迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

ばちあたりのしわざ。

2016-12-27 05:58:17 | 浮世見聞記
近所の空き地に生えてゐた古い桜の木が、宅地整備のために入り込んだ土方によって、伐り倒されてしまった。 春になると毎年綺麗な花を立派に咲かせて、それはそれは心和む景色だった。 上の写真は、今年の春に撮った在りし日の姿。 私はここの桜が、大好きだった。 それが、もう見られない。 残念と言ふより、 悔しい。 とても悔しい。 以前にラジオ番組で、 『子どもの頃、空き地にあった大きな木 . . . 本文を読む
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火の用心

2016-12-26 06:22:03 | 戯作
師走の夜八時。 権堂太郎兵衛じいさんはほくそ笑みながら、居間の炬燵で晩酌をチビチビとやっていました。 「やっぱり、静かなのが一番じゃ……」 それは、今宵から夜回りを、廃止にさせたからです。 夜回りとは、 「火の用心」 チョンチョン、と拍子木を打って町内を巡回する、あれです。 権堂じいさんは日頃からあの「火の用心」チョンチョンを、町内の静かな夜を掻き乱す、騒音だと感じていました。 あ . . . 本文を読む
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つきすみわたりてめいめいたる。

2016-12-24 20:54:28 | 浮世見聞記
都内の舞台にて、「生田」を舞い仕る。 平敦盛と、その遺児との哀別を、数分の舞で表現する。 仕舞とは、一曲の能の“サワリ”のみを、紋付き袴と扇で云々。 しかしわたしは、“サワリ”のみでその一曲の“全て”を表現しなければならないものが、仕舞であると考へる。 わたしはその事実を、水道橋の能楽堂で舞ふ達人たちから、教へられた。 衝撃だった。 それは、 おのれがいかに不勉強であるかを . . . 本文を読む
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しんぶんはなにをつたへるか。

2016-12-20 13:04:41 | 浮世見聞記
横浜の日本新聞博物館“ニュースパーク”にて開催中の、「こんな時代があった 報道写真『昭和8年』1933」展を見る。 世界中が戦争に向かって不穏な動きを見せるなか、日本では東海道本線の丹那トンネルが開通し、築地市場が落成― そして、今上天皇が誕生した。 私の師匠が生まれたのは、その三日前―そう、今日だ。 世界中が軍国色に染まろうとしてゐるなか、庶民はまだまだ平和な生活を送ってゐた様子 . . . 本文を読む
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あらひとがみのすがお。

2016-12-17 22:32:19 | 浮世見聞記
横浜開港資料館の「明治天皇、横濱へ―宮内庁文書が語る地域史―」展を見る。 明治天皇と横浜との関わりを、現存する公文書や古写真を通して紹介した企画展だが、それらのカタイ文書からでは到底窺ひ知れぬ明治天皇の“生の姿”を写した一枚に、わたしは強い興味を覚える。 これは展示図録からの転写だが、説明文によると、明治4年(1871年)11月21日から23日にかけて横須賀の造船所に行幸した天皇一行を、 . . . 本文を読む
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こころめぐらすはやしかな。

2016-12-05 09:13:52 | 浮世見聞記
みなとみらいの“はまぎんホール”で、「かながわ民俗芸能祭」を観る。 獅子といふより龍に近い“頭(かしら)”が特徴の、愛川町三増の獅子舞― どこか愛嬌のある獅子と、ヒョットコとの絡みが楽しい小田原市曽我別所の寿獅子舞― 十月下旬に川崎の矢向日枝神社でも見た、品格漂ふ土師流郷神楽― 漁村の潮風が聴こえてくるやうな、横須賀市長井の祭木遣― 今は昔、若い男女の“出会ひ”を取り持った足柄ささら . . . 本文を読む
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