正午前、保育施設のヨチヨチ歩きの小さな子どもたちが、保育士さんの手作りであらう、カボチャのお化けのお面にオレンジ色の半透明のマントを着けた、なんとも可愛らしい姿で、近所の道を散歩してゐる光景に出逢った。
それは、久しぶりに“ハロウィン”といふ外来行事の本来の姿を目にしたやうな、なんとも微笑ましく、そして深ひ安堵感を覚へるものだった。
過日の、150年前までは谷だった街における苦々しい暴動 . . . 本文を読む
都内にある将棋愛好家たちの総本山に貼り出されたポスターに、
「二人とも顔つきがソックリだな……」
と思ふ。
そして、溜まり場を絶へ間なく出入りする愛好家たちを見て、彼らまでがポスターの御仁にソックリであることに、足が竦む。
櫛を通していないやうな髪型、
絶対と言って良いくらゐに掛けてゐるメガネの型、
そして顔つきそのものまで──!
これが、将棋愛好家の“標準型”なのだ . . . 本文を読む
求めやすひ値段ゆゑによく買って行く、こしあん団子の“異変”に気が付く。
「団子が、わずかに小さくなってゐる……!」
わずかだが、確実である。
ひどく裏切られたやうな気がした。
税金が上がると物価は決まって便乗値上げ、そして品質は、このやうに貧弱化していく。
浮世の景気が回復などしていないことは、このこしあん団子がちゃんと示してゐる。 . . . 本文を読む
日本郵船歴史博物館の企画展「図案家たちの足跡」を見る。
船会社の宣伝ポスターやパンフレットに描かれた、異國情緒溢れる戦前のニッポン──
そこは、どんなところなのだらう?──
さう想ひを巡らせたとき、その旅はすでに始まってゐる。
旅へ誘ふ最初の扉がポスターやパンフレットだからこそ、図案家たちは知恵を絞る。
そしてそれら優れた作品は、現在(いま)も私たちを、まだ見ぬ . . . 本文を読む
あれっ、と私はラジオに耳をそばだてた。
数十年も昔に、ラジオを通して聴き惚れた“名曲”が、ラジオを通して、再び私の前に現れたのだ。
当時まだ子どもだった私は、その曲の名も知らず、歌手の名も知らず、歌詞もよく聴き取れず、ただ古ひ時代の中国を想はせるやうな旋律に、心を奪はれてゐた。
──聴き取れた歌詞は、わずかに“サイサイ”と、“……ショウジョ”の二ヵ所だけ。
そしていつしか、その曲のことは忘 . . . 本文を読む
旧東海道川崎宿の「東海道かわさき宿交流館」四階にて、江戸の伝統奇術「和妻」と、そのひとつ「水芸」を楽しむ。
第一部で「和妻」、またその対照として「洋妻(マジック)」を披露した三人の若手女性奇術師が、第二部では日本髪に色裃姿も麗しく、二年にわたる修業の成果として、「水芸」を披露する。
扇や羽子板、菖蒲の先から飛び出す水を三人が次々に受け渡すなど、その日舞的要素の濃い鮮やかな身振りはまさに純 . . . 本文を読む
目黒川沿ひにある西五反田の旧旅館の土地を巡り、大手不動産会社が土地転がしにまんまと五十五億圓を騙し盗られた事件、その犯人が逮捕されたと云ふ。
決して土地を賣らないことで業界では有名だったといふ土地所有者の女性が、代理人を名乗る者を通して賣却を申し出てきた時、さすがにかの某不動産会社は疑ったと云ふ。
さりながら、結局のところその目は詐欺を見抜けず、おのれの利益と欲に、眩んだわけである。
詐欺集 . . . 本文を読む
渋谷の宮益坂で、左車線の一部を潰して歩道を仮設する『社会実験』が行はれて
ゐた。
慢性化した路駐の排除も目的のやうだが、一時駐車しなければシゴトにならない納品業者にとっては、迷惑な話しだらう。
また、歩道を広く取って歩行者優先に改良しても、複数人で道幅いっぱいに広がって歩くお構ひなしや、手許ばかりを見て世界を見ない明き盲目ばかりでは、歩きにくひことに変わりはない。
さういふヒトの意識を叩 . . . 本文を読む
十年にわたった術後検査を全て克服し、やっと通院を“卒業”した──
その親族の話しを聞ひて、私は十年といふ時間の長さを、しみじみ思った。
十年前、私は自分の求めるものはここには無いことを見極め、その組織と訣別した。
そして現在、自ら立ち上げた「現代手猿楽」を、人前で舞ふことが叶へられた。
その間、十年。
いろいろなことをやって来たからこそだらうか、「長かったなぁ……」と思ふのである。
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昨日発売の倉木麻衣ニューアルバム『君想ふ~春夏秋冬~』が、一日遅れで宅配便より届く。
届けたのは業界一荷扱ひの乱暴な業者だったが、開封したところ破損していなかったのは、全くの奇跡である!
通常盤にしたのは、ジャケット写真の表情がそのなかで一番気に入ったから。
合計八曲三十三分のこのアルバムは、記念ソングやキャンペーンソング、エンディングテーマな . . . 本文を読む
池袋のPARCOに、期間限定で倉木麻衣のリミテッドショップが設けられてゐるとのことで、覗きに出かけてみる。
本館7階のイベントスペースに、ブースのやうな佇まひでそれはあったが、「自分ツッコミくまCafe」の真裏にあって目立たず、明らかに割を食ってゐる。
お客もおらず、接客係も奥に引っ込んだショップには、本人監修のトートバッグやTシャツが売られてゐたが、あまり投資するほどのシロモノとは映らず。
. . . 本文を読む
懐かしさに押されて、東急8000系の模型を、中古品で手に入れる。
現在は伊豆急行線に転勤してゐる8000系だが、私の幼少期の記憶にある東横線と云へば、この車輌である。
つまり、私にとっては“元祖東横線”であり、目蒲線や池上線にはなゐ高級さを感じさせるものだった。
8000系に、みなとみらい線直通など似合わない。
やはり、横浜~高島町~桜木町──あの高架線こそ . . . 本文を読む
横浜開港資料館にて、「戊辰の横浜 開港都市の明治元年」展を見る。
開港後は“海の玄関口”として発展するなど、時代の流れに上手く順応した橫濱。
かたや、旧来の社会構造から抜けきれず、新しい権力に抗して多くの犠牲者を出した東北諸藩──
その戦争による官軍負傷者を受け入るための病院が、はじめて橫濱に設けられた。
治療に当たった医師は云ふ。
「ほとんどが、火薬類による負傷だ。もはや、剣(刀)の時 . . . 本文を読む
横浜能楽堂にて、企画公演『風雅と無常──修羅能の世界』より、第2回「修羅能と狂言」を観る。
修羅能、つまり源平合戦の武将を描ひた能では、當人が亡霊となって現れ、その時の様子を再現して見せるのがほぼ定番だが、狂言におゐては後世の庶民の目線から、洒落といふ装ひを以て描かれる。
初めの語「那須」は本来、能「八島」で小書(特殊演出)が付ひた時に演じられる間狂言で、それだけに格調の高さが求められ . . . 本文を読む
ニッポン放送の朝の“聲”だった高嶋ひでたけさんが、半年ぶりにラジオに帰って来た。
今日から来年四月までの毎週土曜日、18:00からニッポン放送で始まった新番組、『高嶋ひでたけと里崎智也 サタデーバッテリートーク』を、ワクワクしながら聴く。
高嶋ひでたけさんの第一聲を聞ひた途端、
「ああ、“ラジオの聲”だ……」
とジンときて、そして顔が綻ぶ。
元プロ野球選手の里崎智也氏との新コンビも違和 . . . 本文を読む