迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

曖昧模糊。

2017-07-23 16:55:25 | 浮世見聞記
用事があって訪れた町の駅前を、夏祭りの神輿が巡行してゐた。 担ぎ棒の上に人が立って気勢を上げるのは、かうした祭りではよく見られる光景だが、男女混合で担ぐその神輿には、色白で細足の若い女性が立ってゐた。 両手の扇子を振り振り、男気取りで気勢を上げてゐたが、膝が内側を向いてゐるあたり、しょせんはオンナだ。 聞いた話しでは、人が神輿の担ぎ棒に立つのは行儀が悪い、とされてゐるらしい。 それはともか . . . 本文を読む
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拾ふ子どもや厄払ひ。

2017-07-14 21:45:02 | 浮世見聞記
東海道は旧戸塚宿の八坂神社に、元禄の頃から伝わるといふ伝統行事「お札まき」を見る。 これは顔を白く塗り、姉さん被りに襷掛けといった女装をした男性たちが、 『サァサこども 天王さんは泣く子がきらひ……』 云々、と渋団扇で拍子をとって囃したあと、ボテ鬘を乗せた音頭取りが掲げる“正一位八坂神社御守護”としたためられた小さなお札を、 渋団扇で煽ぎながら撒く── 一種の厄払ひ行事だ。 . . . 本文を読む
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上方言葉のちから。

2017-07-08 23:17:01 | 浮世見聞記
上方落語が聴きたくて、横浜にぎわい座の「第6回 南光南天ふたり会」に出かける。 開口一番の師弟トークから大いに盛り上がり、久しぶりに爆笑する。 前半は南天師が「替り目」で夫婦愛をじわじわと聴かせ、次に南光師が“夢”の怖さをすら感じさせる「天狗裁き」を口演。 中入りをはさんだ後半は、南天師が「代書」で大いに沸かせる。 これは三代目桂春團治の音源で聴いて好きになった噺だが、春團治のものが基 . . . 本文を読む
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ニッポン徘徊──さどはうしゃうが残すもの。

2017-07-03 20:55:04 | 浮世見聞記
新潟港からカーフェリーに乗り、人生初めて佐渡島へと渡る。 海上なれど「国道350号線」を行くこと二時間あまり、 水平線に目指す島が現るる。 港に降り立つとすぐに路線バスへと乗り換へ、旧三宮村で下車、 地名の起源である順徳上皇第三皇子の御陵を拝し奉る。 そして阿仏坊妙宣寺を訪ね、 日野資朝卿追善として奉納さるる“佐渡宝生”の能を観る。 佐渡島は現在も三十あまりの古い . . . 本文を読む
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わたしは魂を吹き込まれて走るなり。

2017-07-02 17:28:28 | 浮世見聞記
会津若松駅で、偶然SLに出逢ふ。 ナマのSLを目にするのは、大阪で伝統芸能の勉強をしてゐた二十年ほど昔、いまは無くなった京都の梅小路機関区における、SL試乗会以来だ。 “何事も、実物(ほんもの)を目にしなければならぬ──” SLほど、この言葉にぴったり当てはまるものはないと、わたしは考へる。 あの迫力だけは、写真や映像や音響では、決して再現できない。 そして、SLが実は“生き物 . . . 本文を読む
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