近所の空き地に生えてゐた古い桜の木が、宅地整備のために入り込んだ土方によって、伐り倒されてしまった。
春になると毎年綺麗な花を立派に咲かせて、それはそれは心和む景色だった。
上の写真は、今年の春に撮った在りし日の姿。
私はここの桜が、大好きだった。
それが、もう見られない。
残念と言ふより、
悔しい。
とても悔しい。
以前にラジオ番組で、
『子どもの頃、空き地にあった大きな木 . . . 本文を読む
師走の夜八時。
権堂太郎兵衛じいさんはほくそ笑みながら、居間の炬燵で晩酌をチビチビとやっていました。
「やっぱり、静かなのが一番じゃ……」
それは、今宵から夜回りを、廃止にさせたからです。
夜回りとは、
「火の用心」
チョンチョン、と拍子木を打って町内を巡回する、あれです。
権堂じいさんは日頃からあの「火の用心」チョンチョンを、町内の静かな夜を掻き乱す、騒音だと感じていました。
あ . . . 本文を読む
都内の舞台にて、「生田」を舞い仕る。
平敦盛と、その遺児との哀別を、数分の舞で表現する。
仕舞とは、一曲の能の“サワリ”のみを、紋付き袴と扇で云々。
しかしわたしは、“サワリ”のみでその一曲の“全て”を表現しなければならないものが、仕舞であると考へる。
わたしはその事実を、水道橋の能楽堂で舞ふ達人たちから、教へられた。
衝撃だった。
それは、
おのれがいかに不勉強であるかを . . . 本文を読む
横浜の日本新聞博物館“ニュースパーク”にて開催中の、「こんな時代があった 報道写真『昭和8年』1933」展を見る。
世界中が戦争に向かって不穏な動きを見せるなか、日本では東海道本線の丹那トンネルが開通し、築地市場が落成―
そして、今上天皇が誕生した。
私の師匠が生まれたのは、その三日前―そう、今日だ。
世界中が軍国色に染まろうとしてゐるなか、庶民はまだまだ平和な生活を送ってゐた様子 . . . 本文を読む
横浜開港資料館の「明治天皇、横濱へ―宮内庁文書が語る地域史―」展を見る。
明治天皇と横浜との関わりを、現存する公文書や古写真を通して紹介した企画展だが、それらのカタイ文書からでは到底窺ひ知れぬ明治天皇の“生の姿”を写した一枚に、わたしは強い興味を覚える。
これは展示図録からの転写だが、説明文によると、明治4年(1871年)11月21日から23日にかけて横須賀の造船所に行幸した天皇一行を、 . . . 本文を読む
みなとみらいの“はまぎんホール”で、「かながわ民俗芸能祭」を観る。
獅子といふより龍に近い“頭(かしら)”が特徴の、愛川町三増の獅子舞―
どこか愛嬌のある獅子と、ヒョットコとの絡みが楽しい小田原市曽我別所の寿獅子舞―
十月下旬に川崎の矢向日枝神社でも見た、品格漂ふ土師流郷神楽―
漁村の潮風が聴こえてくるやうな、横須賀市長井の祭木遣―
今は昔、若い男女の“出会ひ”を取り持った足柄ささら . . . 本文を読む