Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

Village Design 21.  大理・蝴蝶泉

2007年11月07日 | field work
 少数民族は、異なった歴史背景を有する故、それぞれ固有の文化をもっている。そんな象徴が民族衣装に現れている。これまで民族毎に異なる個性的で美しい衣装は、世界のトップデザイナー達に大きな影響を与えてきた。 
 中国55の少数民族の衣装について記した文献[注]から、ペー族の民族衣装に関する記述を以下に引用する。
 
「ふつう娘たちは,十五になると機織り,手染めの木綿地にカラフルな飾り模様を縫い取り,美しいスカーフに仕立てて身を飾った.彼女達の手になる前掛け,スカートのひも,頭巾,靴,おぶい紐,帽子,靴下つりなどはいずれもみごとな伝統工芸品である.・・・(中略)・・・中年や若い女性は,前身ごろが短く後ろみごろの長い白い上衣やゆったりした藍色の上衣,それに黒か紫のベルトの衿つき上着を重ねて着ることが多い.チョッキの右衿には銀の飾りを三本か五本さげる.腰には刺繍したリボンで縁どった短い前掛けをつけ,先の方にそれぞれ二本模様を刺繍した腰帯を前できつく縛ってたらし,しなやかで細い腰を強調する,下は藍か緑のズボンをはく.そして刺繍つきの「百節靴」をはく.娘達はみんな銀糸細工の腕輪や玉の腕輪,竹の皮を編んだ腕輪,柳葉の耳輪,ホーローの指輪,銀の櫛などを好む.」
 
 地域によって少しデザインは、異なるようだが、三月街(いち)になると、若い男女は民族衣装をまとい、娘達は、最もおきにいりの装身具で飾って、競馬、弓術、歌舞に興じるそうである。こういう山奥の集落で、このような美しい衣装で着飾った娘達が突然現れたらといった昔の旅人の体験を想像すると、一生忘れられない風景になるだろうと思われた。聞くところによると、現在の大理は、新婚旅行地だそうである。
 蝴蝶泉という公園を歩いていたら、木陰で民族衣装を縫っているペー族の一群に出会った。縫製や刺繍をしていたのは、年配者と若い娘達であった。こうして技術の伝承がなされてゆくのであろう。若い娘にとっては、着飾って祭に行きたいのだから、熱心に覚えることだろう。このような光景をみていると、伝統技術の伝承とは、歴史だ、文化財的価値だ、といった教条主義や保護主義といった観点ではなく、むしろ引き継ぐ側に、生活上のモチベーションがあってこそ自発的に伝承されるのだということを思い知らさせる。伝統技術の伝承とは、本来そうあるべきだと私は断言しておく。
 
注:京都書院アーツコレクション11,色彩のコスチューム,京都書院編集部,1996.
 
1999年8月撮影
Canon EOS3.F3.5-5.6/EF28-135mm.コダクロームⅡ.
Nikon Coolscan3.
CanoScan9950F
コメント
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