「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

    「偽」の霜降り馬刺 ”けとばし屋”の櫻鍋

2007-12-16 06:13:38 | Weblog
今年の漢字は「偽」だというが、ここへ来てまたぞろ「偽」の字にふさわしい
"霜降り馬刺”が登場,公正取引委員会から「景品表示法」違反(優良誤認)
として大手居酒屋が摘発された。”国産霜降り”として客に出していたが、実
際は輸入の赤身肉に脂を注入し"霜降り肉”にみせかけて売っていた。

馬肉なんて昔は、特定の地方以外そんなに食べたものではない。東京では
吉原遊郭の周囲の”けとばし屋”ぐらいだった。”けとばし屋”では遊郭に登
楼する客を"元気づける”ために櫻鍋を出していた。櫻鍋は馬肉の色が桜色
しているのが由来だが、すき焼きの味噌仕立てのようなものだ。馬刺しもあっ
たが、あくまでゲテモノであった。"霜降り肉”は牛肉からきた名称だが、最近
の名前。今でも浅草の馬肉料理店の味の評価は☆☆。

その昔、馬肉は”朝鮮征伐”の文禄,慶長の役の際、加藤清正軍が食の補給
を絶たれ軍馬を食べたのが始まり。そのためか清正の領地だった熊本が今で
も馬肉をよく食べる。そのほか、かって馬産地だった信州、会津、青森の上北
地方でも盛んだ。50数年前、学校を出て初の赴任地の長野で僕ははじめて櫻
鍋を食べたが、その味は今でも忘れられない。

冷凍技術の発達した今、日本で出回っている馬肉はほとんどが輸入肉、それ  
もカナダ産だそうだ。”霜降り肉”なんて高いカネを出して珍重するような代物
ではない。馬肉はやはり"けとばし屋”の櫻鍋にかぎる。