

2014-5-6(火) 晴 のち雨 のち曇り のちゲリラ豪雨 のち曇り
2014早春、孫娘がエゾヒメギフチョウ採集
朝から天候は不穏だがこの時期ではよくあることだ。今日は最高気温17℃の予報。陽がかげるとみるみる気温が下がり蝶は飛ばなくなる。
この時期、オホーツクの北見市界隈では早春の美麗蝶エゾヒメギフチョウ Leudorfia puziloi yessoensis が舞い始める。
かっては、かなりの発生量を誇っていたが開発や棲息環境の変化、マニアの乱獲のせいで近年、往年の面影は無くなり、激減していることはオショロコマと同じだ。
発生地もとても狭くなりピンポイント的に奇跡的に残っているに過ぎない。そこに多数の採集者が集中する。日本産蝶類のなかでは人気度がトップクラスであるため、北見市の蝶愛好家以外にも全道各地から、しばしば本州からの採集者もやってきて減少に拍車をかける。
一般的に蝶採集者は目につく蝶がいなくなるまで徹底的に採る。本州産の近縁種ギフチョウやヒメギフチョウは同様の理由でさらに激減しており、絶滅産地が増え続けている。
しかし、この蝶を乱獲する採集者を単純に非難することは私には出来ない。
私自身もこの蝶の生態、分布、変異、本州産ヒメギフチョウとの関係等に興味を持つこと半世紀におよび、一体何千匹のこの蝶を殺してきたのかわからないからだ。
ただ、かってはいくら採集してもこの蝶が減るようなことはまったくなかった。それらを生み出す自然環境が今とは比較にならないほど豊かであったからだ。
しかもその自然環境の多くは、あるがままの自然ではなく、多少なりとも人間の営みと関聨して出現する特異な環境であるのが特徴だ。
しかし今現在はまったく事情が違う。生息環境が種々の理由で極端に狭くなっており、そのため乱獲は即絶滅につながる。
オショロコマと同じく、絶滅が危惧される産地のものは殺して持ち帰ることは、出来るだけ控えるべき生き物だと最近つくづく思うようになった。しかし絶滅が危惧されるが故にせめて稀少な標本を残しておきたいとの欲求も強くなる。むずかしい問題だ。
最近の10年ほどは、エゾヒメギフチョウを殺したことはほとんどない。せいぜい写真撮影をするくらいだ。
しかし写真撮影はネットで採集するより10倍100倍難しく困難を伴う。ありふれた産地のありふれた翅形斑紋の標本を山のように作るよりは(かっての私自身がそうだった)、ばっちりきまった写真の方がはるかに価値があるとおもう。
F氏からのメールで昨日、エゾヒメギフチョウを見たという。
かわいいかわいい孫娘がエゾヒメギフチョウを採りたいというので、久しぶりにこの蝶を狙って出かけた。
彼女は一昨年あたりから渓流釣りや蝶採りに興味があり、私のDNAが入っているせいだろうか。
天候はきわめて不穏だが、きっと日差しがくる時間はあるに違いない。その短い時間に勝負するのがエゾヒメギフ採りというものだ。
まず、あんちょこ採集地である近隣の林道をあたったが飛んでいるのはエゾスジグロチョウとルリシジミ、越冬したクジャクチョウばかり。
そのうち、他の採集者の車まで見かけるようになり、このあたりでは孫にエゾヒメギフチョウを見せるのは無理と判断。
ちょっと遠いが車を飛ばして、絶対確実なとある秘密ポイントへ向かった。
そこに近づくにつれ急に青空が広がり期待感がふくらんだ。しかし、苦労してそこへ到達してみたら、そこは広範な伐採があり、広大な畑に変身していた。くそ。さらにいくつかの秘密ポイントをまわるが、樹木や笹が生い茂って自然が変化したり、自然破壊が行われたり、ことごとくかっての大産地がいつのまにか消滅していて唖然となった。
試行錯誤の末、最終的にたどりついたとある森で、なんとか生き残っていたエゾヒメギフチョウを発見。
約20数頭ほどの飛翔を確認、孫娘は5♂♂1♀(交尾済み)、私は3♂♂1♀(未交尾)を採集した。すべて完全品で羽化後まもない状態と思われ、低く飛びすぐ地面にとまるので何頭かを撮影できた。
孫娘は大きな嬌声を上げながらデカネットや赤ネットを振り回し一発必殺でネットインする。間違いなく蝶採りの才能はある。
初めて見る美しい蝶に大喜びであった。孫娘と私にとって忘れられない思い出となる一日であった。








エゾヒメギフチョウの幼虫が食べる食草、オクエゾサイシン。交尾後、♀はこの葉裏に真珠のような卵を卵塊状に産み付けます。この日は産卵行動や卵塊をみつけることはできなかった。




エゾヒメギフチョウ♂。


交尾後、♂の出す分泌物が固まって、このような交尾嚢が形成されます。この♀はおそらく、はや産卵をかなりやっていると思われお腹がしぼんでいます。

エゾヒメギフチョウ♂。








今日はエゾヒメギフは最後はすべてリリースするつもりであったので、採集した蝶はいつものように胸を圧して殺すことなく羽根をつまんで元気なまま三角紙に入れた。
やや小型の個体が多かったが、特別な変わった個体は無く、十分に観察させてから放した。右前翅の羽化失敗の1♂がいたが、よたよた飛んでいた。
1♀は放蝶する際、孫娘の衣服や帽子に執着していたが、やがて他の蝶と同じく森の奥へ飛び去った。
孫娘が大声で空を指さした。大きなオジロワシがすぐ上空30mを低く旋回していた。
やがて雲が広がり陽がかげり身震いするほど寒くなってきたと思ったら土砂降りの雨となった。雨のなか北見へもどった。
妻たちはエゾムラサキツツジ満開の温根湯ツツジ祭りへ出かけ恒例のジンギスカンを食べてもどってきた。

