◇新・平家物語(1955年 日本 108分)
英題 Taira Clan Saga
staff 原作/吉川英治『新・平家物語』 監督/溝口健二 脚色/依田義賢、成澤昌茂、辻久一 撮影/宮川一夫 色彩監修/和田三造 美術/水谷浩 音楽/早坂文雄
cast 市川雷蔵 久我美子 木暮実千代 進藤英太郎 千田是也 澤村國太郎 菅井一郎 伊達三郎 香川良介
◇保延三年初夏、京都今出川
その昔、東京駅の八重洲口を出たところに名画座があった。八重洲スター座っていうんだけど、そこではよく溝口健二の作品を上映してた。それも英語字幕の版で、もうほんと、気がつくと溝口週間になってた。まあそんなこともあってちょくちょく出かけて、溝口の作品はかなり観た。この映画を観たのもそうした中でのことで、最初に観たのは大学2年生だったんじゃないかしら。ただ、そのときはやけに賑々しい天然色だな~とおもい、実をいうと肩にちからの入りまくった感じがして、あんまり溝口っぽくないな~とおもってた。
ところが、あらためて観直すと、これが意外によかったりした。
まあ、さすがに時代というべきか、清盛がまじめで好い奴なんだよね。父親おもいだし。
ただ、宮川一夫のカメラがものすごくいいかといえば、なんでフランスのヌーヴェルバークに影響を与えるほど絶賛されたのかいまひとつわからない。たしかにクレーンショットの長回しはたいしたものではあるけれど、そんなのこれまでにいっぱいやってるじゃんっておもったりもする。けど、色は凄い。みごとなもので、さすがに色彩設計が慎重になされただけのことはある。っていうか、やっぱり和田三造が凄いんだろうね。
ちなみに、大映はこの『新・平家物語』は3部作にしたようで、実をいうと、ぼくはまったく知らなかったんだけど、どうやら第2部と第3部はそれぞれ役者も監督もちがうらしい。長谷川一夫の木曽義仲を衣笠貞之助が、菅原謙二の源義経を島耕二が監督してる。へ~ってなものだけど、これ、どこかで一挙上映すればいいのにね。