「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

            泰緬鉄道の枕木

2009-05-23 05:43:26 | Weblog
靖国神社境内にある軍事博物館「遊就館」に泰緬鉄道で使用した蒸気機関車、C-56
が展示されている。映画「戦場にかける橋」で連合軍捕虜や地元住民を酷使したという
あの鉄道の機関車だ。少し無神経ではないかという批判もある。ところが、先日NHKラ
ジオ”深夜便”「こころの時代」を聞いていたら、かっての英国軍捕虜の生き残りの方が
靖国神社を参拝したあと遊就館に同時展示されている泰緬鉄道の枕木まで観たという
話を聞いた。"枕木一本捕虜千人”-と酷使の象徴とまでいわれるものだ。

番組「こころの時代」で話をされたのは、山梨学院大学教授、小菅信子さんで「戦争和解」
に取り組み、これを研究テーマにされている戦争を知らない昭和30年代生まれの方だ。
教授の話によると、留学先の英国の大学の町、ケンブリッジに留学中、たまたまさきの
戦争中にこの町の部隊が日本軍の捕虜となり、泰緬鉄道工事現場で使役に従事して多
数の犠牲者が出て、これが原因で反日住民が多いのを知った。そして、ある催しに参
加したのがきっかけで教授は「戦争和解」運動に取り組むようになった。

僕はかって泰緬鉄道建設に従事した日本の鉄道連隊の方々から当時の話を聞く機会が
あり、当時のご苦労をよく理解している。戦争という状況下では犠牲者が出るのもやむを
えない。だが犠牲者側の心情を考えれば、靖国神社の境内に機関車を展示するのは、ど
んなものかという気持ちもあった。

小菅教授は2日間の番組の結論として「戦争和解」にはきちんとした「歴史認識」が必要
だ、といわれていた。僕も同感である。感情に走れば、他人を赦せないし和解は出来ない。
靖国神社を参拝、泰緬鉄道の枕木を直視できた元捕虜の方は、ごく一部の英国人であろう
が、歴史を整理してお互いの立場を理解できれば、和解も可能な一例だ。