「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

     戦友の”遺骨を抱いて" ある女性舞踊家の死

2009-05-12 05:47:59 | Weblog
現代舞踊家の先駆け、宮操子さんが亡くなられた。102歳という天寿を全うされての
死である。僕は10年ほど前、九段会館の第25軍戦友会で彼女にお会いし著書の「陸
軍省派遣極秘従軍舞踊団」(星雲社平成7年)を頂戴した。当時でも90歳を越える高齢
だったが、舞踊で鍛えられた小柄の身体はかくしゃくとされていた。

「従軍舞踊団」のご本は、彼女が戦争中、戦地の日本軍将兵慰問のため中国大陸から
南方地域を慰問された時の体験記だが、昭和17年7月、昭南(シンガポール)慰問の際
には乗船した船が魚雷攻撃を受けそうになり九死に一生をえた。その昭南では、上陸
一番のりの兵士の血染めの兵士の軍服と日の丸で即席の「遺骨を抱いて」の踊りを披露
した。

        ♯ 遺骨を抱いて(睦原実作詞 松本孝三作曲)
         一番のりをやるんだと 力んで死んだ戦友の
         遺骨を抱いて今はいる シンガポールの街の朝

宮操子さんは本の中でこう書いている。「戦後50年たった今、戦争を体験したこともない
人たちが、いとも簡単に答えを出そうとしている。”あれは侵略戦争だった”"日本は謝罪
しなければならない"云々。あの時代に生まれもしていなかった人間がなぜそんなことを
言い切れるのか私は疑問に思う。あなたたちは戦場で命がけで戦った兵隊たちの苦労を
知っているのか問いただしたくなる」
宮操子さんは明治生まれ最後の大和撫子の一人であろう。