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寄り道廻り道上等じゃい。

2017-08-12 12:16:00 | 浮世見聞記
横浜にぎわい座で、五人の噺家による上方落語の会を聴く。 トリは桂塩鯛。 前の芸名は桂都丸。 「ああ……」 懐かしい名前だ。 私が大阪で暮らし始めた頃、時おり聴いてゐたKBS京都のラジオ番組で、パーソナリティをつとめてゐたのが、桂都丸だった。 番組名はたしか、“桂都丸のサークルタウン”といったと思ふ。 やがて大阪での暮らしに慣れ、生活パターンが確立すると、いつしか番組を聴かなくな . . . 本文を読む
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平和への糸口は理解することにあり。

2017-08-08 07:31:56 | 浮世見聞記
横浜開港資料館の、「横浜の西洋人社会と日本人」展を見る。 現在(いま)は官公庁舎やオフィスビルが建ち並ぶかつてのヨコハマ外国人居留地に、ビジネスで移り住んだ外国人と、ビジネスを求めてやってきた日本人との交流の有様が、外国人側からは手紙で、日本人側からは浮世絵で、それぞれ紹介されてゐる。 外国人が書き残した手紙からは、その土地で生きていくためにその土地の文化を理解しやうとして努めてゐる様が窺へ、 . . . 本文を読む
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古への心をたどる里神楽。

2017-08-06 09:29:03 | 浮世見聞記
今年も、川崎の稲毛神社例大祭にて、間宮社中による里神楽を楽しむ。 黄泉の国で恐ろしい姿に変貌した伊邪那美命(いざなみのみこと)を、桃の精が退治する「黄泉醜女(よもつしこめ)」、 保食神(うけもちのかみ)から五穀の種を受け取るやう天照大御神(あまてらすおおみかみ)から命じられた須佐之男命(すさのおのみこと)は、 保食神が精気を込めるため、鼻や耳、目から汚物を出してかき混ぜて作った五穀 . . . 本文を読む
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いまなんどきや。

2017-08-05 09:39:10 | 浮世見聞記
桂春蝶の上方落語を聴きに、久しぶりに両国寄席へ出かける。 噺は「時うどん」。 季節に合わせたのか、ちょっぴり怪談じみた味を融合した、いかにも上方芸人らしいリアクションが満載の一席、大いに楽しんだ。 うどんと言へば、師匠が蜷川幸雄演出の芝居に出演した際、故郷の四国から讃岐うどんを取り寄せて、出演者たちに配ったことがあると言ふ。 すると全員から、「とても美味しかった」と大好評、ところが師匠 . . . 本文を読む
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