迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

嗚呼、一所懸命。

2019-07-30 14:06:52 | 浮世見聞記
横浜市歴史博物館の「“道灌以降”の戦国争乱」展を観る。武略に長け、文雅の才にも富んだ江戸城築城の武将太田道灌──の、子息以降の面々を書状や出土品から追究した企画展。やうするに、いかにも戦國の世らしく主人家来、同族他族が細胞の如く分裂し、飽きもせず土地争ひを展開した、といふ話しである。展示の解説文を読んでも内容がよくアタマに入ってこないその複雑さこそ、欲に駆られた人間の本性──魑魅魍魎そのものなのだ . . . 本文を読む
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これはこれはお早い御登城。

2019-07-29 18:50:06 | 浮世見聞記
『関東甲信も、梅雨明けしたと見ゆる』云々。昨年より三十日遅れで──もっとも昨年は早かったのだが──、やうやく夏本番。熱い夏。茹だる夏。ああ、しんどい季節が……。は、夏が来る前の感覚。いざその季節に飛び込むと、案外さうでもなかったりする。そして、そんな暑さに在る自分を、けっこう楽しんでゐたりする。夏には夏の、楽しみがあるゆゑに。季節に不満がある人は、タダの通年性欲求不満、寒くなればなったで、今度は「 . . . 本文を読む
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てつみちがゆく──E7系の先物買ひ

2019-07-28 18:25:34 | 鐵路
今年三月より上越新幹線でも運行を開始したE7系に、新潟駅から乗ってみる。なんとなく往年の“500系のぞみ”を思はせる容貌ゆゑ、現今では唯一好きな型の新幹線車両だ。が、長野へも北陸へも出掛ける用事はなく、東京駅でただ「カッコええなぁ……」と眺めてゐるばかりだったが、今回は新潟駅からの乗り換へで時間の都合がつきさうだったので、「ほな乗ってみまひょか……」と、いつもの気ままで實行せり。上越新幹線の車両は . . . 本文を読む
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ニッポン徘徊──庄内の夏の夕暮れ来てみれば

2019-07-27 22:28:46 | 浮世見聞記
黒川能の薪能公演「水焔の能」で大曲「道成寺」が掛かるといふので、四年ぶりに山形県鶴岡市へ出掛ける。“五流能”では観世流と寶生流と金春流で観たことがある「道成寺」も、黒川能で観るのは今回が初めて──実際、この「水焔の能」で掛かるのは二十七年ぶりと云ふ。こちらの「道成寺」は、三人の能力が釣鐘を斜めに担ひで橋掛りをヨタヨタと登場するなど萬事が写実的で、シテが登場してからの進行も早い。格式張りすぎて退屈ス . . . 本文を読む
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絶へずたうたりとくとくたてや。

2019-07-26 23:16:50 | 浮世見聞記
町内で土方が土をほじくり返し、けっきょく買ひ手の付かない一戸建てを建て始めてから数ヶ月になる。その影響なのか、新設された排水孔からは梅雨以降、つねに湧き水が流れ出るやうになった。雨がやんで暫くしたらおさまるだらうと思ってゐたが、晴天炎暑の日に至ってもせせらぎを聞かせ続け、つひには路肩が沢のやうになった。土方が地面をほじったがために、温泉が涸れたり、池の水が濁ったりする事例はよく耳にするが、湧き水が . . . 本文を読む
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この日を待っていたぞよ。

2019-07-25 16:12:32 | 浮世見聞記
晴天、熱射、蝉の聲──いかにも“夏”なこの日を待ってゐた。熱中症になってくれと言はんばかりのこの陽気に、打ち勝つ飲み物を試したくて!さう、『あまざけ』。江戸時代の人々は、夏バテの防止に冷やしたあまざけを好んで飲んでゐたと云ふ。昔の人々のありがたい知恵に、いまこそあやからん。缶の底に、米麹がのこる。お汁粉缶の小豆や、具入りスープ缶のそれと、同じ宿命じゃ。されど、今夏はあまざけで暑さを凌 . . . 本文を読む
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夏の活力(ちから)。

2019-07-24 12:32:48 | 浮世見聞記
週末の盆踊りに向けて、着々と準備が進む。 櫓を組み上げ、提灯を吊す専門業者のおじさんたち、それを見守る地元のおじさんたち、ときに軽口を叩き合ひながら、嬉しさうな顔をしてゐる。お祭りは、準備段階から愉しいやうだ。日本人には、ちゃんと日本人のまつりがある。洋楽かぶれが騒音雑音を喚き立てるだけの“フェス”など、ただ煩ひだけ。縄を通した提灯を吊り上げるおじさんたちの傍を、何かに完敗したやうな顔をした月給鳥 . . . 本文を読む
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街はただただ遠く。

2019-07-23 14:25:37 | 浮世見聞記
澁谷の東急百貨店が、2020年に閉館すると云ふ。五島慶太がみずから指揮を執るなど心血を注ひで育て上げた、東急の個性とも言ふべき遺産が、またひとつ消滅する。生活環境が違ふので、夏の大古本市のほかは訪れることのない百貨店ではあるが、澁谷駅といへばそこに東急百貨店があるのが当たり前で育った世代としては、やはり残念な気持ちは拭へない。その街におひて、目に馴染んだものがそこから無くなったとき、その街はもはや . . . 本文を読む
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悲喜劇同時放送!?

2019-07-22 17:27:01 | 浮世見聞記
関西の演芸会社の社長が、涙ぐみながら謝罪会見やっとるっちゅうんで、TVをつけてみた。ああ、やっとる、やっとる。ま、話しの内容なんか、どうでもええ。カイシャっちゅう組織におる人間は、皆こないに天井を仰いでばかりおんねん。それで、ナンボ。それが、組織に雇われとるモンの宿命や。大してオモロうないから、すぐテキトーにチャンネル変えたら、東京のローカル局で「吉本新喜劇」をやっとった。社長が下げたくもないアタ . . . 本文を読む
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親子水入り。

2019-07-21 16:00:45 | 浮世見聞記
江戸時代には五穀豊穣をもたらし、現代には憩ひをもたらしてゐる用水の路にて、鴨の家族に逢ふ。悠々と水をかき分けて歩む親鴨。草を食べながら──文字通り「道草を食う」うち親に置ひて行かれ、慌ててあとを追ひかける子鴨。人間の親子と、まったく同じ。同じ生き物だ、当たり前のこと。人間だけが、いつからエラくなったのだらう。 . . . 本文を読む
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お家へ帰らばやと存じそろ。

2019-07-20 18:25:38 | 浮世見聞記
畳表を敷き藁代わりに畑へ敷いて、夏の陽差しを避ける。藺草の薫りに、畳の部屋で暮らしてゐた古き日の日本を想ふ。帰る場所は、おのれの心のなかといふ、  ごく身近なところに、ちゃんとありまする。 . . . 本文を読む
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梅は飛び櫻は枯るる世の中に松をも凌げ杉の玉風。

2019-07-19 22:49:15 | 浮世見聞記
手頃な価格で歌舞伎らしいものを観たくて、国立劇場の「歌舞伎鑑賞教室」へ出かける。誰が先鞭をつけてしまったものやら、異物の闖入が常態化した木挽町界隈の歌舞伎(しばゐ)を思ふと、「車引」に「棒しばり」といふ典型的な歌舞伎狂言が、かえって新鮮に映るところに、古劇の面目躍如たるものがある。「棒しばり」は大正時代に初演された能狂言ネタの舞踊劇で、このとき次郎冠者と太郎冠者を演じたのが、二人の舞踊の名手であっ . . . 本文を読む
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すべては自分のための投票権。

2019-07-18 23:35:40 | 浮世見聞記
今回は期日前投票で、参院選に“民意”を投じる。ふだん目に映ったことにつひて、勝手気まま言ひたい放題のくせして、國政のことになると途端に無関心はアカンやろ、といふことで、日が暮れてから投票所に出掛ける。仕事帰りと思しき人々で投票所はなかなかの賑わひ、だうせ今回も「過去最低の投票率」とか報道屋は言ふのだらうが、やはり与へられた権利は何事も行使しなければ、人生の損だと私は思ふ。選挙公報を見ると、与党はさ . . . 本文を読む
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“ちょく”秘話。

2019-07-14 19:03:51 | 浮世見聞記
毎年七月のお楽しみ、「南光 南天 ふたり会」を聴きに、横浜にぎわい座へ。師弟による開口一番の「御挨拶」では、いま吉本藝人たちを震撼(?)させてゐるアノ話題で大ひに笑わせ、そして頷かせ、グッとお客を惹きつけるその上手さ!桂南天師は「崇徳院」と「代脈」を、顔藝ぶりを豊かに織り交ぜながら軽快に聴かせ、桂南光師は「素人浄瑠璃」でヨイショに弱い素人の様を面白く魅せ、二席目の「へっ . . . 本文を読む
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耳目を汚さない心得。

2019-07-13 17:11:51 | 浮世見聞記
横浜馬車道の東京藝術大学横浜校舎で、活動辯士による無聲映画の上映会があるとのことで、出かけてみる。四本立てといふ豪華なプログラムのうち、以前に坂本頼光氏の活辯で印象的だった「月世界旅行」が二本目の上映といふことで、それを楽しみにしてゐたが、一本目の日本製短編アニメ後のトークコーナーがあまりにもダラダラと長く続き、すっかり閉口する。當校で映画を教えてゐるといふ映画屋を進行役に登壇した男女二人の活動辯 . . . 本文を読む
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