◎男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け(1976年 日本 109分)
監督/山田洋次 音楽/山本直純
出演/渥美清 倍賞千恵子 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 宇野重吉 太地喜和子
◎第17作 1976年7月24日
そうか、ジョーズがヒットした頃か。
まさか、寅の夢の中でみんな食われちゃうとはおもわなかった。ていうか、まったく覚えてなかった。嫌だね、ほんと、この物覚えの悪さは。
でも、この『泣くな嘆くな影法師』の歌詞は知らないな。何番の歌詞なんだろう。
さらに、そうか、満男も小学校に入学か。だから、さくらのショットじゃなくてとらやから始まるのか。
しかし、最初から帰ってきた寅が「懐が旅先だから」と秀逸な洒落を飛ばしたあと「まさか、500円てわけにも行かないか」という展開はいいとして、そうね、入学式で寅のせいでいじめられるさくらの話は身につまされるな。
竜造の「みんなが嗤うっていうことはだよ、今までおまえが嗤われるようなことをしてきたからなんだよ。そこんとこ、ようく考えてみろ」という台詞をいわせてしまう寅と、それが図星だと知っていながらも「おれがなにをしたっていうんだよ」と開きなおり飛び出す寅に対してまた慰め、機嫌をとってしまう周りの甘やかしがこういう寅の生き方をつくっちゃったともいえるわけで、このあたり、よくわかる日本人の家庭なだけに悲しいくらい苦しいね。
寅と態度と考え方には腹が立つけど、でも、それだけ、山田洋次が上手いということなんだよね。
龍野か~。ええところだな~。あら、市長室に三木露風の『赤とんぼ』が大きく貼られてんのね。ま、宇野重吉演ずる画家の対比と捉えればいいわけだけど、かなり皮肉な諷刺に見えるんだよね。いいのかしら。
あ~けど『夕焼け小焼け』の流れるタイミングはうまいなあ。つまりは、宇野重吉が露風の見立てなのね。
岡田嘉子の品の良さが大地喜和子との対比で余計に際立つけど、やっぱり、榊原るみも好いなあ。
あれ?大地喜和子がとらやに来たとき覗きに来た工員たちに『てめえら、さっさと工場行って働け。職工っ』といったあと、一瞬だけストップモーションになるんだけど、なんか妙な感じがするのは気のせいかしら?
太地喜和子と岡田嘉子に、なにもかも掬い取られた観のある回だね。
ていうか、寅、もてるじゃん。
200万をだまし取られたことに怒って逮捕されるのを覚悟して談判におよぼうとする寅も見せるし、それに感涙する太地喜和子はほぼまちがいなく寅にほだされたはずなんだけど、ところが、なんでか知らないままラストを迎える。両想いのまま終わるんか、この回は。
ちなみに、宇野重吉と岡田嘉子の初恋の人と添い遂げられなかった話はまあよくある挿話ながら、もごもごいっててよく台詞のわからない宇野重吉とあんまり上手くない頃に親子共演をはたした寺尾聡はともかく、岡田嘉子は綺麗だった。
いや、そんなことより『男はつらいよ 奮闘篇』でヒロインを演じた榊原るみが、なんで、お手伝いさんになってるんだよ!?