◎ル・アーヴルの靴みがき(2011年 フィンランド、フランス、ドイツ 93分)
原題 Le Havre
製作・監督・脚本 アキ・カウリスマキ
出演 アンドレ・ウィルム、カティ・オウティネン、ジャン=ピエール・ダルッサン
◎マルセル、ふたたび
まあ、主人公の過去が作家であったということから類推すると『ラヴィ・ド・ボエーム』の後日譚になるのだろうな、とおもっちゃうんだけど、どうでもいいことかもしれない。だって、過去はすでに失われたもので、現在を生きている人々にはなんの意味もないからだ。そういう考えは、そのままこの作品に投影される。
だから、マルセルはパリから流れてはきたものの、ここでやっと妻も迎えたし、彼女は貧相だけれども健気な女だし、それで幸せに暮らしているんだから、過去は要らないよってことになる。そんなところへ黒人密航少年が紛れ込む事で生じる小さな港町の住民悲喜劇となっているわけで、この老人と少年はおなじように過去を棄てたんだね。でも、マルセルの新たな人生も捨てたもんじゃなかったということになるわけだ。上手だな。