迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

道指南。

2018-03-31 23:57:12 | 浮世見聞記
ここ最近、人からよく道を訊かれる。 “このへんに、コインパーキングはありますか?” “このあたりに、年金会館はありませんか?” “区役所はどこかな?” “四、五時間くらゐ時間を潰したいんだが、このあたりにパチンコ屋はありませんかね?” いづれも、東京の地理に明るくない人たちである。 渋谷のスペイン坂で、向かうから自転車で下って . . . 本文を読む
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ありがたう、朝の聲。

2018-03-30 09:22:47 | 浮世見聞記
子どもの時からずっと聴き親しんできた、ニッポン放送の高嶋ひでたけさんの朝のラジオ番組が、今日で終了してしまった。 私が子どもだった当時は、「高嶋秀武のおはよう中年探偵団」といふ番組名で、その第一回放送のオープニングは、現在もはっきりと憶ゑてゐる。 あれから数十年。 途中、大阪に住んでゐた七年間は中断してゐたが、東京へ戻って来てから早速ニッポン放送にダイヤルを合わせると、「高嶋ひでたけの . . . 本文を読む
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陽光のこゑ。

2018-03-26 18:28:30 | 浮世見聞記
渋谷区神南あたりで、鶯の聲が聞こえた。 「おや?」と空を見上げると、 つづけて、 二聲、 三聲。 私の住む町でも、鶯の聲をよく聞く。 今年に入ってから、どこやらの土方が朝から侵(はひ)り込んで近隣の樹木を伐り倒し、更地にして行ったので、毎年囀る鶯たちやいかに、と心配になったが、今年も朝方に聲が聞こえて、やれ嬉しや、と安心したものだ。 野鳥とは無縁さうな街でその聲が . . . 本文を読む
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江戸の中心で濃厚上方色。

2018-03-25 18:26:53 | 浮世見聞記
お江戸日本橋亭で、笑福亭鶴光の落語を聴く。 三人の弟子がそれぞれ一席づつ口演したあと、まずは「秘伝書(地上げ)」。 東京の落語では「夜店風景」といふ題で、先代鈴々舎馬風の古ゐ音源で聴ひていらゐ好きになった噺。 と言ふか、この噺を聴ひて先代馬風のファンになったのだが、意表を衝ひたナンセンスな面白さは東西共通。 音源に遺る先代馬風版は、途中の一番盛り上がったところで上手く切ってゐるが、「地上げ . . . 本文を読む
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天下統一、全国均一。

2018-03-24 23:14:47 | 浮世見聞記
どこまで行っても同じ人。 どこまで行っても同じ景色。 恐怖は、いつもそこにいる。 あの人はどこだ。 ここはどこだ。 わたしは、 どこだ。 . . . 本文を読む
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風躍り明日を告げる桜かな。

2018-03-23 18:52:32 | 浮世見聞記
都内の旧大名屋敷跡にある枝垂れ桜が、きれいな花を咲かせてゐる。 今年も、いよいよ次の季節がやって来た。 さて……。 . . . 本文を読む
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これが、日本映画。

2018-03-22 21:30:40 | 浮世見聞記
何の気なしにTVをつけると、市川雷蔵の「眠狂四郎 円月斬り」が放送されてゐた。 昭和39年公開の、大映作品だ。 さう言へば、大阪在住時代には市川雷蔵の眠狂四郎全作品が、関西ローカル局で昼間に放送されてゐたな……、と懐かしく思ひ出しながら、そのまま最後まで観入る。 脇役、端役の一人一人に至るまで、人物像がきっちりと出来上がってゐて、それが作品に奥行きを与へてゐる。 当時の俳優たちの質の高さ . . . 本文を読む
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ゼニが集まるとカネになる。

2018-03-21 23:36:19 | 浮世見聞記
神保町のらくごカフェへ、「桂文我の神保町秘密倶楽部」の夜の部を聴きに行く。 伊勢参りの道中におけるある出来事から、村人全員が坊主頭になってしまふ「百人坊主」、東京の八代目林家正蔵が上方の二代目桂三木助から教わったものを、「この噺を上方へ返しませう」と、先代の桂文我が教わって十八番にし、さらに当代文我へと直伝された「死ぬなら今」、そして二世曾呂利新左衛門の“遺産”を数席と、いかにも文我師らしゐ味 . . . 本文を読む
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我が人生の恩人、内田康夫さん。

2018-03-18 20:48:24 | 浮世見聞記
作家の内田康夫さんが、今月十三日に敗血症で亡くなってゐたことを、ニュースで知る。 享年八十三。 ご長命だったと思ふ。 私が日本の伝統芸能に興味を持ったきっかけは、内田康夫さんの「天河伝説殺人事件」を読んだことにある。 直接には、それを原作に市川崑監督が映画化した同名作品によって知ったのだが、どちらも若手能楽師が舞台で「道成寺」を舞ってゐる最中に急死する場面が、作中のひとつの山場になってゐる . . . 本文を読む
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てつみちがゆく──“小田鈍”ブランドを確立せよ。

2018-03-17 20:42:06 | 鐵路
小田急電鉄が、今日から改正の新ダイヤにやたら気合いを入れてゐる。 営業運行してゐる車両の前面に貼ったステッカーからして鼻息の荒さが感じられるが、沿線住民と大喧嘩を繰り広げながら押し進めてきた代々木上原~登戸間の複々線化をようやく成し遂げ、長年の懸案だったラッシュ時の大混雑と大遅延を本格的に緩和できる──さう思ってゐるからだ。 ほかにも、陳腐なデザインの新型ロマンスカーの投入云々、 . . . 本文を読む
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よく見れば名所名物にぎやかに。

2018-03-16 23:12:36 | 浮世見聞記
東京都港区に隣接する品川区上大崎一丁目、住宅街のなかに小さなお寺がいくつも集まる地域の一角で見つけた、昔なつかしいポンプ。 人目があったので試さなかったが、水は出るらしい。 両側に無愛想なビルが続く表通りから一歩奥へ入れば、昔の“生活”を感じられるこんな光景が、東京の中心部と雖も、まだまだ見られるわけだ。 地方から仕事で上京した人が、 「東京は人が住むところではない。仕事をするだけとこ . . . 本文を読む
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我が背子が来ベき宵なりささがにの蜘蛛のふるまひかねてしるしも。

2018-03-15 23:40:55 | 浮世見聞記
渋谷区の表参道で、足許に蜘蛛がゐる事に気が付いた。 浮世は万物のものにて、ここに蜘蛛がゐても一向に構わないことだが、こんな都会のアスファルト上で見るとは、やはり意外な気がする。 これは、私への何かの“暗示”だらうか──? 古来、日本人は蜘蛛を「神の使ひ」と捉へられてきた。 また、地域によって違ひはあるやうだが、朝に見る蜘蛛は縁起が良く、夜に見るのは不吉の予兆、と考へられて . . . 本文を読む
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平等といふ『複製』。

2018-03-13 17:12:05 | 浮世見聞記
渋谷区神宮前のあちこちで、ロケバスを路肩に停めて、ファッションモデルの写真撮影が行れてゐた。 しばらくすれば、これらモデルの複製(クローン)たちが、猫も杓子もの勢ひでこの界隈に繁茂することだらう。 そんなある一角で、女性モデルが“待ち”のあひだ、ひとり誇らしさうな表情をして立ってゐた。 しかし私は、その傍らで信号待ちをしてゐる一般女性のはうに、「つくりもの」としての仕上がりの良さを見 . . . 本文を読む
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ニッポン徘徊──旧下大崎村点景。

2018-03-12 12:31:55 | 浮世見聞記
都営地下鉄浅草線の五反田駅構内で見つけた、“健康増進”階段。 長命の秘訣は日頃のちょっとした心掛けから、といふことだ。 さりながら、 4.7kcalを消費して地上に出て、 職場の不満を肴に吞んだり食べたりで消費分をキレイに消費して、帰りに駅構内で“お返し”して、けっきょく消費したのはお財布の中身だけ── 階段を行く腹回りだけは貫禄充分な人々を眺めてゐると、そんな悲哀を感じてしまふ。 . . . 本文を読む
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わたしの教訓。

2018-03-11 15:07:00 | 浮世見聞記
七年前のこの日の昼下がり、屋外へ出た私は、向こふの交差点の角に建つ雑居ビルが、大きく波打ってゐる様に呆然となった。 地面が、強く揺れてゐるのだ……! 頭のなかは真っ白になり、 私はおのれの無力さを、 思ひ知らされた。 そして我に返ったとき、 私はたった今までのことが、 遠い過去の時間になったことを、 思ひ知らされた。 東北を襲った大津波に言葉を失ふさなか、 . . . 本文を読む
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