迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

弱肉剛食。

2023-01-31 19:55:00 | 浮世見聞記
朝のゴミ置き場で、袋の中身を狙ふ烏。ヒトと自転車が通るのを氣にしつつ、やがて“獲物”を嘴に挟んで悠然と飛び立って行った。そんな様子を窺ってゐると、やることがヒトと大差ない氣がする。しょせん同じ生き物。ヒトばかりが、要らぬ苦勞を背負ひ込んで、アクセクしてゐるのサ。 . . . 本文を読む
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門出暖路。

2023-01-30 19:45:00 | 浮世見聞記
陽が昇るにつれて寒氣も緩み、いくらか過ごしやすくなった陽氣の下、世田谷區代澤三丁目の住宅街で、そこだけが古風に佇む赤門に出逢ふ。江戸時代にこの地で代々名主をつとめた旧家の名殘り云々。かういふ歴史が現代風景の町なかにひょっこりと現れる風情は、かつての旧街道探訪を思ひ起こさせる。旅は遠くへ行くことばかりではない。が、やはり遠くを旅したい。ときには時間を逆に進んで── . . . 本文を読む
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「好!」

2023-01-29 22:04:00 | 浮世見聞記
久しぶりに橫濱へ出て、春節で賑はふ中華街の“春節娯楽表演”より、京劇「貴妃酔酒」の抜粋實演を觀る。演者は女性の京劇役者だが、「貴妃酔酒」と云ふと私などは名女形梅蘭芳の印象が強いため、どうも女優の女性役は當り前すぎて魅力を感じなかったりする。それでも煌びやかな扮装を充分に樂しんで會場の山下町公園を出、實際のところ何のために集まってきたのかよく分からない群衆の間を抜けて、中華街をあとにする。浮世では休 . . . 本文を読む
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あなたもご近所サマ……?

2023-01-29 09:37:00 | 浮世見聞記
ラジオ放送で、大藏流山本家の狂言を聴く。「節分」はその名もズバリな時候ネタ、節分に撒かれた豆を拾って食べやうと、蓬莱の島から日本へやって来た鬼は、一人で留守番をしてゐる人妻に懸想するが、思はせぶりに振る舞ふ人妻に一杯食はされて結局追ひ拂はれる、そんな鬼の人間臭さが樂しい戯画的狂言。 さて、本當の“鬼”とは、どちらで──?「附子」は人間の禁じられた事こそやってみたくなる心理、そして狡猾 . . . 本文を読む
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わたしの冩鑑。

2023-01-28 09:55:00 | 浮世見聞記
電車内の座席で、独りのオンナが頻りに自分のカオを描いてゐた。並な面相を、ああやってのべつ手直しをしてゐなくてはならぬほど、劣化が早いのだらう。そのオンナがその並な面相を真剣に映してゐる小鏡の表面は、なにやらベタベタとした汚れで模様になってゐた。──なるほど、公衆の目も氣にならぬわけだ。 . . . 本文を読む
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尾上菊五郎、脊柱管狭窄症で3月休演代表作「身替座禅」の代役は尾上松緑に

2023-01-27 22:41:00 | 浮世見聞記
dmenuニュースよりhttp://topics.smt.docomo.ne.jp/article/hochi/entertainment/hochi-20230127-OHT1T51161?fm=dつひ二日前に國立劇場で「遠山の金さん」を樂しんだばかりなだけに、このたび背骨の病氣を發症したとの報に驚く。先日の舞臺でも、容姿と聲はかつてのままに若々しかったが、足許はかなり弱ってゐる様子で、八十路と . . . 本文を読む
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おタカラの値打ち。

2023-01-27 11:04:00 | 浮世見聞記
昭和三十年(1955年)の今日、我が國初めての人間國寶選出が行なはれ──認定は2月15日──、歌舞伎からは七代目坂東三津五郎がその榮譽に浴する云々。(「道行旅路花嫁」奴)それは“歌舞伎役者”としてではなく、歌舞伎舞踊の“踊り手”としての選出であったところに、七代目三津五郎の役者としての運命を感じる。映画で遺ってゐる晩年の「傀儡師」や「喜撰」を觀たことがあるが、私の鑑賞眼ではその良さと云ふものが今一 . . . 本文を読む
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寒防繁忙。

2023-01-26 19:00:00 | 浮世見聞記
朝は昨日のいらない余韻のマイナス氣温、前を向いて生きるには邪魔な過去。 ワンちゃんはそれでも元氣にワンワン、ワン。あなたは寒くないの? と訊いて返事はワンワン、ワン。日が高くなると氣温も少しづつ上り、やうやく人心地がつく。今日は昼過ぎから暇になる。さあ、それからが忙しいゾ。 . . . 本文を読む
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厳寒の憂さを散らせし櫻かな。

2023-01-25 20:01:00 | 浮世見聞記
地獄寒波により東京の朝の氣温がマイナスと云ふ極寒の一日、國立劇場の初春芝居「通し狂言 遠山桜天保日記」を觀る。國立劇場で歌舞伎見物と云ふと、近年は前進座の摩訶不思議なそればかりゆゑ、このあたりで一度ちゃんと本業屋のものを觀ておきたいナァ、と思ってゐたところへ、年齢を重ねるごとに化粧(かお)が雑になっていく尾上菊五郎(おとはや)の、珍しく男前にキメた遠山金四郎役の宣傳冩真を目にして、ヨシこれを目當て . . . 本文を読む
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花の香言葉。

2023-01-24 19:31:00 | 浮世見聞記
川崎浮世繪ギャラリーにて、「楊洲周延」展を觀る。終焉近き江戸時代に武士の家に生まれ、明治“御一新”の世に江戸以来の手法に新風を取り入れた浮世繪師として名を成した楊洲周延(やうしう ちかのぶ)の作品展は、十年以上前に原宿の太田記念美術館で觀て以来だと思ふ。今回展示の連作美人画「眞美人」は大正時代まで賣られ續けたと云ふ人氣作なれど、(※案内チラシより)しょせんは定型化した江戸美人画の延長にすぎず、洋装 . . . 本文を読む
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東電、3割値上げを申請平均家庭で月2611円負担増える見通し

2023-01-23 19:52:00 | 浮世見聞記
dmenuニュースよりhttp://topics.smt.docomo.ne.jp/article/asahi/business/ASR1R4CYRR1RUTFK00B?fm=d認可されれば、六月以降は一家庭で月2,611圓の便乗値上げ──オイふざけるな……! と思はず口から洩れる。マスクひとつ、そば粉ひとつ、エネルギー原料ひとつ、なにも自力で賄へない完全なる他力本願國家。いよいよ國 . . . 本文を読む
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貴景勝が優勝、13場所ぶり3度目大関以上は4場所ぶり初場所

2023-01-22 22:42:00 | 浮世見聞記
dmenuニュースよりhttp://topics.smt.docomo.ne.jp/article/mainichi/sports/mainichi-20230122k0000m050011000c?fm=d中繼を觀られたり觀られなかったりの大相撲初場所、千穐樂は觀られず、ニュースで大関貴景勝の優勝を知る。人災疫病禍元年の2020年以来三年ぶり、十三場所ぶり三度目の優勝と云ふ、三尽 . . . 本文を読む
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生ける亡靈。

2023-01-22 10:07:00 | 浮世見聞記
ラジオ放送で、喜多流の「船辨慶」を聴く。前場は靜御前と源義經の別れ、後場は大荒れの大物浦沖に現れた平知盛の亡靈に對し、勇敢に應戰する義經と必死に祈る武藏坊辨慶──小ムズカシイ予備知識の要らない觀たままを樂しめる曲であり、演者としても前シテは女性で後シテは平家の荒くれた亡靈と変化に富んでやり甲斐があるのか、現在では通年よく上演される、いささかウンザリな人氣曲。だが、靜御前との別離(わかれ)と平知盛の . . . 本文を読む
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晴雪騒舞。

2023-01-21 21:54:00 | 浮世見聞記
都心ビル群の谷間の公園で、降雪地から運んだ雪を敷いて何かの催しが行はれてゐた。親に連れられた幼児たちがすっかり雪用の衣裳をまとってはしゃいでゐる様は、そこだけを切り取って眺めてゐるぶんには微笑ましいが、實際に東京都心でこれだけの降雪があったなら、たちまちすべての機能が麻痺して大騒ぎになるだらう、と氣になってしまふ。来週には地獄寒波の襲来が予想され、日本海側の北國はまた深雪の試練に見舞はれるかもしれ . . . 本文を読む
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大寒暖花。

2023-01-20 22:44:00 | 浮世見聞記
暦では「大寒」なれど、日中は暖かくて過ごしやすし。遠くに出かけてゐても氣持ちは晴れやかで、そこでささやかに花を付けてゐた梅も、愛おしく映る。しかし来週には地獄寒波の襲来が予想云々、かういふ不安定はニンゲンのシゴトだけにしてほしいものだ。今日抽選の初夢宝くじ、末等の200圓が當る。大して嬉しくもないと思ふ。まさか本氣で一等前後賞を狙ってゐたわけではないが、なんか気に食はない。この亂痴氣な物価高騰のご . . . 本文を読む
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