「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

    「日の丸油田」からの撤退と「アラビア太郎」

2007-12-29 06:30:29 | Weblog
”良薬は口に苦し”-昔はお医者さんから貰う粉薬は苦く、これをオブラート
という薄い膜状の紙に包んで飲んだものだ。このオブラートの発明者が「ア
ラビア太郎」といわれた、あの昭和の大企業家、故山下太郎氏だと知り驚い
たことがあった。

その山下太郎が創設したアラビア石油が、かって「日の丸油田」の象徴だっ
たカフジ油田から今年限りで撤退する。半世紀前、わが国初の自主開発油
田として”国威”を発揚、国民が誇りにした当時を知る者としては寂しい限りだ。

カフジ油田はサウジアラビアとクウエート両国が権益を持つ海上油田で、アラビ
ア石油が昭和32年(1957年)に権益を取得、36年から日本に向けて原油を積
み出し、ピーク時は一日当り30万バレルの生産があった。僕は37年12月、操
業開始時の現地を訪れたが、灼熱の砂漠の中で、日本人技術者がカマボコ型
の粗末な宿舎で頑張っていた姿が今も忘れられない。

あれから半世紀を経て、平成12年にサウジアラビアとの権益更新交渉が不調
に終わり、15年にはクウエートの権益も失効、そして今回の技術者派遣契約も
期限切れとなり、完全に撤退することになった。

50年前、中東の石油は欧米系の石油会社の独占であった。山下太郎氏は、そ
の中へ”殴り込み”をかけるように参入した。石油事情には素人だが、現在の原
油高の実情をみると、改めて山下氏の先見性の高さと気概に感心する。