Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

Village Design2. 針江

2007年10月10日 | field work
湖西地方は水利がよく発達した地域である。現在の滋賀県高島市新旭町針江地区の集落を尋ねると、自然を活かした人々の暮らしの知恵を体感することができる。
 それは豊富な湧水を家の中に引き込んだ「かばた(川端)」と呼んでいる古くからの台所を設えている民家が数多くある。上図(2007年4月撮影)は、ある民家の典型的な「かばた」である。その仕組みは、湧水が中央の亀に溜められる。湧水は、夏は冷たく冬は暖かい一番綺麗で美味しいこの地区固有の天然水である。飲み水や調理や風呂などの生活用水使にわれる他、西瓜を冷やすといった具合に冷蔵庫としても利用されている。亀からオーバーフローした湧水は、周囲の坪池へ流される。
 坪池は集落内部に設けられている水路から導水されている。坪池では野菜や食器を洗うといった具合に、使い分けがなされている。坪池には、必ず鯉やブナが棲んでいる。洗い落ちた野菜屑や食器についた米粒等はこれら魚の餌となり、食器も池も綺麗に掃除してくれるのである。このように自然を巧みに利用してゆく優れた生活の知恵が、昔から受け継がれてきたのである。針江地区の人々は、現在でもかばたを生活に利用している。余談だがこの地域の料理で「しょい飯」は、ご飯に醤油をかけたものだが、素朴且つ美味である。
 かばたは、自然と人間とのエコロジカルな関係性を示唆している大変優れた生活の知恵の1つである。日本全体に眼を転じれば、古くからの集落・民家における人々の暮らしは、実はかばたでみられるように、自然を活かしたエコロジカル・ライフスタイルの集積だったのである。
 今私達の過半は、こうした古来から引き継がれてきた暮らしの知恵が集積したエコロジカル・ライフスタイルを捨て、都会に住み、大量消費社会を受け入れつつ、皮肉なことに地球温暖化といった新たな環境問題に直面している。都会人の環境問題に対する意識は高まりつつも、ではどうすれば現代社会に於いて、自然と人間とが最適な関係性を築くことができるのか、といった実践的な暮らしの知恵や方法が、私達にはない。現代社会であるのは、せいぜい頭でっかちの環境意識と法規制だけである。環境問題は、生活実感の伴わない環境意識と法規制だけでは解決できないと私は、断言しておく。
 古くから引き継がれてきた自然を活かしたエコロジカルな暮らしの知恵にこそ、現代の私達が学ぶべき要素は多いのである。だかそうした知恵は次第になくなりつつある。だからこそ、集落・民家を訪ね歩き[注]、エコロジカルな知恵の伝承者に静かに学べ!!と、私は声を大にして言っておく。
 
注:かばたは民家の中にある。 針江地区の人々の生活を侵害しないためにも、 外部の者が勝手に地区や民家の中にはいることはできない。外部からの見学者は、必ず針江生水の郷委員会が指定する見学日に、事前に予約をすること。そうすれば地区のボランティアが、最適な場所を案内してくれます。
 
2007年5月撮影.
FinePix S5pro,DistagonF2.8/25mm.
コメント
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