Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

Village Design12.雲南省・路南イ族自治県

2007年10月27日 | field work
 石林郊外の集落の続きである。最高実力者鄧小平が実行した 改革開放政策によって、中国社会は市場経済国家へ大きく舵をきった。鄧小平の死から2年後に私達は、雲南省の集落を訪れたわけであるが、市場経済国家への足取りが大変早いことを実感した。都市では、古い街区や市場が取り壊され、その跡地に新しい超高層ビルが林立する状況だった。郊外に行けば高速道路が整備途上にあり、集落の道路は舗装され、電気が通り、次第にコンクリートの建物が立ち、また観光地では少数民族の伝統文化自体が、テーマパークとして資源化されていた。中国は、もの凄い早さで変わろうとしている。地域格差が激しい地方集落でも、変化の兆しが見られた。私達が訪れた時期は、中国社会の変わり鼻だったのである。
 観光地石林から外れた、一般的な農家集落で撮影していたら、ここで生活している少数民族と出会った。その顔には、一見して険悪な表情が漂っていた。「写真を撮るな!」という怒りのしぐさであったし、上の写真のように顔を背けられたこともあった。当時個人的には、裸足で歩いてくる姿を見て、古風な風景だと思いつつ撮影したのだが、相手はそんな悠長な認識ではなかった。
 昆明から石林迄は、高速道路がある。この集落の近く迄、都市文明が入り込んでいる。いやがおうでも都市文明と集落の生活とが対比させられる。それまで彼等が気付かなかった、「都市と比較すると自分たちは貧しい」とする意識が、過度に際だち、顕在化されてしまったのではないか。それが彼等のきつい怒りの眼差しの原因だと、私は解釈した。都市化によってこの集落に持ち込まれたのは、便利な文明だけではなかった。彼等がそれまで体験しなかった非情な価値観や現実認識迄もが持ち込まれたのだ。そのことが彼等にとって幸せだったかどうかは、通りすがりの私の立場では、わからない。
 
1999年8月撮影.
EOS3,F3.5-5.6/EF28-135mm,コダクロームⅡ.
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