迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

うるう拝想。

2024-02-29 19:23:00 | 浮世見聞記
世田谷區池尻に遺る旧大山街道は何度となく通ってゐるが、その道沿ひに稲荷神社のあることを、今日通りかかって初めて知る。廣い境内を囲むありふれたマンション群の光景は、トウキョウではよくある、ありふれた眺め。本殿の脇にはずいぶんと立派な神樂殿もあり、これはこれはと、自分の活動意欲が刺激さるる。世界を見て歩いてゐれば、何かしらの發見があるものだ。今日はいはゆる“う . . . 本文を読む
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一代藝の神髄。

2024-02-28 23:16:00 | 浮世見聞記
ラジオで、今年一月末に亡くなった豊竹咲太夫師の追悼番組を聴く。義太夫節と云ふ、旧時代の庶民の価値觀や倫理觀に密接であったがゆゑに、令和現在の感覺では理解しがたい遺物となってしまった世界を聞かせるには、さうした理屈を凌駕するだけの強い魅力をもった演者に依る他にないことが、咲太夫師の遺した音源からよく分かる。咲太夫師の師匠である豊竹山城少掾、父親の八世竹本綱太夫競演の「妹背山婦女庭訓」、いはゆる“山の . . . 本文を読む
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元寇賢聖。

2024-02-28 19:50:00 | 浮世見聞記
鎌倉歴史文化交流館の「文永の役750年 異国襲来─東アジアと鎌倉の中世─」展で、九州の海底から發見された“てつはう”の現物が展示されてゐるとのことで、ドレドレと出かけてみる。海の向かふの新興國“元”が博多湾沖から攻めてきた初回の元寇──いはゆる“文永の役”(文永十一年、1274年)では、鎌倉幕府の御家人たちはこれまでの敵とは全く異なる戰法を仕掛ける蒙古人たちに、大苦戰を強ひられる。(※一部を除き展 . . . 本文を読む
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北風烈福?

2024-02-27 20:27:00 | 浮世見聞記
昨日に變はらぬ、いや、昨日よりもヒドイ北風に、こりゃたまらぬとその高臺から逃げ出す。黒鶴稲荷神社の鳥居が見えたので、また御縁があったと立ち寄り、参拝す。なにやら面白さうな情報(はなし)を耳にしたので、私にも縁があればなァ、と……。 . . . 本文を読む
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日課のオモカゲ。

2024-02-26 19:10:00 | 浮世見聞記
もっとも古い記憶のある町を訪れる。現在(いま)はとっくに無い幼稚園への通ひ路(みち)、坂道沿ひにある段差より、ピョンと飛び下りて行くのが、幼少時分の私の日課だった。その場所は、今日現在も見事、あの當時のままに殘ってゐる。懐かしい、憶えてゐますか、私のこと……と傍に寄って、そこにかすれた注意書きがあるのを見て、懐かしの笑みがおかしみの笑みとなる。あの後も、私と同じことを考へたのが、たくさんゐたらしい . . . 本文を読む
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四年近影。

2024-02-25 13:20:00 | 浮世見聞記
昨日の晴天は昨日だけの夢、今日は朝から再びシトシト濡れる天気に戻り、さういふ日に外へ出る用事のあることは、傘を持たねばならぬ──常に片手が塞がると云ふ意味におゐて、面倒くさく思ふ。 用事と云っても、せいぜい地元の數驛、十數分間だけ電車に乗って移動するだけのことだが、 かつて人災疫病禍の真っ只中にあった令和二年、官が自宅軟禁令を發令して町からヒトの消えたなか、“有要有急”の用事で今日と . . . 本文を読む
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源三位拝縁。

2024-02-24 18:27:00 | 浮世見聞記
武州高崎の頼政神社を参拝す。高崎の中心街からやや外れた高崎城址公園、隣接する高崎公園に背を向けて建つこの社は、松平輝貞が高崎藩主となった二年後の元禄十一年(1698年)に創建云々、その後輝貞は越後村上への移封、さらに再び高崎に戻るなど、転任のたびに神社も行動を共にし、最終的に烏川を臨む現在の場所に落ち着く。松平・德川の先@ . . . 本文を読む
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赤糸樂縁。

2024-02-23 18:00:00 | 浮世見聞記
昨日に續いて今日も朝からビショビショした天氣でお出かけ氣分にはなれぬゆゑ、なればこの時間(ひま)にと、縫ひものや繕ひものに充てる。糸と針を使ふ用事は根氣が必要ゆゑ、時間と氣力の充實した時でなければ、とても叶はぬ。用意した生地は人災疫病禍以前、高齢者の營む古い布團店がいよいよ店仕舞ひするにあたり、店先に『ご自由にお持ち帰り下さい』と書かれた箱にあった物よりありがたく頂いた品で、手猿樂の装束にいつか必 . . . 本文を読む
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流生小生。

2024-02-22 16:32:00 | 浮世見聞記
かつて¥100ゆゑによく利用してゐたその町の自販機が、いつの間にか賣価が上ってゐて幻滅し、「もふ買ふもんか…!」とそっぽを向いたはずが、いつの間にか「まぁ二十圓くらゐなら……」と、硬貨を投入してゐる。いつか何かで讀んだ、“いまは歳月にさらされ社会の枠組のなかに搦め取られ”云々──が、すなはちこれかと、變はらぬ味に變ったらしいおのれを知る。 . . . 本文を読む
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ニッポン徘徊──隠された“二番目”

2024-02-21 20:54:00 | 浮世見聞記
今年の初めに神戸で“日本一短い國道(國道147號線)”を体験したので、今度は信州の上田驛前に存在すると云ふ、“日本一短い縣道”を体験しに行く。「縣道162號線」がそれだが、神戸の場合と違って市販の道路地図にも、現地にも、それを示す物は一切無く、私と同じことを考へて出かけた先達の報告書を検索し予習した上で向はなくては、まずたどり着けない、と云ふか、氣が付かない。上田驛「お . . . 本文を読む
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夢幻有現事業。

2024-02-20 18:51:00 | 浮世見聞記
長らく氣になってゐた、長野縣小縣郡青木村の「五島慶太未来創造館」を訪ねる。上田驛からほぼ一本道を路線バスで約四十分、終點からさらに十分ほど奥へ入った長閑な場所に、五島慶太の生家を参考にした外觀のそれはある。相手の會社の株を大量購入して次々と自分の傘下に収めていくその豪腕ぶりから、“強盗慶太”と揶揄を込めた異名をとるほどの強烈な個性を發揮しながら、現在につながる東急グループの礎を一代で . . . 本文を読む
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雨櫻春魁。

2024-02-19 21:00:00 | 浮世見聞記
豆州河津へ、二年ぶりに河津櫻を觀に行く。昨年は行くのをやめて結局後悔したので、今年こそはと計画したものの、今日は予報通りの雨模様。「やはりこれか……」と嘆息したところで、前後の予定の都合もあって日程の変更も利かず、土砂降りにならぬことを願って出かける。早咲き櫻は、すでに盛りを過ぎ始めてゐたが、御當地の花を今回は觀られて、まずは満足。櫻並木では、花におのれの作り笑ひとを並べて、スマホで“自撮り”して . . . 本文を読む
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和洋同音。

2024-02-18 21:40:00 | 浮世見聞記
東京都世田谷區の昭和女子大學 人見記念講堂へ、世田谷フィルハーモニー管弦樂團と世田谷區民合唱團による、ベートーヴェン「交響曲第九番」の演奏會を聴きに行く。もともと令和二年二月に予定されてゐた演奏會だったが、あいにく人災疫病禍元年に當ってゐたため直前に中止、それから四年後、第九の初演からちゃうど二百年の節目に當る令和六年2024年に開催云々。第九の演奏會と云ふと年末の印象が強いが、戰後ニッポンにおい . . . 本文を読む
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黎明繊指。

2024-02-17 20:05:00 | 浮世見聞記
長野縣千曲市の長野縣立歴史館にて、「和田 英~糸づくりに懸けた明治の女性~」展を觀る。明治六年(1837年)、その前年に操業したばかりの武州富岡製糸場へ傳習工女として入り、一年三ヶ月にわたって糸繰りの技術を學んで故郷の信州松代へ戻ったのち、明治八年八月に當地で創業した民營の製糸場六工社(ろっこうしゃ)で技術教師になるなど、明治初期のニッポン近代化に貢献した . . . 本文を読む
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笑笑耳揃。

2024-02-16 18:34:00 | 浮世見聞記
過日、雑多な情報を暇つぶしに繰ってゐると、大昔に共に同じ世界に身をおいてゐた人が、現在は別の世界で順調に生きてゐるらしいことを知り、人生は人それぞれ、色々だなァ、とつひ目線が遠くなる。人にはそれぞれ分相應と云ふものがあり、ムダな苦勞はその枠を知らぬところにある。私は現在(いま)の生活が分相應と心得てゐる。今日の夕方にスーパーで買ひ物をしたところ、合計金額が思ひがけず税込¥1000キッチリ、レジ係の . . . 本文を読む
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