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迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

一年と二ヶ月の不覚。

2018-07-18 18:38:18 | 浮世見聞記
岐阜県多治見市で気温が40°Cに達し、都内のミストもけっきょく気休めにすぎない今日、劇団四季創立者の一人だった浅利慶太氏が亡くなったことを知る。

日本人によるミュージカルといふものが好きではない私は、故人が二代目市川左團次の縁者であり、ゆゑに生前は劇団員たちに二代目左團次論をよく語って聴かせてゐたらしいことを、元劇団員といふ人から聞いたことがあるほかは、知識も関心もない。


それより驚き、かつ不覚だったのは、同じく劇団創立者の一人であり、また私の好きな俳優の一人でもあった日下武史さんが、昨年五月にお亡くなりになってゐたことを、今回の訃報を通して初めて知ったことだ。

日下武史さんを初めて観たのは、映画「天河伝説殺人事件」の“水上和憲”役。



能楽名門の宗家役を、貫禄と繊細さとを兼ね備へた演技で魅せ、当時未成年の私の心へ深く印象づけられたのだった。

浜松町の専用劇場で上演された「鹿鳴館」では、他の出演者たちが三島由紀夫の書ひた日本語に明らかに太刀打ち出来ず撃沈してゐるなか、影山伯爵役で見事な日本語(セリフ)を聴かせて「さすがだ……!」と唸らせ、「エクウス」でも最高のセリフ術で際どい場面を救ふなど、ベテラン俳優の何たるかをはっきりと示してくれた名優だった。

ほかには黒澤明監督の「まあだだよ」の主治医役と観た作品の数は少ないものの、それでも一つ一つに強い印象をのこしておられた──にもかかわらず、ご逝去を知らなかったとは不覚の至りだ。



遅ればせながら、


合掌。
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