Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

Village Design4. 竹生島

2007年10月14日 | field work
 琵琶湖には3つの島がある。今なお人が住む沖島、そして多景島、琵琶湖北端に位置する竹生島である。竹生島は、中世以来、西国三十三所観音霊場として多くの参詣客が訪れ、竹生島神社と国宝唐門を始め多くの文化財を有する宝厳寺(竹生島観音)があり、付近の湖底からは、縄文・弥生時代の土器が引き上げられるなど歴史は相当に古い。個人的には、湖の中にある島という地形が、大変興味深い。
 竹生島全体は、南面の寺社周辺を除けば、上図(撮影:2007年4月)のように、立ち枯れた樹木群による特異な景観を呈している。こうした原因は、2万羽以上と推測されるカワウが生息していることにより発生してきた糞害によって引き起こされたものである。島の至る所が、糞で白くなっている。本来カワウは天敵を避け樹上営巣が基本的生態である。竹生島では、天敵の少ない島という立地が災いし、安心して地上営巣による繁殖が盛んになり、結果として大きなコロニーができあがってしまったのである。カワウ自身が選んだ繁殖地が、自分たちの大量の糞によって覆われ、樹木が枯れ環境が破壊されているのである。
 カワウが放つ大量の糞は、やがて土壌を肥やし、植物の生育を促す肥料となり、将来森が復元するといった考え方もある。だがそれは、カワウ・コロニーの規模と、島という限られた環境の許容量との駆け引きだろう。許容量を超えれば、カワウは他の土地へ移動してゆくだけである。
 生物が繁殖するといったこと自体、環境の許容量を越えれば、環境破壊なのである。環境の破壊者は、人間だけではなく、人間以外の生物にも該当する。そうした生物によって破壊と復元を繰り返してきたのが地球環境の歴史と理解する方が論理的だろう。
 私達の日常生活の場面では、「環境を守ろう!!」、「良い環境を子供達に残そう!!」といった脳天気な標語を数多く眼にする。特に「子供を安心して育てられる環境づくり・・・」のくだりを読むと、カワウの地上営巣と似ている。 こうした自治体などが掲げている標語を読むと、日本人の環境に対するご都合主義的姿勢や、生態系に対する不勉強且つ無知だけが目立つ。環境に対する日本人の無知の構図は、いつまで続くのだろうか。 環境を守ろうとするのであれば、生態系の構造を勉強し、適切な理解と認識を形成してゆくことから始めるべきである。
 私達は、人間の生活自体が環境破壊を前提として成立してきたことを認識すべきだろう。環境は、その復元力を越えて破壊してはならないことは、環境を利用する人間にとっての前提条件である。だからこそ、従来の日本では、復元できる範囲での、生活の知恵や作法といった環境とバランシングできる技術や方法が、生活の中で生まれ継承されてきたのである。
 
2007年4月撮影.
FinePix S5pro,NikkorF2.8/35-70mm.
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