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迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

自動人間機。

2019-01-30 17:53:36 | 浮世見聞記
自販機でペットボトル飲料を買おうとしたら、釣り銭だけ出て来て、肝心の商品(モノ)が出て来ない。

モーターの回転する音は聞こへるから、なかで詰まったやうだ。

すぐに、フリーダイヤルのコールセンターへ電話をかけた。

すると、おそろしくマニュアル通りの、無表情な調子で喋る女性が現れた。

聲に全く抑揚がない、いはゆる一本調子で、なんだか自動音聲を聞いてゐるやうだ。

それが肉聲であるだけに、ひどく奇異に聞こへた。

おそらく、かういふ時は怒り心頭で電話をかけてくる者ばかりなので、あちらも鎧をまとって身構へてゐるのだらう。

私はこんなことで怒ってなどいないので、ごく普通の調子で状況を説明したが、向かふはあくまでも、自動音聲な受け応へをする。

決してマニュアル通りを崩さないそんな様子に、私はだんだん可笑しくなってきた。

そして、哀れになってきた。


だいぶ気持ちが病んでゐるな──



自販機なら、そこでなくても、ほかにいくらでもある。

また代金の百数十圓は、後日必ず返って来るのである。

電話口で怒り狂ふ必要はない。



ふだん怒れない輩が、平身低頭するとわかっている相手に對して怒りをぶつけて、憂さを晴らす──

さういふ確信犯は、意外な反撃に遭ふと、途端に静かになったりする。

または火がつき過ぎて引っ込みがつかなくなり、「警察を呼んでやる!」と、第三者に丸投げして、おのれはその背中に隠れやうとする。



ちゃんと戻って来る小銭のことで、いちいち腹を立てちゃいられない──



それでは大きなものを、摑み損ねてしまふのだ。
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