迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

伐って接ぎ木をいたさねば明日の道が拓けませぬ。

2019-05-31 23:40:07 | 浮世見聞記
ダメかな、と落胆してゐた事柄に、思いもよらぬ方角から接ぎ木となる事柄を見つける。待ってみたり、動ひてみたり、いろいろやって、道を見つけ出す。道は必ず、どこかに通じてゐる。ただしその距離は、とても永い。下ったり、下ったり、やっと少し上ったり。諦めたのは縁がなかったから。見つけたのは縁があったから。ただし、駆け出すのは何事におゐても危険なり。近頃は、道に平気で細紐を張ることが流行っているからの。 . . . 本文を読む
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バケモノ譚義。

2019-05-30 16:06:38 | 浮世見聞記
春以降、決められた日にゴミを捨てるといふルールすら守れない人種が、わが町内に移り込んで来たやうだ。烏が散らかして行ったそれらから、その移人にはオンナもいるらしい。“女性”ではない。オンナ、である。おのれの手から離れてさへしまえば、あとは関係なし──さういふ自分のことしか考ゑていない汚い根性は、必ずお肌にも顕れる。おのれの住む町も綺麗にできない者が、キレイなお肌になどなれるものか、と思ふ。どこかの健 . . . 本文を読む
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木と緑が彩る開港場。

2019-05-28 16:23:19 | 浮世見聞記
横浜開港資料館で、「カメラが撮らえた横浜─古写真にみる開港場とその周辺─」展を見る。開港後のヨコハマを記録した貴重な写真は、これまでこの資料館の企画展でたびたび目にしており、今回はその認識を深める心で出かける。異國に向けて港が開かれ、陸に揚がった異國人が生國を模した居を構へたことにより、ヨコハマはそこだけ異國が出現したやうな、不思議な情緒を醸し出す“異界”として、近代世界へ足を踏み出す。そんな異界 . . . 本文を読む
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その先触れ。

2019-05-27 14:46:30 | 浮世見聞記
すでに30°Cに気温は達してゐるだらう。昨夏には、この気温を「今日は過ごしやすいですな」などと言ってゐたのだから、命を危険にさらす元凶はおのれの“慣れ”であることを、反省せずにはいられない。古来より、元号と気候はなんら関係性がない事実を、ここに記すものなり。なァに、今年も用心に越したこたァねぇってことよ。 . . . 本文を読む
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誇りなる女性美。

2019-05-26 18:05:53 | 浮世見聞記
横浜ユーラシア文化館で、「装いの横浜チャイナタウン─華僑女性の服飾史」展を見る。一般に“チャイナドレス”と云はれる「旗袍(チーパオ)」は、もともとは活動しやすさを旨とした日常着として、1920年代に創作されたものであったことを、この企画展で初めて知る。洋服で云ふところのワンピースがそれにあたるやうで、“チャイナドレス”の特徴ともなった両脇のスリットも、日常着であった時代には足捌きをよくするための僅 . . . 本文を読む
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道に迷へど我に迷はず。

2019-05-25 22:09:39 | 浮世見聞記
よその街で一日のうちに二度、高齢者に道を訊かれる。一人目はお爺さん、二人目はお婆さん。お爺さんは、隣のさらに隣の町へ行きたいらしかった。過去に通ったことのある町なので、だいたいの道順を教へてあげたが、そのお爺さん、復唱するとだうも覚へが怪しい。「とにかくあっちの方向をめざして下い」と、遠く“あっち”を指差して、私は離れた。お婆さんには、回転寿司屋を訊ねられた。知らんがな。地元民ではないので知らない . . . 本文を読む
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もはや逃れぬ天の網。

2019-05-24 18:10:38 | 浮世見聞記
上の詐欺師、東京高裁における二審でも二年六ヶ月の実刑判決が下る。當然である。浮世に正義などありはしないことは承知してゐるが、この詐欺師だけは徹底して罰すべし。毒には毒を以て制するのである。浮世は忘れやうとも、私はこの詐欺師の果てを、必ず見届ける。 . . . 本文を読む
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福の神の暗示なるや。

2019-05-21 21:33:23 | 浮世見聞記
今年もこれからどんな事態が訪れるかを予感させる、そんな天気の一日。うっかりしてゐると、とんだ被害者になりかねない。洪水と渇水が、いちどにやって来るのがいまの御代。駅の燕も、今日はさすがにヒナの餌を求めに行くわけにはいかず。天候のよろしかざる時は、動かぬに限る。──さうも言っていられない?それは、おのれで勝手にさうしてゐるだけじゃ。とりあへず、濡れさへしなければよい。水さへ差されなけれ . . . 本文を読む
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言はせていただかせていただく。

2019-05-20 18:27:19 | 浮世見聞記
この頃の日本語として、「〇〇させていただく」といふ言ひ回しがやたら耳目に付く。なんでもかんでも、猫も杓子も、「……〇〇させていただきましたが云々」相手に対する謙譲のつもりなのだらうが、かう氾濫すると、却ってあざとく響ゐてうるさい。おそらく、賞味期限付きの藝No人がいつ廃棄されるか分からない恐怖心から、権力者への過度なお追従で無闇矢鱈と、「(番組に)使っていただいた」だの、「呼んでいただいた」だのと . . . 本文を読む
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文字通りの笑ひ。

2019-05-19 23:44:48 | 浮世見聞記
町田市民文学館ことばらんどで、「大日本タイポ組合展 文ッ字」を覗く。私などは完全に活字中毒者であるだけに、どんな内容かとちょっと気になり出かけてみたが、要するに活字を使った模様遊びがいくつも並んだもので、共感できる感性がないと眼がチカチカするばかりで、そそくさと会場を出たくなる。一階に降りると、講座かなにかがあったらしく、高齢者たちがぞくぞくとロビーに出て来て談笑してゐた。何か楽しみを持ってゐる人 . . . 本文を読む
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要はアタマの運動会。

2019-05-18 20:35:55 | 浮世見聞記
三日間の実習を終へたその道の卵が、挨拶に訪れる。私にもさういふ時があったな──これから自分が飛び込まんとしてゐる世界の空気に触れて、気持ちが高揚したものだ。その卵に、これからは会ふこともないだらう。大ひに、問題にぶち当たるべし!人は、悩むことが生涯のシゴトだ。あの頃の、活字化された自分の文章を読み返すと、さういふことを真剣に悩むおのれの姿が直情で綴られゐて、その“若さ”が懐かしく、お . . . 本文を読む
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てつみちがゆく──原町田驛の証人。

2019-05-17 19:26:23 | 鐵路
JR横浜線の町田駅が、かつて「原町田」駅と云ってゐた時代の駅名表示板が残されてゐる場所を、町田へ来たつひでに訪ねる。東京都町田市森野町のビルの脇、駐車場のフェンスに横倒しにされた姿に、誰だか知らない所有者の感性を見る。過去に訪ねた“お仲間”の投稿写真を見ると、かつてはビルの壁面に括り付けられてゐたやうだ。原町田駅は昭和55年に現在の小田急線寄りに移転し、「町田」と改称されるまで、下の写真の左手、線 . . . 本文を読む
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安全安穏の鉄則。

2019-05-16 19:06:56 | 浮世見聞記
二年ぶりに、自転車といふやつに乗る。ふだんは歩行者の立場で、走ってゐる自転車を傍観してゐるが、「アイツ阿呆やな」と呆れるのはいても、「あの人は上手いな」と思はせるやうなのは、まずいない。今回はその「阿呆やな」と思はれかねない側に廻ったわけだが、さういふ意識でいるせいか、実は常にキケンが付きまとふ乗り物であることに、今さらながら改めて気が付く。有象無象にウンザリするやうな場所には、絶対に乗り入れたく . . . 本文を読む
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白い負域。

2019-05-15 17:01:57 | 浮世見聞記
面会者として、町外れの大病院を訪ねる。一階ロビーは外来患者で混雑しており、ここがこの町でいちばんの繁華街ではないかと思ふ。それぞれの抱へる人生が、色濃く剥き出しにされて、それがそのまま病ひの根源となる──本當の薬は、どこにあるのだらう……?先輩に補助されながら手順を追ふ、見習ひらしき若い看護師の白くて細い腕に、いづれ自分も老爺になったら、今はまだ生まれてもいない人に命を恃むことになる . . . 本文を読む
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修羅の幻惑。

2019-05-14 19:46:10 | 浮世見聞記
京マチ子さんの訃報を知る。数十年前、祖母の家のテレビで見た映画「羅生門」が、京マチ子さんを目にした最初だ。なんて綺麗な女性(ひと)だらう!──そのときの強烈な印象は、その後この映画を名画座などのリバイバル上映で何度観ても、変はることがなかった。それだけに、「羅生門」と云ふと世評は彼女には殆ど触れず、判で捺したやうに三船敏郎ばかりを絶賛することが、私は大ひに不満だった。無駄にセリフをが . . . 本文を読む
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