「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

        旧ソ連抑留者問題の幕引き

2010-05-13 05:51:28 | Weblog
政府と連立三党が旧ソ連やモンゴルに戦後抑留され、強制労働させられた元日本軍
関係者に対して特別給付金を支給する法案を今国会に提出するようだ。対象者は生存
している約8万人の方々で、抑留期間に応じて25万円から150万円が支給される。
戦後65年たって、やっと苦労の一端が報われるわけだが、考えさせられる問題もある。

先日NHKテレビの昼の番組に珍しく細川護煕・元総理が出演していた。今、国会博物
館で開催中の「細川家の至宝展」を扱ったNHK番組「日曜美術館」に関連した出演であ
ったが、番組の中で、戦後旧ソ連の抑留所で病死された細川氏の母方の大伯父、近衛
文隆氏の抑留カードを持参されていた。この抑留カードは細川氏が総理時代、訪ソした
さい、当時のエリチェンコ大統領から直接返還されたものだという。

戦後のドサクサにまぎれてソ連は旧日本軍関係者をシベリアなどに連行し、強制労働さ
せているが、その数は58万人といわれ、うち5万人以上が近衛文隆氏のように病死され
ている。これに対してソ連からは、一切の謝罪はないし補償もない。日本政府も"法的な
補償責任はない”としている。今回贈られる特別給付金は、独立法人「平和祈念事業」の
解散に伴う基金からだという。言ってみれば、この給付によって抑留者問題を幕引きにし
ようという見方もある。

近衛文隆氏は昭和31年4月病死している。同じ年の12月、日ソ共同宣言が調印されて
いる。日本側の代表は鳩山総理の祖父、一郎氏であった。あれから54年の歳月が経過
したが、棚上げされた北方領土問題は、いっこうに解決されない。抑留者への補償問題
は当時話し合われたのかどうか。多分話し合われなかったのではないか。