迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

釣り針のやうなかしくで客を釣り。

2017-09-30 22:25:03 | 浮世見聞記
深川江戸資料館のホールで、桂春蝶の落語を二席聴く。 初めにいい加減なことばかりを宣ふご先祖サマが続出する、すばり「ご先祖様」で客席を沸かせ、トリに客電を落として、上方落語の大ネタ「たちきれ」を、臭いほどじっくりと聴かせる。 芸妓遊びが過ぎる若旦那を百日間蔵に閉じ込めた番頭が、若旦那宛ての芸妓からの手紙が八十日目で途切れたことで、「花街の恋は八十日で終わりか……」と苦笑ひするところに、なにか人間 . . . 本文を読む
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房州美人。

2017-09-25 21:56:31 | 浮世見聞記
千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館で、「年号と朝廷」展を見る。 公家学者たちが唐国の典籍や己の蘊蓄を総動員して取りまとめたいくつかの年号案を、天皇や上皇の意向に沿ひながら儀式的手続きを踏んで決めていく様子を、実際に改元に関わった鎌倉時代の公家、広橋経光の記録をもとに詳しく紹介したコーナーが圧巻。 さりながら、いくら人間が年号に国家平安への願ひを込めやうとも、天地はそれを嘲笑ふかのやうに、災ひを以 . . . 本文を読む
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むずむずくる笑ひ。

2017-09-24 18:53:46 | 浮世見聞記
横浜市泉区民文化センターで、雷門助六の落語を楽しむ。 噺は、オチに関する小噺をいくつか披露したあと、「しらみ茶屋」を口演。 お客の社長に衣紋から虱を入れるイタズラをされた太鼓持ちが、痒さをこらえながら虱を払ひつつ「夜桜」を踊る件りに、助六師の踊りの素養が光る。 そこだけでも今日は来た甲斐があるといふもので、テープながら下座も入り、まさに目と耳で楽しむ一席。 サラリと踊ってゐながら、「今日 . . . 本文を読む
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黙して聞かん神の聲。

2017-09-23 23:26:44 | 浮世見聞記
東京都北区西ヶ原の七社神社の祭礼にて、松本源之助社中の神楽を見る。 この社中のお神楽は“可笑しみ”を旨とするさうで、「釣女」はまさに十八番(おはこ)といふところだらう。 醜女(しこめ)の、顔に似合わず至って淑やかな仕草が却って笑ひを誘ふが、つまるところ、 「性格ブスな美女をとるか、性格美人なブスをとるか」 といふ命題を突きつけられてゐるやうにも見へる──わたしならば、どちらもとらな . . . 本文を読む
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気骨といふ作品。

2017-09-14 23:00:10 | 浮世見聞記
横浜市中区の馬の博物館で開催中の「馬の美術150選」展へ出かけ、このたび完成した山口晃の「厩圖2016」を見る。 昨年春の「馬鑑 山口晃展」の時は、描きかけのキャンバスが壁に掲げられてゐるにすぎなかった「厩圖2016」だが、やまと絵の画法を基に古今東西の人物像と馬たちが絶妙に配され、見事に山口晃氏らしい作品へと仕上がってゐた。 写真は、「個々の作品を接写しなければ撮影可」といふ注意書きを確 . . . 本文を読む
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藝は血筋だけで見せるものに非ず。

2017-09-12 21:28:22 | 浮世見聞記
横浜能楽堂の特別展「芸の俤 山田流と宝生流の名人たち」展を見る。 箏曲の山田流と能楽の宝生流、どこに接点があるのかと思ひきや、山田流の祖である山田検校は、宝生座の猿楽師の家の出身と伝はるるらしい。 そして山田流は、山田検校が家元となって創始したものではなく、彼の芸を慕ふ多くの門弟たちが技芸向上に励み、世間に広めていくうち、いつしかその箏曲が“山田流”と呼ばれるやうになったのださうな。 明 . . . 本文を読む
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老け込むには時期尚早。

2017-09-11 21:21:28 | 浮世見聞記
三遊亭小圓朝の落語を聴きに、両国寄席へ行く。 なんだかんだと、昨年夏の湯島天神での独演会以来で聴く小圓朝師の高座だが、体調がよくないのか、姿や声に覇気の薄いのが気になった。 噺は「未練の夫婦」だったが、小噺のやうにあっさりと短く刈り込んでゐたため、小圓朝師が最後に頭を下げても、まだ続きがあると思った下座がすぐに鳴らず、空白が生じたほどだった。 なんであれ、人前に立つ商売をしてゐる人に元気の無 . . . 本文を読む
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てつみちがゆく──“T.K.K. 5000”

2017-09-06 21:28:17 | 鐵路
東急東横線の運転90周年を記念して、往年の名車初代5000系のカラーを再現した二代目5000系が、ただいま運行中だ。 もちろん、ちかごろ流行りのステッカーを貼ったものだが、池上線や目蒲線(現•目黒線、東急多摩川線)を三両編成で走っていた晩年の初代5000系を幼少時代に記憶してゐる私には、 「さうさう、こんなだったなう……」 と、懐かしさが込み上げてくる。 プラットホームでデジカメを手に . . . 本文を読む
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無理を押すなら押し返すまでのこと。

2017-09-05 23:09:33 | 浮世見聞記
相模鉄道線「平沼橋駅」からすぐの水天宮平沼神社にて、土師流里神楽の奉納を見る。 つとめるのは横越社中で、観たのは「菩比(ほひ)の上使」。 国土返還交渉の命を帯びた天菩比神(あめのほひのかみ)は、大の酒好きが祟って大国主命(おおくにぬしのみこと)との交渉に失敗、それから八年も、あちこちを彷徨い続けることになってしまふ── 天菩比神を追ひ返すやう大国主命から命じられた息子の武御名方(たけ . . . 本文を読む
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財産を楽しむ。

2017-09-03 10:28:19 | 浮世見聞記
横浜市旭区民文化センターにて、今月二十一日に師匠桂小南の名を三代目として襲名する桂小南治の落語を聴く。 師匠と同じ“野崎”の出囃子で高座に上がり、口演したのは「そば清」。 まろやかな上方言葉で、東京人にも受け容れやすい独自の上方噺を聴かせた師匠とは対照的に、次期小南は声量と凄味の効ひた江戸弁を駆使し、そこは師匠譲りの運びの良さで、聴く者を楽しませる。 芸を生かすも殺すも、すべては“間”の . . . 本文を読む
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