「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

         69歳で大學を卒業した友人

2008-05-12 05:16:34 | Weblog
昨日、旧制中学時代の友人Y君を見舞った。彼はここ数年脊髄の難病で自宅療養を
している。彼は僕の尊敬する友人の一人だ。何よりも人生に対して前向きで努力家。
69歳で大學の法学部国際比較法学科を卒業した。69歳といえば普通は第一線を卒
業して孫の面倒をみているご隠居さんの歳だ。

僕らが中学を卒業した昭和23年は、まだ街に焼跡が残り、混乱の時代だった。食べ
てゆくのが精一杯で、僕らの仲間でも昼間学校に来て、夜は進駐軍のキャンプで働
いたり、休みに闇市で”雑炊売り”の手伝いなどしていた。Y君もその一人で、家の近
くの商店の御用聞きをしていたそうだ。とても家庭の事情で進学などできず、御用聞
きで知り合った学校の先輩のつてで、あるラテンバンドの楽器運びに就職した。戦後
の20年代から30年代にかけてラテン音楽が盛んで、彼はそこでドラムを習い、NHKや
国際劇場の舞台にも出演した。

昭和の終わりごろ彼は、その晴舞台から降りて別世界にとびこんだ。彼はまず大検
(大學入試検定試験)を目指して勉強、これに合格すると今度は小型飛行機操縦免
許をとって会社を設立、インストラクターになった。

その後、彼は一念発起して予備校に通い65歳で大學に合格した訳だが、やはり無理
がたたったのか、脊髄の難病に冒され、現在奥さんの手厚い看病で自宅療養している。
身体障害者2級の認定を受けているから、ほとんど身体も動かせない。でも彼はいつも
人生に対して前向きである。リハビリにも一生懸命だ、一日も早い回復を願っている。