ひまわり先生のちいさな玉手箱

著書「ひまわり先生の幸せの貯金箱〜子どもたち生まれてきてくれてありがとう」

ねずみ女房

2015年08月04日 | オススメです
ゴッデン作の絵本「ねずみ女房」オススメです。ネズミの物語なんですが、
人間の姿が重なる童話です。

「あるところに、一ぴきの小さな女房ねずみがいて、そのねずみは、他のねずみと違いました。」

平凡な毎日を送るねずみ女房。

「このねずみは、他のめすねずみのすることを、みな、しました。

やがて産みたいと思っている赤んぼうたちのための巣も作りました。

だんなさんや自分の食べる食べ物のかけらも集めました。

『これ以上、何がほしいというんだな?』と、おすねずみは聞きました。

めすねずみには、何がほしいのかわかりませんでした。
でも、まだ、今もっていない、何かが、ほしかったのです。」

ある日、ねずみの住む家に、一羽の捕まえらたハトが連れてこられました。

家の主人は、そのハトを居間の棚の上の金の鳥かごに入れました。

ハトは、エサを食べませんでした。

ねずみは豆ほしさに鳥かごのところにやってきます。

やがて、ねずみ女房は、
ハトから、自分の知らない広い外の世界の話を聞くようになります。

毎日ハトは、ねずみ女房に、窓の外の世界の話を、自分が空を飛んでいたとき見たように話して聞かせます。

ねずみ女房は、遠くを見るような目つきをしていました。

そしてある日、ねずみは、巣にいっぱいになるほどの子どもを産みました。

ねずみ女房は、赤んぼうたちをとてもかわいがり、幾日かの間、他のことなど何一つ考えられませんでした。

しばらくして、ねずみ女房は
再びハトに会いに、窓じきいに上っていきました。

ハトの、なんと変わり果てていたことでしょう。

ハトは、ねずみ女房がたずねて行かなかった間、ほとんど何も食べていなかったのです。

「おまえさん、どぅこかへ、とぅこかへ、どぅこかへ行ってしまったかと思ったよ。」
ハトが言います。

ねずみ女房のヒゲの先には、ハトのために流した小さな涙がとまっています。
ねずみ女房が家に帰ると、おすねずみはねずみ女房の耳にかみつきます。

ねずみ女房は、ハトのことを考えると眠れませんでした。

そして、とうとうある晩、こっそりと鳥かごのある場所へ行くと、
ねずみ女房は、渾身の力を込めて、鳥かごの留め金をはずし、ハトを外に逃がします。

ねずみ女房は思います。
「ああ、あれが、飛ぶということなんだわ。」

もう誰も、丘のことや、麦畑のことや、雲のことを話してくれるものはなくなりました。

ねずみ女房の目に涙が宿ります。

ねずみ女房は涙をまぶたで叩き落とし、また外を見ました。

とうとう、ねずみ女房は、外の世界を見ました。

「わたしにはそれほど不思議なものじゃない。
だって、わたし、見たんだもの。

ハトに話してもらわなくても、わたし、自分で見たんだもの。

わたし、自分の力で見ることができるんだわ。」

ねずみは、そう言って、ゆっくり、誇らしい気持ちで寝床に戻りました。

ねずみは、老いてその子どもや孫、ひ孫にひいひい孫に敬われ、大事にされました。

おばあさんねずみは、見かけはひいひい孫たちと同じでした。
でも、どこか、ちょっと変わっていました。

「他のねずみたちの知らないことを知っているからだと、わたし(作者)は思います。」

ねずみ女房は、家事、目の前のしなくてはならないことをこなし、時間をとられながらも、
心は窓の外に向かって開いている。


決して卑屈にならず、
自分という存在は、誰のものでもなく自分のものであることを忘れないねずみ女房。

童話ですが、このストーリーを丁寧に読むと

外の世界に心を開いていくねずみ女房の姿を通して
私たちに色んなことを感じ、考えさせてくれます。


絵本「ねずみ女房」 福音館書店 
ルーマー・ゴッデン 作
W・P・デュボア 画
石井桃子 訳




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