「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

”祖父の軍歴”と軍服のコスプレ

2014-05-12 05:55:44 | Weblog
”祖父の軍歴を知りたい”という問い合わせが最近、厚労省に増えているという。産経新聞の報道によると平成25年は前年度にくらべて約3割増だとのこと。この背景の一つとして、祖父の海軍航空隊時代を描いた、作家百田尚樹のベストセラー「永遠の0」の影響があるみたいだ。インドネシアの軍政の研究家のぼくの所にも、見知らぬ方から同じような問い合わせがあり、知っている限りのことはご返事している。

戦後からでも69年経ち、先の戦争に従軍した世代のほとんどが世を去り、成長した孫の世代が改めて祖父の戦争中の足跡をたどりたくなったのだろう。しかし、戦後のおかしな現象で、意外と子の世代には戦争が伝承されていない。従軍世代は、自分の苦しかった戦争体験を子に話したくなかったのであろう。まして、戦病死したり、戦後”戦犯”として刑死した遺族はそうである。インドネシア関係の友人の話では、マカッサル法廷で刑死された方の遺族は友人に問合せするまで、自分の祖父は戦死とばかり思っていたという。

新宿住友ビル48階に「平和祈念資料館」がある。先の戦争で戦後シベリアへ強制抑留され、約5万人の方がなくなっているがその悲惨な体験を中心に戦争期の資料を収集し展示している。僕も過去、何冊か戦争に関する図書を寄贈したことがあるが、都会の中心に、このような戦争史料館があり、無料で見学できることは大変意義があることだ。しかし、ネットのHPを見て”軍服を着てコスプレができる?”とあった。僕ら戦争体験世代は、旧軍隊のカーキ色の軍服に嫌悪感をもっている者が多い。「鞍馬天狗」の作家、大佛次郎は著書の中で”カーキ色には本能的に嫌悪と憎しみを感じる”と書いている。

僅か70年前の戦争が風化し始めてきている時代に、孫の世代が祖父の戦争体験に関心を持たれ、改めて戦争を総括されるのは賛成である。しかし、軍服のコスプレ体験には反対である。いまだに戦地には、収集されない遺骨が放置されている。朽ちた軍服の英霊に対する冒涜である。