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前回、衝撃的な 毒キノコアマゴ の情報をいただいた田中篤さんから、このたびイワナの斑紋の謎として知られる ムハンイワナ の寄稿をいただきました。
ムハンイワナのまとまった総説のようなものを見る機会はほとんどありません。とても貴重な記事になるとおもいます。
ムハンイワナ(前編)
田中 篤
サケ科の魚には時としてイレギュラーな斑紋の個体が発生します。
特に多いのがムハンタイプ、斑紋のない魚です。
このムハンタイプはヤマメ、アマゴ、イワナ、オショロコマに見られます。
ここではムハンイワナについて紹介したいと思います。
私が釣ったのは東北地方の某河川。
それは全くの偶然でした。
イワナとヤマメの混生域を釣っていた時に釣れた17cm位の魚、 釣り上げたら模様が見えなかった。
あれ?こんな所にもウグイがいるのか?
と思ってよ~く見ると、顔つきがウグイじゃない、イワナの顔なのだ。
脂鰭もついている、模様は無いけれど確かにイワナだ。
ムハンイワナは本では見た事はあったが実物を釣ってしまってビックラこいた。
そして証拠写真を撮ったのだが、その時はフィルム式のコンパクトカメラで、 接写ができなかった。
なので撮った写真は遠くから撮ったもので、被写体は写真の中央に小さく写っていた。
せっかくのムハンイワナなのに、本当にムハンイワナなのかウグイなのか判別が困難なものになってしまった。
その直後に接写に強いデジカメが出てきて、これを持ってこの川に通うことになった。
ムハンイワナの川で釣れるほとんどのイワナは普通の東北のイワナ。
白点のある普通のイワナだ、その中に一定の確率でムハン遺伝子が発現したものが現れるらしい。
でも釣っても釣ってもムハンイワナは釣れなかった。
どの程度の確率で生息するのかもわからないし、もしかすると養殖魚の放流によってすでにムハン遺伝子は消滅しているかもしれない。
そんな不安のなか約3年が経って、やっと2匹目が釣れた。
実は3年間はその川だけではなく、周辺の川も釣っていたのでなかなかムハンに出会えなかったようだ。
ある一本の河川にムハンイワナがいたら、隣の河川にもいるかもしれない。
本流を通じて繋がっている別の支流にもいるかもしれない、と思って同じ水系の近くの支流を手当たり次第に釣った。
現在は友人も含めて15匹ほど釣れましたが、釣れるのは最初に釣ったあの川だけ、 結局は最初に私が釣ったあの川にしか生息していないという事がわかりました。
現在の記録では、ムハンの出現率は約50匹に一匹の確率です、簡単に出会えるものではありません。
1ムハン(釣り人U氏)
2ムハン(釣り人N氏)
3ムハン
4ムハン
5ムハン
6ムハン
7ムハン
8ムハン
9ムハン
10ムハン
11ムハン
12ムハン
2匹目が釣れて以降も同じ水系の別の川を手当たり次第にほとんど釣りましたし、 地元の人に聞き取り調査しても、あの1本の川でしか釣れないようです。
そう考えると私はそんな川にいきなり、偶然入ってしまったようで、それはほんとうに奇跡的な事だったと思います。
この川の普通のイワナ。
13普通
14普通
15普通
16普通
17普通
18普通
そしてこの川は魚類学会が認知しているムハンイワナ生息河川10河川には含まれていない、新たな生息地である事も判明しました。
と言っても地元の人達は昔からここにはムハンが棲む事を知っていましたから、それを学会が知らなかっただけの事ですが。
その後、私の情報で魚類学会員の方が入って調査しました。
私も同行しましたが、さかんに釣れた普通のイワナの脂鰭を切除してDNAサンプルとして取っていました。
この時、実際にムハンイワナは2匹釣れましたがこの魚のサンプルは取らずにリリースしていました。
私はなんでムハンじゃない普通のイワナのサンプルを取っているのだろう?と不思議に思いました。
でも調べるDNAはミトコンドリアDNAなので、その集団に共通の遺伝子なのでこういうサンプリングになるようです。
その結果は詳しくは聞いていませんが、比較的古いタイプの遺伝子だそうです。
そして一時、この川を希少魚種保護のために禁漁にしようという話が持ち上がりました。
そうなると一般人の私はここで釣りをしてムハンイワナに出会う事ができなくなってしまいます。
結局、禁漁処置は取られず、現状のままになりました。
もしここを禁漁に設定すると、全国的にここに希少種のムハンイワナがいますよ、と宣伝する事になる。
そうすると良からぬ人達がやってきて、この川を荒らして行くかもしれない。
結局は人に知られずこのままが一番良いのかもしれない。
ムハンイワナの形態的特徴は、まさに無班、イワナ特有の紋様が何も無い事です、パーマークも完全に消えます。
しかしお腹は黄色くなります、これは普通のイワナと同じです。
沢山釣ったムハンイワナの中には若干の斑紋が存在するものがいました。
尾部の側面に白点のあるタイプ。
白点も小さくて、イワナの本来の白点がここの部分だけ残った、という感じではありません。
全ての紋様が消えた上に出現した別の班紋のような印象です。
19白点(釣り人M氏)
尾部に黒点があるタイプ 。
側線のあたりに薄くて小さな黒点が沢山あります。
20黒点(釣り人U氏)
額の丸い2つの対照的な紋様
これは白点を持たないヤマトイワナにも良く現れる紋様です、
額に白点が無い場合に薄いこの紋様が現れる場合があります。
21白班
この項、続く。
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前回、衝撃的な 毒キノコアマゴ の情報をいただいた田中篤さんから、このたびイワナの斑紋の謎として知られる ムハンイワナ の寄稿をいただきました。
ムハンイワナのまとまった総説のようなものを見る機会はほとんどありません。とても貴重な記事になるとおもいます。
ムハンイワナ(前編)
田中 篤
サケ科の魚には時としてイレギュラーな斑紋の個体が発生します。
特に多いのがムハンタイプ、斑紋のない魚です。
このムハンタイプはヤマメ、アマゴ、イワナ、オショロコマに見られます。
ここではムハンイワナについて紹介したいと思います。
私が釣ったのは東北地方の某河川。
それは全くの偶然でした。
イワナとヤマメの混生域を釣っていた時に釣れた17cm位の魚、 釣り上げたら模様が見えなかった。
あれ?こんな所にもウグイがいるのか?
と思ってよ~く見ると、顔つきがウグイじゃない、イワナの顔なのだ。
脂鰭もついている、模様は無いけれど確かにイワナだ。
ムハンイワナは本では見た事はあったが実物を釣ってしまってビックラこいた。
そして証拠写真を撮ったのだが、その時はフィルム式のコンパクトカメラで、 接写ができなかった。
なので撮った写真は遠くから撮ったもので、被写体は写真の中央に小さく写っていた。
せっかくのムハンイワナなのに、本当にムハンイワナなのかウグイなのか判別が困難なものになってしまった。
その直後に接写に強いデジカメが出てきて、これを持ってこの川に通うことになった。
ムハンイワナの川で釣れるほとんどのイワナは普通の東北のイワナ。
白点のある普通のイワナだ、その中に一定の確率でムハン遺伝子が発現したものが現れるらしい。
でも釣っても釣ってもムハンイワナは釣れなかった。
どの程度の確率で生息するのかもわからないし、もしかすると養殖魚の放流によってすでにムハン遺伝子は消滅しているかもしれない。
そんな不安のなか約3年が経って、やっと2匹目が釣れた。
実は3年間はその川だけではなく、周辺の川も釣っていたのでなかなかムハンに出会えなかったようだ。
ある一本の河川にムハンイワナがいたら、隣の河川にもいるかもしれない。
本流を通じて繋がっている別の支流にもいるかもしれない、と思って同じ水系の近くの支流を手当たり次第に釣った。
現在は友人も含めて15匹ほど釣れましたが、釣れるのは最初に釣ったあの川だけ、 結局は最初に私が釣ったあの川にしか生息していないという事がわかりました。
現在の記録では、ムハンの出現率は約50匹に一匹の確率です、簡単に出会えるものではありません。
1ムハン(釣り人U氏)
2ムハン(釣り人N氏)
3ムハン
4ムハン
5ムハン
6ムハン
7ムハン
8ムハン
9ムハン
10ムハン
11ムハン
12ムハン
2匹目が釣れて以降も同じ水系の別の川を手当たり次第にほとんど釣りましたし、 地元の人に聞き取り調査しても、あの1本の川でしか釣れないようです。
そう考えると私はそんな川にいきなり、偶然入ってしまったようで、それはほんとうに奇跡的な事だったと思います。
この川の普通のイワナ。
13普通
14普通
15普通
16普通
17普通
18普通
そしてこの川は魚類学会が認知しているムハンイワナ生息河川10河川には含まれていない、新たな生息地である事も判明しました。
と言っても地元の人達は昔からここにはムハンが棲む事を知っていましたから、それを学会が知らなかっただけの事ですが。
その後、私の情報で魚類学会員の方が入って調査しました。
私も同行しましたが、さかんに釣れた普通のイワナの脂鰭を切除してDNAサンプルとして取っていました。
この時、実際にムハンイワナは2匹釣れましたがこの魚のサンプルは取らずにリリースしていました。
私はなんでムハンじゃない普通のイワナのサンプルを取っているのだろう?と不思議に思いました。
でも調べるDNAはミトコンドリアDNAなので、その集団に共通の遺伝子なのでこういうサンプリングになるようです。
その結果は詳しくは聞いていませんが、比較的古いタイプの遺伝子だそうです。
そして一時、この川を希少魚種保護のために禁漁にしようという話が持ち上がりました。
そうなると一般人の私はここで釣りをしてムハンイワナに出会う事ができなくなってしまいます。
結局、禁漁処置は取られず、現状のままになりました。
もしここを禁漁に設定すると、全国的にここに希少種のムハンイワナがいますよ、と宣伝する事になる。
そうすると良からぬ人達がやってきて、この川を荒らして行くかもしれない。
結局は人に知られずこのままが一番良いのかもしれない。
ムハンイワナの形態的特徴は、まさに無班、イワナ特有の紋様が何も無い事です、パーマークも完全に消えます。
しかしお腹は黄色くなります、これは普通のイワナと同じです。
沢山釣ったムハンイワナの中には若干の斑紋が存在するものがいました。
尾部の側面に白点のあるタイプ。
白点も小さくて、イワナの本来の白点がここの部分だけ残った、という感じではありません。
全ての紋様が消えた上に出現した別の班紋のような印象です。
19白点(釣り人M氏)
尾部に黒点があるタイプ 。
側線のあたりに薄くて小さな黒点が沢山あります。
20黒点(釣り人U氏)
額の丸い2つの対照的な紋様
これは白点を持たないヤマトイワナにも良く現れる紋様です、
額に白点が無い場合に薄いこの紋様が現れる場合があります。
21白班
この項、続く。
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