Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

Village Design 18.  大理・周城

2007年11月03日 | field work
 周城の集落を貫く通りは、等高線に沿って配置されているので、アップダウンは少ない。だが通りと直行する路地は坂道となっており、民居の屋根越しに洱海が眺められ、また後ろを振り向くと、棚田が広がりその先に蒼山の山腹がドンと立ちはだかっているのが見える。大理の地図をみると、大理古城も含め主要な集落は洱海の西側に立地している。今回ビレッジ・シリーズ冒頭の章で書いた、琵琶湖の湖西地方と同じオリエンテーションである。大理と湖西地方とでは、標高や気候が異なり、これをもって同質とはみなせない。だが傾斜地故、棚田を有している点、そして集落に隣接する西側に山を抱き、西日が山の陰に早い時間に沈むといった点、古代から人々が定着し、湖の西側の方が比較的早くから開けたという点で、類似している。こうした類似性が、農作物や日々の暮らし方と、どんな関係性をもっているかは、私達の駆け足調査だけではわからない。だが民居歩きの経験で洞察すれば、古代人が住まいを定めようとする際、西日があたるような所では、収穫した作物が傷みやすいので、貯蔵という観点から南向きや東向きが好まれたのかもしれない。
 路地は曲がりくねっているため、歩いてゆくと民居が様々なアングルで出現し、シークェンスの変化があって面白い。正面には洱海を眺めるという構図は、絵になる風景だ。そんな路地を足の赴くまま行くと、ざわざわと人の気配を感じる。そういう時は、大概子供達である。坂道を遊びながら、私達の後をついてくる。よくみると同世代の子供達だが、何故か頭数が多い。中国は一人っ子政策を進めているが、中央政府が決めたこととは無関係に、この村の生活があるのだろう。
 民居は三合院が多い。白壁脇の門から入ると、日当たりが良く、居心地の良さそうな中庭が出現する。背の高い壁や周囲の母屋が、洱海や蒼山からの風よけとなっているのだろう。中庭に面する母屋は、前面開口部となり木造建具が納まっている。建具を開け放せば、中庭と居室とが一体的な空間となり、風通しや使い勝手の良さが伺える。このように風土や使い勝手を踏まえ、居住性の高い環境を実現している民居は、大変優れたデザインである。中庭では、地場産藍染めの繊維を乾燥させているところだった。
 
1999年8月撮影
Canon EOS3.F3.5-5.6/EF28-135mm.コダクロームⅡ.
CanoScan9950F
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Village Design 17.  大理・周城

2007年11月02日 | field work
 沙坪で空振りに終わった私達は、周城へ向かった。上の写真で集落の民居をみると、構造がよくわかる。土台は、地場産石材の野面積みのようである。壁は日干し煉瓦を積み重ねたもので、その上に漆喰を塗って風雨に対する構えとした典型的な壁構造である。屋根は、梁を掛けすべて瓦で葺いている。建具は木製であるが高価な建築部材であるので、民居によって設置の有無は異なる。地域を越えた流通構造が成立していない時代に建設された民居であるから、使用された建築材料は、地元で調達だったと理解できる。こうした材料は、自然素材故、どこの地域でも容易に入手できる。
 雲南省の集落を尋ね歩くと、日干し煉瓦による壁構造の民居が大半である。居住や生業機能の必要性や個々の収入に応じて、その上に漆喰を塗るかどうかが決まってくると私は理解している。また通りに面する部分を前面開口部とし、木造建具扱いとする民居もよくみかける。前面開口部とするには、屋根荷重をどこに分担させるかといった課題が発生する。その方法として梁や柱と壁との混合構造といった、構造が必要になってくるのだろう。特に都市部では後者の方法が大半である。こうしたファサードの設え方によって、民居の立地や成立事情が異なってくる。この辺の検証は、今後の研究課題としておきたい。
 とても静かな集落の中歩いていたら、小学校が見えた。お昼時、突然ワーーという大きな歓声が聞こえ一斉に児童が駆け足で表に飛び出してきた。お昼は家に帰るのかもしれない。小学生の顔がみんなすごくいい。今日は、一杯学校で勉強したぞーーーという充実感に溢れている。みんな賢そうな顔ばかりである。爽やかな風景だった。
 日本でノータリンな小学生の顔を見慣れていた故か、そのことが大変新鮮だった。彼等の表情の中に、どんどん成長してゆく中国という国家の未来が見えてくるようでもあった。国家の未来は、子供達の顔に表れる。もしあなたが、ある国への投資を考えているならば、小学校に行くと良い。小学生の表情に活気と聡明さが見られたならば、投資に値する国家であることがわかるかもしれない。そうした小学生達が、十数年後には、国家を背負ってゆくのであるから。そんなことを考えていたら、彼等の表情を、撮影しそびれてしまったよ。
 
1999年撮影
Canon EOS3.F3.5-5.6/EF28-135mm.コダクロームⅡ.
CanoScan9950F.
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Village Design 16. 大理・喜洲鎮の路上市

2007年11月01日 | field work
 雲南省の集落を歩くと、必ずどこかで路上市に遭遇する。そんな市を尋ね歩くのは、面白い。喜洲鎮は、大理地方の伝統様式を活かした「厳家大院」等の民居が公開されており、観光客も訪れる。ここの路上市も、藍染めによる地場産工芸品を扱う露天があれば、周辺で収穫され乾燥などの加工がなされた農産物、民族衣装に必要な刺繍等を扱う露天などをはじめ多様である。大概の場合売る側も買う側も少数民族である。路上市には、どこかリラックスさせてくれる空気が漂っている。
 路上市でペー族の小姐(シャウチー)と値切り交渉をするのも興味深い。さながら神経戦である。20分も交渉したあげく、時間がないから行くぞと相棒を促し、引き上げる素振りをすると、小姐が藍染めの風呂敷を持って追いかけてくる。(^0^)/ウフフ!!してやったり・・・こちらの思うつぼ、といった具合に。こんな悠長な商売でも、彼等にとっては貴重な現金収入の1つになる。だが私達にとっては、とんだ道草であった。同行の先生からは、スケジュールが詰まっているから、こんなところで時間をつぶすなよ!とぼやかれたが・・。
 実は、私達の今日の主目的は、沙坪(さへい)の小高い丘で行われるペー族の大規模マーケットである。私達が使った日本語ガイドブック「地球の歩き方」[注]では、毎週月曜日に行われると書かれてあったので、期待してでかけたのである。沙坪には、小高い丘はあったが、何も行われていない。地元民に尋ねれば、市は木曜日だという。開催曜日が変わったのか。ガイドブックは時間差があるから、推移する情報を補足しきれないのだろう。現実の方がめまぐるしく変わるのだから、所詮媒体情報等というものは、その程度のものでしかない。だから動き回って自分達の目で見るのが一番確かである。そんなわけで、私達は、昆明で調達したA1サイズの雲南省地図と、地球の歩き方を斜めに見ながら、地元民の聞き書きと、チャーターした運転手の記憶をかき集め、車を走らせた。現地にいかなきゃわからない・・・第一道があるとも限らないのだから。実際に崖崩れで通行できなかったときもあったが。
 旅は、予定通りに行かない。大切な点は、予定通りにゆかない場合の代案があればいいのである。もう一つ大切な点は、論文以外の媒体情報をあてにしないこと。現在のインターネット情報など、私は旅の経験からして、今でも全くあてにしていないし、もちろん信用していない。私達の世界で起きている現象を理解しようとすれるのであれば、どんな場合でもフィールド・サーベイといった現場主義が必要である。
 余談だが、これまで掲載した中国の写真は、すべてニコンのフィルムスキャナーを使用したので、コダクロームⅡ特有の色調を拾うことができた。今日のプログ写真は、フラッドヘッドスキャナーを用いてデジタル化した。スキャナーに遮光幕を被せ、画像には、修正に修正を重ねたが、上記のようにフィルムの色が全く活かされない眠たい画像になった。フラッドヘッドスキャナーは、私の場合全く使い物にならないことを実感した。そこで製造中止になる前に、ニコンフィルムスキャナーを購入しなければと思っている。フィルムスキャナーは、2,381万画素以上の解像度でスキャンできる。現在この画素以上の35mmサイズ・デジタル一眼レフカメラは、存在しない。フィルムで撮影し、フィルムスキャナーでデジタル化するのが、現在最も精細で美しい画像を得る方法である。フィルムスキャナー最上位機種であっても、EOS5Dよりは安い。現在のデジタル一眼レフカメラの性能は、銀鉛フィルムには遠く及ばないのである。こうした経験からでも、デジカメやインターネットやそれによる情報化社会など、いまだに未熟なスペックでしかないということを、私は痛感している。
 
注:地球の歩き方,雲南・四川・貴州と少数民族,1999〜2000版,ダイヤモンド社.
Canon EOS3.F3.5-5.6/EF28-135mm.コダクロームⅡ.
CanoScan9950F.
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